中国本土の大規模買い替え政策 自動車・家電・住宅で消費を押し上げ
昨年2024年、中国本土で始まった大規模な買い替え支援策が、自動車から家電、住宅リフォームにまで波及し、市場の空気を一気に温めました。政府補助と割引を組み合わせたこの取り組みは、国内消費を押し上げると同時に、産業の高度化や循環型経済の実現も狙っています。
中国本土で進む「大規模買い替え」キャンペーン
この買い替えキャンペーンは、古い設備や製品を廃棄・回収したうえで、新しい製品に買い替える際に補助金や割引が受けられる仕組みです。対象は、工場などで使う産業用設備だけでなく、一般家庭の家具や家電、自動車、不動産関連のリフォーム商品にまで広がっています。
全国規模の制度としての第一歩は、2024年2月に示された方針でした。その後、同年3月に国務院が実施に向けた具体的な手配を行い、制度設計が一気に進みました。
さらにおよそ3か月後には、国家発展改革委員会と財政省が、超長期特別国債の資金約3000億元(約425億ドル)をこの買い替え政策の支援に充てると発表しました。当初は産業設備の更新が中心でしたが、そこから短期間のうちに、家電や自動車、さらには不動産分野へと対象が拡大していきます。
政策の狙いは大きく見ると次の三つに整理できます。
- 個人消費と設備投資を同時に刺激し、内需を下支えすること
- 古い設備や製品を高性能な新製品に置き換え、産業全体の競争力を高めること
- 買い替え時に古い製品を回収・再利用し、循環型経済を推進すること
自動車市場で見えた買い替え効果
商務省が公表したデータによると、大規模買い替え支援の効果は、特に自動車市場で顕著に表れました。
2024年9月の国内乗用車小売販売は211万2000台となり、前年同月比で4.5%増加しました。巨大市場である中国本土において前年同月比で数%の伸びが出たことは、買い替え支援が市場心理の改善に一定の役割を果たしていることをうかがわせます。
10月も勢いは続き、同月第1〜第3週までの乗用車販売は前年同期比で16%増、9月比でも12%増となりました。これは商務省市場運行・消費促進司の李剛司長が、10月25日の記者会見で明らかにした数字です。
李司長によると、10月24日までに全国で283万件を超える自動車の買い替え補助申請が提出されており、申請件数はなお増加し続けていました。補助を活用してより高性能な車に乗り換えようとする動きが、各地で広がっていたことがうかがえます。
家電と住宅リフォームにも広がる買い替え需要
買い替えの波は、自動車だけでなく家電や住宅関連市場にも及びました。
2024年10月25日までに、補助対象となる8種類の家電について、1420万3000人の消費者が合計2072万6000台を購入し、売上高は950億7000万元に達しました。家計にとって負担の大きい大物家電の更新が進んだ形です。
住宅のリフォーム分野でも、補助対象となる商品がおよそ630万点購入され、追加で190億元の売上が生まれました。住宅設備や内装の更新が進めば、居住環境の改善や資産価値の維持にもつながります。
こうした買い替え需要は、製品そのものの売上にとどまらず、配送や取り付け、リフォーム施工といったサービス産業にも仕事を生み出します。単発のセールではなく、制度として継続することで、地域経済への波及効果も期待できる構造です。
国債を活用した「消費+投資」型のテコ入れ
今回の大規模買い替え政策で特徴的なのは、財源として超長期特別国債が位置づけられている点です。2024年に発表された約3000億元の国債資金は、この買い替え政策を支えるために活用されました。
国債という形で中央政府が資金を供給し、企業や消費者がそれを梃子に投資と消費を同時に拡大していく。この組み立ては、景気対策としての即効性と、設備更新による中長期の成長力強化の両立を意識したものといえます。
また、買い替え時に古い製品を回収する仕組みを組み込めば、廃棄物の削減や資源の再利用も進みます。消費刺激策でありながら、環境負荷の軽減やエネルギー効率の改善にもつなげようとする設計になっている点は、循環型経済を重視する動きとも重なります。
日本の読者が押さえておきたい視点
昨年の中国本土の例は、景気対策やグリーン転換をめぐるいくつかの論点を私たちに投げかけています。
- 補助金や減税を通じて、どこまで消費行動を変えることができるのか
- 誰がどの程度の恩恵を受けるのかという分配の設計をどう考えるか
- 短期的な需要喚起と、エネルギー効率改善や産業高度化といった長期目標をどう両立させるか
中国本土の大規模買い替え政策は、こうした問いに対する一つのアプローチを実際に試した例として位置づけることができます。アジア各国でも、老朽化した設備や家電製品をどう更新し、同時に環境負荷を減らしていくかは共通の課題です。
もし自分の周りで同じような買い替え支援が始まったら、どの製品を、なぜ更新したいと思うのか。そう考えてみると、この数字のニュースが、日々の暮らしの選択ともつながって見えてくるかもしれません。
Reference(s):
China's large-scale trade-in program ignites market enthusiasm
cgtn.com








