中国の没入型観光 シアターとワイン、国家公園の最前線 video poster
中国でいま、観光のキーワードが「見る」から「体験する」へと変わりつつあります。没入型シアター、ワインのシャトー、そして国家公園という三つの現場から、その変化をのぞきます。
時間旅行をかなえる没入型シアター(河南省)
中国ではここ数年、観光客が物語の中に入り込むように楽しむ没入型の観光体験への需要が高まっています。河南省のシアター・コンプレックスでは、観客がステージを「見る」だけでなく、自ら歩き回りながら歴史の世界に入り込む演目が提供されているといいます。
観客はセットの中を移動しながら、俳優とすれ違い、物語の場面に遭遇し、まるで時間と空間をさかのぼっているかのような感覚を味わいます。単なるショーではなく、空間そのものを使った「体験型の観光施設」として、地元の新しい目玉になりつつあります。
ヘラン山麓に生まれる中国スタイルのシャトー
一方で、ワイン造りの世界でも新しい挑戦が始まっています。中国スタイルのシャトーをつくろうとしている張言志(Zhang Yanzhi)さんは、フランスで醸造学を学び、国家ディプロマを取得した経歴の持ち主です。2002年には、フランスのボルドー・セガラン大学にアジア人で唯一入学を認められました。
現在、張さんはヘラン山のふもとにシャトーを建設しながら、ワイン造りと中国文化をどう結びつけるかを模索しています。目指しているのは、地域の雄大な自然の美しさと、中国ならではの文化的な要素を一つの場所で表現することです。
ワインという海外発祥の文化を取り入れつつ、ラベルや建築、もてなしのスタイルに中国的な物語を織り込むことで、「飲む」だけではない新しい観光体験をつくろうとしていると言えるでしょう。
Sanjiangyuan国立公園 極寒の地で育まれる自然との共生
中国南西部の青海省にあるSanjiangyuan国立公園は、地球上でも最も寒く過酷な環境の一つとされる場所です。その一方で、ここでは古くから受け継がれてきた自然への畏敬と感謝の知恵が、現代の保護活動と結びついています。
公園は、いくつもの生命を育む大河の源流として知られるだけでなく、人と動物の結びつきを象徴する場にもなっています。レンジャーたちは日々、野生動物の保護にあたりながら、厳しい自然と向き合い、共に生きる感覚を体現しています。
彼らにとって、動物は「守るべき対象」であると同時に、同じ土地を分かち合う存在です。その距離の近さが、Sanjiangyuan国立公園を単なる観光スポットではなく、「自然とともに暮らす」ことの意味を考えさせる場所にしています。
観光が問い直す「豊かさ」とは
河南省の没入型シアター、ヘラン山麓のシャトー、Sanjiangyuan国立公園。三つの現場に共通しているのは、「その場にいるからこそ感じられる体験」を重視している点です。
- 歴史の物語の中を歩き回る体験
- ワインを通じて土地の景色や文化を味わう時間
- 厳しい自然の中で生きる人と動物の関係を静かに見つめる視線
2025年のいま、観光は単なる消費行動から、「どんな時間を過ごし、何を感じるか」を選ぶ行為へとシフトしつつあります。中国各地で見られるこうした動きは、私たち自身の旅のスタイルや、自然との付き合い方を考え直すきっかけにもなりそうです。
次の休暇にどこへ行くかを考えるとき、「何を見に行くか」だけでなく、「どんな物語の中に身を置きたいか」という視点を持ってみると、新しい選択肢が見えてくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








