フランスのルコルニュ首相、連立探しと2026年予算で綱渡り
フランスのセバスチャン・ルコルニュ首相が、政権の支えとなるパートナーを失ったまま、2026年予算案の提出期限に追われています。ねじれ議会と財政再建という二重のプレッシャーの中で、フランス政治の不安定さが一層鮮明になっています。
連立相手を失ったままの「時間との戦い」
日曜日、ルコルニュ首相は新たな政府樹立に向けた協議を続けていました。時間が限られる中で、2026年の国家予算案を火曜日までに提出しなければならないためです。提出が遅れれば、年末までに必要な審議期間を確保できなくなるおそれがあります。
フランスでは昨年の解散総選挙の結果、いわゆる「ハング・パーラメント(どの勢力も単独過半数を持たない議会)」となり、極右勢力が議席を伸ばしました。その中でエマニュエル・マクロン大統領は、政権基盤の立て直しを狙ってきましたが、政治的不安定は続いています。
ルコルニュ氏は一度辞任し、最初の内閣が崩壊しましたが、大統領は数日後に同氏を再任しました。この急展開に対して野党側は強く反発し、「新政権が発足すれば、機会をとらえて倒す」と宣言しています。
共和党は「閣外協力」にとどまる方針
ルコルニュ政権にとって打撃となったのが、右派の共和党(LR)の決定です。これまで重要なパートナーだった共和党は、新内閣には参加せず、今後は法案ごとに賛否を判断する「ビル・バイ・ビル(個別協力)」にとどめると表明しました。
この方針は、政権に安定多数がない状況を固定化する可能性があります。予算案のような重要法案ごとに、毎回ギリギリの交渉を強いられるリスクが高まります。
マクロン政権にとって最大級の内政危機
ルコルニュ氏の再任にもかかわらず、マクロン大統領は最初の内閣崩壊以降、国民向けの正式なメッセージをまだ出していません。大統領就任の2017年以降で、最も厳しい内政局面の一つとされています。
ルコルニュ氏自身は、大統領に近い忠誠派として知られ、防衛相などを歴任してきました。しかし本人は、条件が整わなければ再び辞任もあり得ると語っており、「無謀なことはしない」と慎重な姿勢を強調しています。
EUの圧力と「緊縮予算」への反発
フランスは今、EU(欧州連合)から財政赤字と債務の圧縮を求められています。今回の2026年予算案も、歳出削減を軸とした「緊縮色」の強い内容になるとみられています。
こうしたコスト削減策をめぐる攻防は、すでにルコルニュ氏の前任の首相2人を退陣に追い込んできました。政治的な行き詰まりと財政再建の圧力が、たびたび政権を揺さぶってきた形です。
エジプト訪問とガザ停戦協議が影を落とす
マクロン大統領は月曜日、米国が仲介したガザ停戦合意を後押しするため、エジプトを訪問する予定です。この外遊により、2026年予算案の正式な提示がさらに遅れる可能性も指摘されています。
外交的な役割と国内の政局運営をどう両立させるのか。フランスのリーダーシップの在り方が問われています。
年金改革が新政権の「踏み絵」に
ルコルニュ政権には、2023年の年金改革も重くのしかかっています。この改革では、公的年金の支給開始年齢が62歳から64歳へと引き上げられ、多くの市民から強い反発を受けました。
左派の社会党をはじめとする野党勢力は、首相がこの年金改革から距離を置かない限り、新政権を不信任案などで倒すと警告しています。
これに対しルコルニュ氏は、「年金改革についても、あらゆる議論が可能だ」と述べ、「誰にとってもつらい現状から抜け出すこと」こそが唯一の目標だと強調しました。どこまで譲歩するのかが、今後の最大の焦点になりそうです。
分断と不信のなかで合意をどうつくるか
今回のフランスの政治危機は、次のような問いを投げかけています。
- 単独過半数を持たない「ねじれ議会」で、どのように安定した政策運営を行うのか。
- 財政赤字の削減と、社会保障の維持や格差是正をどう両立させるのか。
- 有権者の不満を背景に極端な主張が支持を広げる中で、「中道」や「主流派」はどう信頼を取り戻すのか。
ルコルニュ首相は、「政党に縛られない」人物を閣僚に起用したいと語っています。既存の党派対立を越える人材登用が、フランス政治の行き詰まりを打開するヒントになるのか。今後の人事と予算審議の行方は、ヨーロッパの政治の風向きを占う試金石となりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








