スウェーデンで性別変更法が改正 16歳から手続き簡素化
スウェーデンで、戸籍上の性別を変更するための手続きが大幅に簡素化され、16歳から医師の証明書で法的性別の変更が可能になりました。本稿では、新制度のポイントと背景にある議論を整理します。
医師の証明書で性別変更が可能に
新しい法律の下では、法的な性別変更を希望する人は、自身の性自認が出生時に登録された性別と一致しないことを示す医療証明書を提出すればよいとされています。
医療専門職は、変更後の性別が本人の性自認をよりよく反映しているかどうかを評価し、今後もその性自認で生活していけるかを確認します。
従来は、性別違和の診断を得るために長期間の評価プロセスを経る必要がありました。性別違和とは、生まれたときに割り当てられた性別と、自分が認識する性別の不一致によって苦痛を感じている状態を指します。
年齢要件は18歳から16歳へ
新制度では、法的性別の変更が可能な最低年齢が18歳から16歳に引き下げられました。ただし18歳未満の場合は、保護者(法定代理人)の同意が必要です。
これにより、高校生の年代から、自分の性自認に沿った法的な性別を持てる可能性が開かれましたが、一方で未成年の意思決定をどう支えるかという点は、今後も議論が続きそうです。
施行直後に100件超の申請 当事者が感じる変化
法律の施行から1週間後までに、スウェーデン保健福祉庁によると106人が申請を行いました。新制度へのニーズの高さがうかがえます。
4年間の待機の末にようやくトンネルの出口が見えたと語るのが、22歳のジェニー・レオノール・ヴェルナーさんです。出生時には男性として登録されましたが、本人は女性として自認しています。
ヴェルナーさんは2024年に性別違和の診断を受け、本来であればすでに法的性別の変更を申請できる状態でした。しかし医療スタッフからは、新しい法律が施行されれば手続きが早くなるとして、待つよう助言されたといいます。
新制度のもとで申請できるようになり、ヴェルナーさんは「心配事が一つ減っただけでもうれしい」と話します。これまで本人の見た目と一致しない身分証を提示するたびに「これは本当にあなたですか」と尋ねられる場面もあったといいますが、今後は納得のいくIDカードやパスポートを持てるようになると期待しています。
医療と法律の切り離しで手続きはどう変わるか
新しい法律では、性別適合手術などの医療的な処置を受ける際にも、先に法的性別を変更しておくという要件が取り払われました。医療と法律の手続きを分けることで、柔軟に対応できるようにする狙いがあります。
性的教育を行うスウェーデンの団体で政策担当を務めるフランク・ベルグルンドさんは、この法律を「大きな前進」と評価しています。法と医療を切り離したことで、物事がずっとスムーズになったと述べています。
ベルグルンドさん自身も19歳のときに法的性別を変更しましたが、診断を得るまで約4年を要しました。現在も評価を開始するまでの待ち時間が数年に及ぶ場合があるとされており、新制度はこうした待機列の一部を解消する効果が期待されています。
増える性別違和の相談と2022年の転換
スウェーデン保健福祉庁は、特に出生時に女性とされた13〜17歳の若者の間で、性別違和のケースが急増していると指摘しています。2008年から2018年の間に、その数は1500%増加したと報告されています。
こうした急激な増加と慎重さの必要性を理由に、スウェーデン当局は2022年、未成年へのホルモン療法を原則として停止し、極めてまれなケースを除くことを決めました。また、トランジションを望む10代への乳房切除手術も制限しています。
一方で、法的性別の変更手続きそのものは今回の法律で簡素化されており、医療面では慎重姿勢を維持しつつ、本人の社会的な生活を支えるための法的な枠組みは柔軟にするという、二つの動きが併存しているかたちです。
議会での激しい論争と北欧のなかでの位置づけ
この法律は、2024年4月に議会で可決される前に、激しい議論を呼びました。右派の連立政権内でも意見は割れ、穏健党と自由党が賛成した一方、連立与党のキリスト教民主党は反対しました。政府を支える反移民を掲げるスウェーデン民主党も法案に反対しました。
一方で、市民団体や当事者団体からは支持の声が上がっています。特に、18歳未満でも条件付きで法的性別変更が認められるようになった点について、ベルグルンドさんは、18歳前に医療的な手続きはすべて済ませていたのに法的な変更だけできないのは不合理だったと振り返ります。
スウェーデンは1972年に性別変更に関する法律を最初に導入し、世界に先駆けて法的性別変更を認めた国とされています。今回の改正は、その1972年以来、初めての大きな見直しです。
それでも、市民団体の中には、医師の証明書すら必要とせず、本人の自己申告のみで変更を認めるべきだと主張する声もあります。これは、すでに他の北欧諸国で採用されている仕組みとされています。
日本の読者にとっての意味は
スウェーデンの新しい性別変更法は、法制度と医療の関係、未成年の意思決定、そして自分らしく生きる権利をどう守るかという、世界共通の問いを映し出しています。
日本でも性自認や性別変更をめぐる議論が続くなか、スウェーデンの経験は、制度設計の選択肢と、そのメリット・リスクを考えるための一つの素材になりそうです。どこまで医療の関与を求めるのか、未成年の声をどう受け止めるのか——読者一人ひとりが自分の意見を持つきっかけとして、この国際ニュースを位置づけてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








