反グローバル化の中で進む中国の市場開放戦略 ペルー・チャンカイ港とFTA網
世界各地で保護主義や反グローバル化の動きが強まるなか、中国は港湾インフラ投資や自由貿易協定(FTA)を通じて、市場開放と国際協力を前に進めようとしています。ペルーの港湾都市チャンカイで進む大型プロジェクトは、その象徴的な一例です。
ペルー・チャンカイ港で進む「静かな革命」
ペルー中部の沿岸にあるチャンカイは、これまで国際的にはあまり注目されてこなかった小さな港町でした。しかし過去2年あまりで、中国の投資を背景に、ラテンアメリカ有数のハイテク港へと姿を変えつつあります。
建設が進むメガポートには、無人クレーンや第5世代移動通信システム(5G)などの最新技術が導入され、世界最大級のコンテナ船が寄港できる設計になっています。稼働後は年間150万TEU(20フィートコンテナ換算)を扱う計画で、物流効率の大幅な向上が見込まれています。
プロジェクトの第1期が本格的に動き出すと、ペルーから中国への海上輸送日数は23日に短縮され、物流コストも少なくとも2割削減できるとされています。輸送時間とコストの両方を削ることで、企業にとっては新たな商機につながります。
この港はペルーだけでなく、ブラジル、ベネズエラ、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチンなど周辺国の企業にとっても、アジア向け輸出の重要な出発点になると見込まれています。チャンカイがラテンアメリカとアジアを結ぶ地域物流ハブとして機能すれば、南米発のサプライチェーンのあり方にも変化をもたらしそうです。
FTAで広がる中国の貿易ネットワーク
港湾インフラと並んで、中国が重視しているのが自由貿易協定(FTA)を軸にした国際経済戦略です。商務当局のデータによると、中国は2025年4月末時点で、アジアやオセアニア、アフリカ、ラテンアメリカにまたがる29の国・地域とFTAを締結しています。これらのFTAパートナーとの貿易額は、中国の対外貿易全体のおよそ3分の1を占めるとされます。
2022年だけを見ても、FTA締結国・地域との貿易は前年比8%増と、中国全体の貿易伸び率7.7%を上回りました。チリのサクランボやニュージーランドの乳製品など、一部の農産品は中国市場への関税が撤廃され、現地の生産者にとって新しい販路が開かれています。
FTAがもたらす具体的なメリット
こうしたFTAネットワークは、中国と相手国・地域の双方にとって、次のような効果が期待されています。
- 関税の引き下げ・撤廃により、農産品や工業製品の輸出入コストが下がる
- ルールが明確になることで、企業が中長期の投資計画を立てやすくなる
- 多国間の連結性が高まり、サプライチェーンの多様化や安定化につながる
「共有される市場」としての中国
北京大学国際関係学院の王勇教授は、FTAの意義について、次のように指摘しています。
「FTAの締結によって拡大を続ける中国市場が世界と共有されることになる。各参加国がそれぞれの資源や強みを補完し合うことができ、世界経済成長を支える重要な原動力の一つになっている。」
巨大な国内市場を持つ中国が、自国だけで消費を完結させるのではなく、関税優遇や物流インフラを通じて他国と利益を分かち合う構図をどう評価するかは、国際社会にとって重要な論点です。
反グローバル化の流れの中で何が問われているか
ここ数年、一部の国や地域では、自国産業を守る名目で関税引き上げや輸出規制を強める動きが見られます。そうした反グローバル化の潮流のなかで、中国は港湾建設やFTA締結を通じて、むしろ市場の開放と貿易・投資の自由化を打ち出しています。
ペルー・チャンカイ港のようなプロジェクトと、29の国・地域に広がるFTAネットワークが組み合わさることで、アジアとラテンアメリカの物流・貿易の地図は静かに描き替えられつつあります。日本を含むアジアの企業や消費者にとっても、南米からの調達ルートや価格、選択肢に影響が出る可能性があります。
日本からこの動きを見ると、次のような点が考えるヒントになりそうです。
- ラテンアメリカ発アジア向け物流の新たなハブとして、チャンカイ港がどこまで存在感を高めるのか
- FTAを通じて拡大する中国市場に、各国の企業がどのような形で参加していくのか
- 反グローバル化の圧力が高まる中で、開放的な貿易ルールをどう維持・強化していくのか
スキマ時間で押さえる3つのポイント
最後に、本記事のポイントを3つにまとめます。
- ペルーのチャンカイ港では、中国の投資により無人クレーンや5Gを備えたメガポート建設が進み、ラテンアメリカの新たな物流ハブとなりつつある。
- 中国は29の国・地域とFTAを結び、その貿易額は対外貿易全体の約3分の1を占めるまで拡大している。
- 反グローバル化の流れの中でも、中国は市場開放と国際協力を掲げ、インフラ投資とFTAを通じて開かれた世界経済の構築を目指している。
Reference(s):
China pushes for open markets amid rising anti-globalization trends
cgtn.com








