中国が毎年500万人の少女に無料HPVワクチン 白書が示す女性の健康戦略
中国政府が発表した女性の発展に関する白書によると、子宮頸がんの主な原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチン接種が公的な福祉事業として拡大し、毎年約500万人の少女が無料で接種を受けられる体制が整いつつあります。国際ニュースとしても、中国の女性の健康政策の方向性を示す動きとして注目されています。
白書が描く「新時代の中国女性」
今回紹介されているのは、国務院新聞弁公室が公表した白書「新時代における中国女性の全面的発展の成果」(英語タイトル:China's Achievements in Women's Well-Rounded Development in the New Era)です。
白書は、2009〜2024年の取り組みと実績、そして2025年6月時点までに整備された制度をまとめたもので、中国における女性の健康と公衆衛生政策の「現在地」を数字とともに示しています。
18省で無料HPVワクチン 毎年約500万人が対象
白書によると、2025年6月時点で、HPVワクチン接種は中国国内の18の省で公的な福祉事業(パブリック・ウェルフェア・イニシアチブ)の一部として位置づけられています。この枠組みにより、接種対象年齢の少女を中心に、毎年約500万人が無料でワクチン接種を受けられるとしています。
- 対象:接種年齢に達した少女
- 対象人数:年間約500万人
- 地域:18省(2025年6月時点)
子宮頸がんの予防に重要なHPVワクチンを、「無料」「大規模」「公的制度」の三つをそろえて提供している点は、女性の健康を重視する政策の象徴的な一歩といえます。
子宮頸がん・乳がん検診 15年間で数億件規模に
HPVワクチンだけでなく、がん検診の拡大も白書の重要なポイントです。中国全土では、子宮頸がんと乳がんに対する無料検診が長期にわたり進められてきました。
- 2009〜2024年に実施された無料子宮頸がん検診:3億4200万件
- 同期間の無料乳がん検診:2億4500万件
- 2012〜2024年に中央政府が治療支援として拠出した資金:30.1億元(約4億2315万ドル)
検診と治療支援をセットで行うことで、「早期発見」と「経済的負担の軽減」の両面から女性の健康を支える狙いが読み取れます。長期にわたる数値を見ると、検診が単発のキャンペーンではなく、継続的な公衆衛生インフラとして位置づけられていることが分かります。
HIVなどの母子感染対策 母子間HIV感染率は1.2%に
白書は、感染症の母子感染対策についても詳しく言及しています。中国は、HIV(エイズウイルス)、梅毒、B型肝炎の母子感染予防を、主要な公衆衛生サービスのプログラムに組み込み、資源の統合と強化を進めてきました。
その結果として、2024年の中国におけるHIVの母子感染率は1.2%にまで低下し、「母子感染の排除」を目指した目標を達成したとされています。感染を「減らす」段階から、「排除」の基準を満たす段階へと移りつつあることが示されています。
ライフサイクル全体をカバーする女性の健康サービス
がん検診や感染症対策と並んで、女性の一生を通じた健康支援の体制づくりも進められています。白書によると、妊娠・出産期だけでなく、女性のライフサイクル全体を視野に入れた専門診療部門や外来が各地で整備されてきました。
- 妊娠・出産からその後のライフステージまでをカバーする専門外来・診療部門の設置
- 性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)の普及キャンペーンの展開
さらに、若い世代に向けた健康教育も重視されています。2024年末までに、全国で1万校を超える小学校・中学校・高校、そして1000を超える高等教育機関で、青少年向けの健康教育サービスが提供されたとされています。これは、性と生殖を含む健康リテラシーを、早い段階から高めていく狙いとみることができます。
家庭から社会へ 女性が担う健康リーダーシップ
白書は、健康を「個人の問題」にとどめず、「家庭」や「社会全体」のテーマとして広げていく試みも紹介しています。
具体的には、全国的な健康意識啓発運動や、「健康家庭イニシアチブ」、そして「健康中国・母親行動」といったキャンペーンが展開されています。これらの取り組みは、女性が家庭や地域社会において健康意識や健康管理をリードする存在となることを後押しするものです。
家族の食生活や生活習慣、病気の早期受診といった日常の選択に、女性の役割が大きいという前提に立ち、女性のエンパワーメントと公衆衛生の向上を同時に進めるアプローチだといえるでしょう。
数字から見える中国の女性政策と今後の論点
2009〜2024年の検診件数や、2024年時点の母子感染率、2025年6月時点で18省に広がった無料HPVワクチンなど、白書が示す数字は、中国が女性の健康を長期的な政策課題として扱ってきたことを物語っています。
一方で、白書が示すのは主に実績と制度拡大の側面です。今後は、地域によるサービス格差や、都市部と農村部での利用しやすさの違い、検診やワクチンへの実際のアクセス状況など、より細かな視点からの検証も議論の対象となっていきそうです。
女性の健康をどう支え、どこまで公的に保障するのか。中国の事例は、アジアや世界の国々が自国の制度を見直す際の一つの比較材料にもなり得ます。日本の読者にとっても、「数字で示される女性政策」をどう評価し、どのような点に注目すべきかを考えるきっかけとなるニュースといえそうです。
Reference(s):
cgtn.com








