米国「Cancer Alley」環境レイシズムと呼ばれた工業地帯の現実 video poster
米ルイジアナ州のバトンルージュからニューオーリンズにかけての約85マイルの工業地帯「Cancer Alley(がん回廊)」をめぐり、住民の健康被害と制度的な放置が改めて注目されています。国連の最近の報告書は、この地域の状況を「環境レイシズム(環境における人種差別)」と位置づけました。
「Cancer Alley」とは何か——工場が密集する回廊
「Cancer Alley」は、化学・石油・ガス関連施設が数多く集積するエリアとして知られています。地元住民の多くは有色人種で、汚染された環境への慢性的な曝露が続く一方で、水質や食品安全をめぐる米政府の介入は極めて限定的だとされています。
住民は日常的に、製油所のフレア(炎の放出)、油流出、水に関する警告などを目にしながら暮らしています。入力情報によれば、がんの発症リスクは全米平均の40倍を超えるとされ、地域の不安を強めています。
ロバート・テイラーさんの証言——畑が工業地帯に変わった
1940年生まれのロバート・テイラーさんは、ルイジアナ州セントジョン教区で代々暮らしてきました。かつてサトウキビ畑や作物が広がっていた土地は、今では大規模な化学施設に囲まれています。
テイラーさんが語る地域の変化は、生活の輪郭そのものを変えるものでした。
- 有害化学物質を積んだトラックが昼夜を問わず行き交う
- 刺激臭が空気に漂い、屋外でも息苦しさを感じるという
- 10マイル圏内に十数の重工業が稼働し、人体が許容できる水準を超える汚染物質が放出されているとされる
家族や友人をがんで多く失い、母、兄、いとこたちに加え、最終的に妻も亡くしたといいます。以前は庭先で採って食べられた果物や野菜は「もうない」。庭の木々でさえ上から枯れ、近づくことをためらう住民もいる、と伝えられています。
セントジェームズの住民運動——「尊厳ある暮らし」を求めて
近隣のセントジェームズでは、シャロン・ラヴィーンさんが住民団体「RISE St. James」を立ち上げ、地域の「尊厳ある生活の権利」を守る活動を続けています。
ラヴィーンさんは、目・鼻・耳・胃のどれもが「安全ではない」と感じる状況があると指摘し、長く住めばほとんどあらゆる種類のがんにつながり得る、という切実な認識を示しています。また、住民を代表するはずの地方当局が化学企業側に寄り添い、産業拡張のために健康が犠牲になってきた、という見方も語られています。
国連報告書が示した言葉——「環境レイシズム」とは
最近の国連報告書は、企業が利益を優先する一方、規制当局の対応が不十分で、地域が「犠牲区域(sacrifice zone)」のように扱われている、と指摘しました。ここでいう「環境レイシズム」とは、特定の人種・コミュニティが不釣り合いに環境負荷や公害リスクを負わされる状況を指します。
報告書の文脈では、病気や死が「偶然」ではなく、長期の汚染と制度的な放置の結果として積み重なっている——そうした構図が問題の核心として描かれています。
今後、何が問われるのか——「声が届かない」構造
住民は米政府と企業に対し、責任の明確化、操業の停止、環境の回復を求め続けています。しかし現場では、工場の機械音にかき消されるように、住民の声が届きにくい現実もあるとされています。
2026年のいま、この問題が突きつけるのは、汚染そのものだけではありません。誰がリスクを引き受け、誰が利益を得て、どの声が政策に反映されるのか——その「配分」をめぐる問いでもあります。
ポイント(整理)
- 「Cancer Alley」は化学・石油ガス施設が密集し、住民の多くが有色人種とされる
- 水質・食の安全を含む公的介入が限定的だという指摘がある
- 国連の最近の報告書が「環境レイシズム」と位置づけた
- 住民側は操業停止や環境回復などの責任ある対応を求めている
Reference(s):
'Cancer Alley': A legacy of systemic racial discrimination in the U.S.
cgtn.com








