ブラジルのファベーラで音楽が生んだ変化 ミランダ兄弟の挑戦 video poster
かつて世界で最も暴力的とまで言われたブラジル・サンパウロの地区「ジャルジン・アンジェラ」で、二人の兄弟が音楽を武器に社会を変えようと動き出しました。その取り組みはやがて再生可能エネルギーやリサイクルへと広がり、2021年には国連から世界で最も持続可能なプロジェクトの一つとして評価されています。
暴力の象徴だった街、ジャルジン・アンジェラ
サンパウロの「ジャルジン・アンジェラ」は、かつて地球上で最も暴力的な地区の一つと見なされていました。犯罪や貧困が重なり、住民にとって日常そのものが危険と隣り合わせの環境だったとされています。
そうした状況では、治安対策だけではなく、人々の意識や日々の暮らしそのものを変えていくアプローチが不可欠です。そこで立ち上がったのが、クラウジオとファビオ・ミランダの兄弟でした。
音楽を「入口」にした社会変革
ミランダ兄弟が選んだのは、政治的なスローガンでも、大掛かりな開発プロジェクトでもなく、身近な文化である「音楽」でした。音楽をツールとして使い、人々の心を動かし、コミュニティに新しいつながりを生み出そうとしたのです。
彼らは音楽を軸にしたプログラムを通じて、若者や住民が集まり、学び、表現できる場をつくりました。日常の中に楽しさや創造性が戻ることで、暴力とは異なる生き方やロールモデルが少しずつ可視化されていきます。
まずは「音楽」という誰もが参加しやすい入口を用意し、そこから社会課題への関心を広げていく。この順番が、住民の心のハードルを下げる重要なポイントだったと言えます。
太陽光・リサイクル・バイオガスへ──広がるツール
音楽を通じて人々の注目を集めることに成功した後、ミランダ兄弟はプログラムの中に新たな「変化のツール」を組み込みました。それが、次のような取り組みです。
- 太陽光パネルの導入(ソーラーパネル)
- リサイクルの方法を学ぶ取り組み
- バイオガス(有機ごみからエネルギーを生み出す技術)の生産
こうした環境・エネルギー分野の試みは、単に技術を導入するだけでなく、「自分たちの街を持続可能な場所に変えていく」という誇りや自信につながります。音楽で人を集め、集まった人々と一緒にエネルギーや環境の問題に向き合う──そのプロセス自体が、社会変革の学びの場となっていきました。
Favela da Paz Institute、国連が認めた「持続可能なプロジェクト」
ミランダ兄弟が率いる「Favela da Paz Institute(ファベーラ・ダ・パス研究所)」は、こうした取り組みを通じて、2021年に国連から「世界で最も持続可能なプロジェクトの一つ」として選ばれました。
暴力のイメージが強かったファベーラ(都市型スラム)から、持続可能性の象徴となるプロジェクトが生まれたことは、国際社会にとっても象徴的です。2025年の今、このストーリーは「どんな地域でも、内側からの創造的な取り組みが変化を生み出しうる」というメッセージとして語り継がれています。
日本の地域づくりへのヒント
ブラジルのファベーラと日本の都市周辺地域では状況も歴史も異なりますが、ミランダ兄弟の取り組みから学べるポイントは少なくありません。
- 文化や音楽を入口にする: いきなり「問題解決」から入るのではなく、楽しさや共感を軸に人を集める。
- 関心が高まったタイミングで環境やエネルギーに広げる: 参加者が増えた後で、再生可能エネルギーやリサイクルなど、少し専門的なテーマを共有していく。
- 地域の中からリーダーが生まれる構図: 外からの支援だけではなく、住民自身が動き、プロジェクトを形にしていくことが持続性につながる。
日本でも、商店街のイベント、学校や地域センターの活動、音楽フェスやアートプロジェクトなど、入り口となる場づくりはさまざまに工夫できます。その先に、省エネ、再生可能エネルギー、リサイクル、フードロスなどのテーマをつなげていくことができれば、小さな一歩が大きな変化へと育つかもしれません。
「平和なファベーラ」という逆転の物語
かつて「世界で最も暴力的」とされた地域で、音楽から始まった取り組みが、太陽光やバイオガスといった持続可能なエネルギーにつながり、国連に評価されるまでになったファベーラ・ダ・パスの物語。
それは、どんなに厳しい環境にあっても、「文化」と「技術」と「コミュニティ」が組み合わされば、別の未来を選び取ることができる、という実例でもあります。
日々のニュースに疲れがちな私たちにとっても、ブラジルのファベーラから届くこのストーリーは、「自分の身近な場所で何を始められるか」を静かに問いかけてきます。通勤電車の中やスキマ時間に、この逆転の物語を一度じっくり噛みしめてみるのもよさそうです。
Reference(s):
cgtn.com








