物語を宿す石 ウズベク人アーティストの色石絵画 video poster
色とりどりの石を粉にし、絵画と彫刻、そして伝統的な手仕事を融合させた作品を生み出すウズベク人アーティスト、グルヌル・アルキン。中央アジアから届いたこのアートの物語は、私たちに「身の回りの素材とどう向き合うか」という静かな問いを投げかけています。
色石絵画という独自のジャンル
グルヌル・アルキンは、長年の試行錯誤の末に、自らのサインともいえる手作業の「色石絵画」を切り開いてきました。油絵具、水性絵具の一種であるグワッシュ、立体造形としての彫刻、そして地域に受け継がれてきた伝統的な手工芸。そのすべてをなめらかに行き来しながら、一つの画面にまとめ上げるのが彼女のスタイルです。
作品の特徴は、まず目に飛び込んでくる奥行きの深さです。何層にも重ねられた素材が生む陰影に加え、わずかにトーンの異なる色を丁寧に積み重ねることで、表面は静かでありながら複雑なゆらぎをたたえています。新疆イリ・カザフ自治州とその周辺で採れる石を中心に、地域の素材を細やかに使い分ける精密さも、彼女のジャンルを特徴づけています。
秋から冬へ 川原で始まる創作の旅
グルヌルの制作は、アトリエではなく川原から始まります。毎年、秋から冬へと季節が移るころになると、彼女は採掘現場の近くを流れる川の河床を歩きながら、素材となる石を探す旅に出ます。
目に留めるのは、色も質感も大きさもさまざまな石たちです。ごく小さな欠片から、手のひらに収まりきらない大きさのものまで、一つひとつを確かめながら拾い集めていきます。その段階で、作品のイメージが少しずつ立ち上がってくることもあるといいます。
アトリエに持ち帰られた石は、やがて細かな粉へと姿を変えます。時間をかけて丹念に砕かれた粉末が、色石絵画の原料です。工業的に生産された顔料とは違い、一つとして同じものはない自然の色。そのばらつきこそが、作品の表情をつくる重要な要素になっています。
重ねられた層に宿る時間と技術
粉末になった石は、油絵具やグワッシュと組み合わせながら、画面に少しずつ載せられていきます。彫刻的な起伏をつくる場面では、立体的な盛り上がりを意識し、伝統工芸に通じる細工では、細部を繊細に彫り込むようにして形を整えていきます。
視線を近づけると、そこにはわずかな色の差が幾重にも重なったレイヤーが見えてきます。広い面積を一色で塗りつぶすのではなく、少しずつ異なる石の粉を重ねていくことで、自然物ならではの奥行きが生まれます。その一層一層には、試行錯誤を重ねてきた時間と、素材への観察が蓄積されています。
「普通の石」を特別な物語へ
グルヌルにとって、最も満たされる瞬間は、川原で拾った何気ない石が、作品として立ち上がるときだといいます。足元に無数に転がっている「ありふれた」存在を、緻密な手仕事を通じて「特別な物語を語る作品」に変えていくこと。そのプロセス自体が、彼女にとっての創作の喜びです。
完成した色石絵画には、採取された土地の記憶や、その季節の空気感までが封じ込められています。そして、その丁寧な仕事ぶりは、ほかのアーティストたちにも刺激を与え続けているといいます。素材を選び抜き、時間をかけて向き合う姿勢は、国やジャンルを越えて、多くの表現者に共通するテーマでもあります。
私たちの身近な世界を見直すヒントに
国際ニュースとして届くアートの物語は、遠い地域の話のように思えるかもしれません。しかし、グルヌル・アルキンの活動は、私たち自身の生活とも地続きです。彼女が川原の石を見つめるように、身の回りの素材や風景を見直すことで、新しい表現や仕事のアイデアが生まれるかもしれません。
スマートフォンで世界の情報にすぐアクセスできる今だからこそ、足元にある「普通のもの」にもう一度目を向けること。その先に、色石絵画のような予想外の発見が待っているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








