APEC事務局長が語る、多国間協力の価値は信頼にある video poster
2024年にペルーで開かれたAPEC Economic Leaders' Weekで、APEC事務局のレベッカ・ファティマ・スタ・マリア事務局長は「多国間の枠組みに価値を与えるのは、信頼を築き、対話を続ける力だ」と強調しました。
この発言は、地政学的な緊張や分断が語られがちななかで、アジア太平洋の経済協力をどう維持し、発展させていくかを考えるうえで重要なメッセージです。
2024年ペルーのAPECで示された「信頼」の重み
APEC Economic Leaders' Week 2024は、アジア太平洋地域の首脳や閣僚、企業・専門家が集まり、貿易や投資、デジタル経済などを話し合う場としてペルーで開催されました。
スタ・マリア事務局長は、APECの価値は次の二つにあると指摘しました。
- メンバー経済間の「相互信頼」を少しずつ積み上げていくこと
- 一度きりではなく、「何年にもわたって対話を続けられる場」であること
年に一度の首脳会合だけでなく、通年の会合や作業部会を通じて顔の見える関係を築くことが、合意形成や危機対応の土台になるという視点です。
なぜ多国間の枠組みに信頼が必要なのか
多国間の枠組みは、ときに「結論が出にくい」「時間がかかる」と批判されることがあります。しかし、スタ・マリア事務局長の言葉を踏まえると、その「時間」が持つ意味が見えてきます。
- 立場の違いを前提にする:各メンバーの利害が一致しないのは当然であり、その前提で接点を探るには信頼が欠かせません。
- 対話を切らさない:意見の対立があっても、対話のチャンネルを開き続けることで、後から妥協点を見いだす余地が生まれます。
- 長期的なルール作り:貿易やデジタル分野のルールは一度決めると長く影響します。拙速な合意より、互いを理解したうえでの合意が重要です。
このように、多国間の場で積み重ねられる「地味な信頼づくり」は、ニュースとしては目立たないものの、実は私たちの日常の経済活動を支える基盤にもなっています。
APECは「経済に集中」、政治的ノイズに流されない姿勢
スタ・マリア事務局長は、APECは経済に焦点を当てており、政治や外部からの「ノイズ」に飲み込まれない枠組みだと述べました。
このスタンスには、次のような意味があります。
- メンバー間の政治的な対立があっても、貿易や投資、サプライチェーン(供給網)など共通の経済課題に集中する
- 政治的なメッセージの応酬よりも、具体的な協力プロジェクトやルール作りを前に進める
- 外部からの短期的な注目や批判に左右されず、長期的な信頼と協調を優先する
経済にフォーカスすることで、APECは「誰かを非難する場」ではなく、「共通の利益を探る場」であり続けようとしているとも言えます。
日本とアジア太平洋の読者にとっての意味
日本を含むアジア太平洋の経済は、貿易、観光、デジタルサービスなどで互いに深く結びついています。APECのような多国間の場で信頼が築かれるかどうかは、次のような形で私たちの生活にも影響します。
- サプライチェーンの混乱が起きたときに、各国・地域がどれだけ協調して対応できるか
- デジタル貿易や個人データの扱いなど、新しいルール作りで日本の企業や利用者がどんな条件で参加できるか
- 気候変動対策やエネルギー転換で、アジア太平洋全体としてどの程度足並みをそろえられるか
信頼があるからこそ、難しい局面でも「一緒に乗り越えよう」という発想が生まれます。逆に信頼が欠けると、小さな行き違いが大きな対立に発展しかねません。
「速さ」だけでなく「続けること」をどう評価するか
SNS時代の私たちは、目に見える成果や分かりやすい対立に注目しがちです。しかし、スタ・マリア事務局長が語ったように、APECの価値は長年にわたって対話を続け、信頼を積み上げてきたところにあります。
政治的なノイズが大きく聞こえるときこそ、「経済に集中し、対話を切らさない」という多国間協力のあり方をどう評価するかが問われています。ニュースを追うときにも、「その場がどんな信頼関係を育てているのか」という視点をひとつ加えてみると、国際ニュースの見え方が少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
APEC director: Trust-building gives value to multilateral bodies
cgtn.com








