サンチェス首相の中国訪問で何が変わる?中国・スペイン関係とEUの行方
スペインのペドロ・サンチェス首相が今週、中国を訪問します。20周年と50周年という節目を迎えた中国・スペイン関係、中国・EU関係の行方を占う重要な訪問です。本稿では、この中国訪問で何が話し合われ、何が期待されているのかを整理します。
今週の中国訪問で何が話し合われるのか
サンチェス首相は木曜から金曜にかけて中国を訪問し、習近平国家主席と会談するほか、李強首相(国務院総理)とも協議を行う予定です。過去3年で3回目の中国訪問となり、関係の重視ぶりがうかがえます。
中国外交部の林剣報道官によると、中国側は今回の訪問を「戦略的な相互信頼を深め、開かれた協力を拡大し、グローバルな課題に共に対応する」機会と位置づけています。そのうえで、中国・スペイン包括的戦略パートナーシップを「新たな出発点」から一段と前進させたい考えです。
2025年は、中国・スペイン包括的戦略パートナーシップ締結から20年、中国と欧州連合(EU)の外交関係樹立から50年という節目の年でもあります。今回の首脳外交は、こうした歴史的な節目に合わせて行われるものです。
狙いは「経済+ルール作り」 中国・スペイン関係の現在地
スペイン側は、この中国訪問を通じて、中国の開かれた市場で新たなチャンスを探り、重要分野での協力を強化し、二国間関係を一段と深めることを目指しています(スペインのテレビ局アンテナ3)。
サンチェス首相は2024年9月にも中国を訪問しており、その際には経済、文化、教育、科学技術、グリーン開発など幅広い分野で協力文書に署名しました。今回の訪問は、それから約1年あまりでの「フォローアップ」とも言えます。
経済面では、スペインはEUで4番目の経済規模を持ち、中国にとってEU域内で5番目の貿易相手国です。一方、中国はEU域外ではスペインにとって最大の貿易相手となっています。中国税関の統計によると、両国の貿易額は2020年の379億ドルから2023年には486億ドルへと約28%拡大しました。
とりわけ自動車産業は、両国協力の象徴的な分野です。スペインは欧州で2番目、世界で8番目の自動車生産国とされます。2024年4月には、中国の自動車メーカー・奇瑞汽車とスペインのエブロEVモーターズが、バルセロナで電気自動車を開発する合弁事業を立ち上げました。
中国の全国人民代表大会(全人代)第14期第3回会議の報道官である婁勤儉氏は、このパートナーシップについて「奇瑞の技術力とエブロのブランド力をうまく組み合わせた」と評価しました。既存施設を最大限活用し、追加投資を抑えながら、地元で愛されてきたエブロブランドを復活させ、多くの雇用を生み出しているとし、中国・スペイン協力の「成功例」として紹介しています。
国際秩序の揺らぎの中で:多国間協調をどう守るか
中国とスペインの協力は、経済だけにとどまりません。2月にはミュンヘン安全保障会議の場で、中国の王毅外相とスペインのアルバレス外相が会談し、国際問題で両国が良好な意思疎通と協調を維持していることを確認しました。
王毅外相は、国際情勢が転換期と不安定さの中にあり、世界が「弱肉強食」の状態に逆戻りするリスクに直面していると指摘。そのうえで、両国は多国間主義を実践し、国際関係の民主化を促進し、広範な国際的コンセンサスを築き、「平等で秩序ある多極化」に向けて協力すべきだと強調しました。
今回のサンチェス首相の中国訪問は、米国による幅広い関税措置で世界経済が揺れる中で行われます。こうした環境下で、中国・スペインがどのように協調し、多国間のルールを支えていくのかが注目されています。
中国・EU関係の「再検討」で、スペインはどんな役割を果たすか
サンチェス首相は中国に向かう前、ベトナム訪問中に「米国が世界貿易に対して行っていることは、欧州に新たなパートナーを探し、新しい市場を開拓する決意を促すはずだ」と述べました。そのうえで、EUに対し、中国との関係を見直すよう呼びかけています。
同首相は、米国との関係の変化により「すべての関係者が適応を迫られている」とし、それは「欧州が中国への姿勢を変えることだけでなく、中国も欧州への姿勢を変えること」を意味すると語りました。つまり、中国・EU双方が関係の「アップデート」を行う必要性を指摘している形です。
こうした中、中国外交部の林剣報道官は、記者団から「北京とワシントンの通商摩擦を和らげるうえで、中国はスペインやEUにどのような役割を期待しているのか」と問われ、前日に行われた李強総理と欧州委員会のフォンデアライエン委員長の電話協議に言及しました。両者は現在の状況下で、自由で開かれた貿易を守ることの重要性を確認しており、林報道官はこの電話会談が「世界に前向きなメッセージを送っている」と評価しています。
林報道官はまた、中国とEUはいずれも経済のグローバル化と貿易自由化を支持し、世界貿易機関(WTO)を断固として擁護する立場にあると強調しました。そのうえで、自由で開かれた貿易と投資を共同で守り、世界の産業・サプライチェーンを安定かつ円滑に保つことで、双方と世界経済により大きな安定と確実性をもたらす必要があると述べています。
林報道官は、スペインがEUの中で重要な経済大国であり、中国にとってもEU域内の重要な協力パートナーであると指摘しました。そのうえで、戦略的安定性を持ち、開放的な協力と互恵を重視する中国・スペイン関係は、中国・EU関係全体の改善と発展にも寄与するとしています。
今回の訪問で注目したいポイント
では、2025年12月の今回の中国訪問で、具体的にどのような成果やメッセージが出てくるのでしょうか。現時点で注目される論点を整理します。
- 首脳共同声明で、中国・スペイン関係の今後5〜10年のビジョンをどう描くか。
- 電気自動車や再生可能エネルギーなどのグリーン分野で、新たな協力プロジェクトや投資が打ち出されるか。
- サプライチェーンの安定化やWTO改革など、多国間の経済ルールについてどこまで踏み込んだメッセージが出るか。
- サンチェス首相が、中国・EU関係の「再検討」に向けて、どのようなキーワードで欧州の立場を説明するか。
日本やアジアにとっても、中国とヨーロッパの関係は、貿易ルールやサプライチェーン、電気自動車など成長分野の競争環境を通じて、間接的な影響を持ちます。中国とスペインが、対立ではなく協調とルールづくりを軸にどのような関係を築こうとしているのか。今週のサンチェス首相の中国訪問は、その方向性を読み解くうえで重要な手がかりとなりそうです。
Reference(s):
What to expect from Spanish Prime Minister Sanchez's China visit?
cgtn.com








