中国、EUのEV最終反補助金決定をWTO提訴へ 貿易とグリーン転換のせめぎ合い
中国がEUの中国製電気自動車(EV)への最終反補助金措置をめぐり、世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を表明しました。グリーン転換の中核とされるEV産業を舞台に、貿易ルールと環境政策がぶつかる局面に入っています。
中国、WTOに提訴へ 「EV産業の発展利益を守る」
中国商務省の報道官は8日、EUが中国製EVに対して決定した最終的な反補助金措置について、WTOの紛争解決手続きに基づく提訴を行う方針を明らかにしました。
報道官は、この措置は中国のEV産業の発展利益を守るとともに、世界的なグリーン転換への協力を促すことを目的としていると説明しています。
EUの「最終反補助金措置」とは何か
今回の争点になっているのは、EUが中国製EVを対象に導入した反補助金措置です。EU側は、中国のEV産業が政府補助金などにより不当な優位性を得ているとみなし、高い水準の相殺関税(カウンターベイリング・デューティー)を課す最終決定を行いました。
しかし、この決定に対しては、EU内の一部加盟国の政府や業界関係者、市民からも懸念や反対の声が上がっていたとされています。
中国側の主張:「事実・法的根拠を欠き、WTOルールに違反」
中国は、EUの反補助金措置に強く反対する立場を示しています。商務省の報道官によると、中国側は次のような点を問題視しています。
- 措置は十分な事実に基づいておらず、法的根拠を欠いている
- WTOのルールに違反しており、貿易救済措置を乱用している
- 補助金是正を名目としながら、実態としては貿易保護主義にあたる
中国は、EUに対し「誤りを認め、違法な措置を速やかに是正する」よう求めるとともに、世界のEV産業とサプライチェーン、そして中国とEUの経済・貿易関係の安定を共に守るべきだと呼びかけています。
WTO提訴で何が起きるのか
中国はすでに、EUの初期段階の反補助金措置についてWTOに問題提起しており、今回は最終決定を対象とした新たなステップとなります。
WTO紛争解決手続きでは、まず当事国同士の協議が行われ、それでも解決しない場合は専門家からなるパネル(小委員会)が設置されます。パネルは、措置がWTO協定に沿っているかどうかを審査し、勧告をまとめます。
こうしたプロセスは時間がかかる一方で、国同士の貿易対立を一定のルールの下でコントロールしようとする枠組みでもあります。
EVとグリーン転換、貿易摩擦の三つどもえ
今回のWTO提訴は、単なる中国とEUの貿易摩擦にとどまらず、次のような広い文脈の中で捉えることができます。
- 各国がEVや電池などの戦略産業を育成しようとする動き
- 温室効果ガス削減に向けたグリーン転換競争
- 国内産業保護と国際貿易ルールのバランスをどう取るかという課題
中国側は、EV産業の発展を守りつつ、グリーン転換での国際協力を進める必要性を強調しています。今回の提訴は、その一環として「ルールに基づいて問題を解決する」というメッセージでもあるといえます。
日本の読者にとってのポイント
日本にとってもEVや再生可能エネルギーなどの分野では、中国やEUとの競争と協力が同時に進んでいます。世界のEV市場やサプライチェーンが不安定になると、日本企業や日本の消費者にも影響が及ぶ可能性があります。
今回の動きから、次のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。
- EVなどグリーン関連産業は、今後も貿易摩擦の焦点になりやすい
- WTOなど国際ルールに基づく解決メカニズムの重要性が高まっている
- 環境目標と通商政策をどう両立させるかが各国共通の課題になっている
「読みやすいけれど考えさせられる」論点
グローバルな視点で見ると、今回のWTO提訴は「貿易」と「気候変動対策」という二つの公共財をどう両立させるかという問いでもあります。
EVの普及を加速させたいのであれば、各国の保護主義的な動きが行き過ぎると、コスト上昇や技術の分断につながりかねません。一方で、急速な輸入増にさらされる地域では、雇用や産業基盤への懸念も根強く存在します。
中国とEUが今回の対立を、対話とルールに基づくプロセスを通じてどのように整理していくのか。その行方は、日本を含む多くの国々のグリーン戦略と産業政策にも影響を与える可能性があります。
ニュースのその先にある「貿易と環境の両立」というテーマを、日々の会話やSNSでどう語り合うかも、私たち一人ひとりに開かれた課題と言えそうです。
Reference(s):
Spokesperson: China to file lawsuit with WTO over EU's final EV ruling
cgtn.com








