米加通商摩擦、次の火種は「見えないデジタル」 トランプ政権期の新局面 video poster
米国とカナダの通商摩擦が、「モノ」から「見えないもの」へとシフトしています。トランプ米大統領(当時)はこれまで、自動車部品や農産物、ウイスキーなど、生活に欠かせない具体的な品目をめぐって貿易戦を仕掛けてきましたが、新たな争点は世界の巨大テック企業も巻き込む、より無形な分野に広がっていると報じられています。
この変化を伝えたのが、国際ニュースチャンネルCGTNのオーウェン・フェアクラフ記者です。本稿では、その報道で示された構図を手がかりに、「見えないもの」をめぐる米加通商摩擦の意味を整理してみます。
「モノ」を巡る通商戦からの転換
トランプ政権期の米国の通商政策は、関税を通じて相手国に圧力をかけるスタイルが目立ちました。標的となったのは、とても分かりやすい「モノ」です。
- 自動車部品(vehicle parts)
- 大豆やトウモロコシなどの農産物(crops)
- ウイスキーなどの酒類(whiskey)
どれも、企業のサプライチェーンや消費者の生活に直結する、目に見える品目です。そのため、関税をめぐるニュースは「輸出産業が打撃」「物価が上がる」といった形で、比較的イメージしやすいものでした。
しかしCGTNの報道によると、カナダとの間で浮上しているのは、こうした「モノ」ではなく、より無形の分野です。世界の大手テック企業を巻き込むほどの新しい争点が、両国の通商関係に影を落としていると伝えられています。
争点は「見えないデジタル」 何が問題なのか
では、なぜ無形の分野が通商摩擦の対象になるのでしょうか。背景には、経済の重心がモノからデータやサービスへと移りつつあることがあります。
報道では具体的な条項よりも、「世界の大手テック企業を巻き込む争い」という構図に焦点が当てられていますが、デジタルをめぐる通商問題では、一般に次のような論点が浮かび上がります。
- 個人データや企業データを、どの国のサーバーに保存できるのか
- インターネット経由で提供されるサービスに、どのような税金をかけるのか
- ソフトウェアやアルゴリズムなど知的財産を、どのルールで保護するのか
米国とカナダは経済的に密接に結び付いた隣国同士です。そのため、デジタル分野のルールをどちらの国の基準に合わせるのかは、両国のIT企業だけでなく、グローバルに展開するテック企業にとっても大きな関心事になります。
巨大テック企業にとって、どの国の法律が適用されるかはビジネスモデルそのものに影響します。データの扱い方やサービスの届け方が変われば、収益構造も変わってしまうためです。
日本やアジアの企業・利用者にとっての意味
一見すると北米だけの話に見えますが、デジタル通商ルールは国境を越えて影響します。日本やアジアの企業の多くも、米国やカナダを含む北米市場にデジタルサービスを提供しているからです。
たとえば、クラウドサービス、SNS、動画配信、オンラインゲームなど、私たちが日常的に使っているサービスの多くは、米加両国のルールの影響を間接的に受ける可能性があります。データの移転条件や課税のあり方が変われば、サービスの価格や仕様が変化することもあり得ます。
米加間で「見えないもの」をどう扱うかは、今後の国際ルール作りのたたき台にもなり得ます。北米で先に決まった枠組みが、その後の国際交渉の基準になっていくことは、これまでも繰り返し起きてきたからです。
ニュースを読む3つのポイント
今回の米加通商摩擦を手がかりに、デジタル時代の国際ニュースを読む際に押さえておきたいポイントを、3つにまとめます。
- 通商摩擦の対象はモノだけではない
関税や貿易のニュースというと、自動車や農産物などの「モノ」を思い浮かべがちですが、今後はデータやサービスといった無形の分野も同じくらい重要になります。 - デジタルのルールは産業政策でもある
どの国のルールが標準になるかで、自国のテック産業の競争力が左右されます。そのため、ルール作りをめぐる駆け引きは、従来の関税交渉以上に注目する価値があります。 - 利用者の利便性やプライバシーとも直結
データの流れや課税をめぐる取り決めは、サービスの価格や使いやすさ、そして個人情報の扱われ方にも影響します。企業だけでなく、利用者一人ひとりに関係するテーマだといえます。
トランプ米大統領(当時)によるカナダとの新たな通商摩擦は、単に二国間の対立というより、デジタル時代の国際ルールをめぐる「試金石」とも言えます。今後、各国がどのような形で「見えないもの」の取り扱いを決めていくのか、引き続き注目していく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








