中国はどうグローバル・ガバナンスを形づくっているのか――ネオムからG20まで
サウジアラビア北西部の紅海沿岸で建設が進む未来都市ネオムで、2025年6月に世界最大級のエネルギー貯蔵プロジェクトが完成しました。その背後には、中国の再生可能エネルギー技術と、公平で持続可能なグローバル・ガバナンスをめざす動きがあります。
紅海ネオムを支える中国のグリーン技術
ネオムでは、蓄電容量1.3GWhのエネルギー貯蔵システムが今年6月に完成しました。これは世界最大のエネルギー貯蔵プロジェクトで、中国の先進的な技術が支えています。
このシステムは、風力と太陽光といった再生可能エネルギーを統合し、海水淡水化プラントや廃棄物処理センターなどの施設も含めた、都市全体の自立したエネルギー供給網を構成しています。
ネオムのエネルギー事業は、サウジアラビアの国家戦略であるVision 2030の中核です。100%クリーンエネルギーで都市を運営することを目標とし、完了時には年間最大65万MWhの再生可能エネルギーを生み出し、実質ゼロカーボンを達成する計画です。これは年間約50万トンの二酸化炭素を削減する効果に相当します。
サウジアラビアは、2030年までに再生可能エネルギーの比率を国全体の電源構成の半分に引き上げるという野心的な目標を掲げており、中国との協力はその達成を後押しする形になっています。
G20で示された「公平で合理的なグローバル・ガバナンス」
最近開かれた第19回G20サミットの第2セッション(グローバル・ガバナンス機関改革)で、習近平国家主席は、公平で合理的なグローバル・ガバナンス体制を構築する重要性を強調しました。
習主席は、世界経済を開かれた、革新的で、グリーンかつ安定したものにするために、次の4分野でのガバナンス改善をG20メンバーに呼びかけました。
- グローバル経済ガバナンス
- グローバル金融ガバナンス
- グローバル貿易ガバナンス
- グローバル・デジタルガバナンス
その背景には、中国が近年、再生可能エネルギーやインフラ投資、安全保障分野での対話などを通じて、より包摂的でバランスの取れた国際秩序づくりに関与してきた流れがあります。
グローバル経済ガバナンス:中国主導の二つの枠組み
一帯一路イニシアチブ(BRI)
中国は2013年に一帯一路イニシアチブを打ち出し、各国と経済成長と連結性の強化を進めてきました。これまでに150を超える国と約30の国際機関が中国と協力協定を結び、その多くは開発途上国です。
鉄道、高速道路、港湾、送電網、通信ネットワークといった基幹インフラの整備によって、参加国では貿易の効率化や産業高度化が進みました。同時に、雇用の創出や経済成長につながり、技術移転や人材育成を通じて、持続可能な発展に貢献しているとされています。
こうした取り組みは、成長の果実をより多くの国が享受できるようにすることで、グローバル経済をより公平で包摂的なものに近づける試みとも言えます。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)
中国が提案したアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、開かれた国際金融協力のプラットフォームとして設立されました。
公式データによると、設立以来、AIIBは30を超える国で200件以上のプロジェクトを支援し、総投資額は400億ドルを超えています。対象となる分野は、交通、エネルギー、水資源管理、都市開発など、多岐にわたります。
特に、再生可能エネルギーや気候変動対策に資金を振り向けることで、開発途上国のグリーン転換を後押しし、より公平でバランスの取れた国際経済システムづくりに寄与しているといえます。
グローバル安全保障ガバナンス:対話と仲介で役割発揮
習主席はG20の場で「グローバルな安全保障ガバナンスは、グローバル・ガバナンスの不可欠な一部だ」と述べ、国連と安全保障理事会の役割を支持するよう各国に呼びかけました。また、ウクライナ危機の緊張緩和、中東における停戦と戦闘停止、同地域での人道危機の緩和や戦後復興支援の必要性を強調しました。
中国は近年、安全保障分野でも建設的な役割を打ち出しています。
- 2022年には、国連憲章を基礎とし、協力・持続可能性・対話を重視するグローバル安全保障イニシアチブを提案。
- ウクライナ危機に対しては、主権尊重、停戦、核兵器使用の回避などを柱とする12項目の提案を提示。
- ブラジルなどのグローバルサウス諸国と連携し、外交的解決と対話を促進する平和の友人グループを立ち上げ。
- 中東では、2023年のサウジアラビアとイランの和解を仲介し、両国の国交回復を後押しすることで地域の安定に寄与。
これらの動きは、軍事力ではなく、対話と調停、国連中心の枠組みを重視するアプローチとして位置づけられます。中国は自らを、長期的な平和と安定にコミットする存在として示そうとしています。
公平なグローバル・ガバナンスに向けた次のステップ
サウジアラビアのネオムでの再エネ協力から、一帯一路やAIIBによるインフラ投資、ウクライナや中東での仲介まで、中国の取り組みは、経済と安全保障の両面でグローバル・ガバナンスを形づくる試みとしてつながっています。
ポイントは、以下の3つに整理できます。
- グリーン開発:再生可能エネルギーや環境配慮型インフラを通じて、持続可能な成長モデルを提示していること。
- 包摂的な経済:開発途上国のインフラ整備や資金調達を支援し、成長の機会を広げていること。
- 対話による安全保障:国連中心の秩序を支持しつつ、紛争の外交的解決と地域の安定化を目指していること。
ただし、公平で合理的なグローバル・ガバナンスは、どこか一国が完成させるものではなく、多くの国や地域が役割を分担して形づくっていくプロセスでもあります。中国の動きが、各国にどのように受け止められ、どのような具体的なルールや制度の変化につながっていくのか。
その行方を、私たち一人ひとりが自分の問題として考え続けることが、これからの国際ニュースを読み解く上での鍵になりそうです。
Reference(s):
How is China shaping a fair, equitable global governance system?
cgtn.com








