トランプ氏の対中国追加関税公約 中国本土「貿易戦争に勝者なし」
今年1月20日の大統領就任を前に、ドナルド・トランプ氏が中国本土などからの輸入品に新たな追加関税を課す方針を打ち出したことに対し、在米中国大使館の報道官が「貿易戦争や関税戦争に勝者はいない」と警告しました。米中関係だけでなく、世界経済や消費者の暮らしにも影響しうる動きとして注目されています。
何が起きたのか:トランプ氏の新たな関税案
トランプ氏は、昨年11月5日の大統領選で「アメリカ・ファースト」を掲げて勝利した後、就任前の演説で、中国本土からの輸入品に対して「既存の関税に上乗せして、さらに10%の追加関税を課す」と表明しました。
あわせて、カナダとメキシコからの輸入品には25%の関税を課す方針も示しており、北米全体の貿易にも大きな影響を及ぼしうる内容となっています。
中国本土の反応:「貿易戦争に勝者なし」
在米中国大使館の報道官、劉鵬宇氏はコメントで、米中の経済・貿易協力は本質的に「互恵的」であり、「貿易戦争や関税戦争に勝者はいない」と強調しました。
中国側は、米中経済は深く結びついているため、一方的な関税引き上げは最終的に双方の企業と消費者を傷つけるだけだとし、自制を促しています。
関税は誰が負担するのか:複雑なコストの流れ
関税は形式上は輸入業者やその代理を務める仲介業者が支払いますが、そのコストはそこで止まりません。トランプ氏は、最終的な負担者は輸出国だと主張していますが、実際のメカニズムはもっと複雑です。
- 輸入業者がコスト増を販売価格に転嫁し、消費者の支払額が上昇する
- 外国メーカーが取引関係を維持するため、自らの出荷価格を下げる
- 生産拠点を移転し、関税を回避しようとする動きが起こる
どのパターンを取っても、企業や消費者のいずれか、あるいは双方が負担を分け合う形となり、「誰も負担しない関税」は存在しません。
節約志向の強まる米消費者と小売業への圧力
報道によると、ここ数年、米国の消費者は不要不急の支出を控える傾向を強めており、小売企業や消費財メーカーにはすでに大きなプレッシャーがかかっています。
昨年11月に全米小売業協会(NRF)が公表した試算では、トランプ氏の新たな10%の関税案が実施された場合、米国の消費者の年間購買力が最大で780億ドル減少する可能性があるとされました。特に影響が大きいとされたのは、次のような生活に身近な品目です。
- 衣料品
- おもちゃ
- 家具
- 家電製品
- 靴
- 旅行用品
これらは多くの家庭が日常的に購入する品目であり、関税による価格上昇は家計に直撃しやすい分野でもあります。
低所得層ほど影響が大きい可能性
NRFでサプライチェーンと通関政策を担当する副会長のジョナサン・ゴールド氏は、小売業者は多様で手頃な価格の商品を提供するため、輸入品や輸入部品に大きく依存していると指摘しています。
そのうえで、関税のコストは最終的に販売価格に上乗せされるため、所得に余裕のない世帯ほど打撃を受けやすいと警鐘を鳴らしました。安価な衣料や生活必需品に頼ることが多い低所得層ほど、関税による値上がりに敏感にならざるをえません。
雇用増の狙いと「報復関税」のリスク
トランプ氏は、このような関税措置によって国内投資を呼び込み、雇用を増やす狙いがあるとしています。しかし専門家の間では、「一方的な関税強化は、相手国の報復関税を招き、別の分野で雇用を失わせる可能性がある」との懸念も根強くあります。
今年1月に発表された全米経済研究所(NBER)の研究では、2018〜2019年にトランプ政権下で導入された関税が詳しく検証されました。デービッド・オーター氏、アン・ベック氏、デービッド・ドーン氏、ゴードン・ハンソン氏らによる同研究は、当時の関税が保護を目指した産業の雇用を増やすことにはつながらなかった一方で、報復関税を受けた分野、特に農業で雇用減少が生じたと結論づけています。
「関税で国内産業を守る」という意図とは裏腹に、全体としてみれば雇用面でマイナスの影響が出たという指摘は、今回の新たな関税案を考えるうえでも無視できません。
日本やアジアにとっての含意
今回の米中間の関税をめぐるやりとりは、日本を含むアジアにも波及しうるテーマです。日本企業の多くは、中国本土や北米とのサプライチェーン(供給網)を通じて製品や部品をやり取りしており、米国が大幅な関税引き上げに踏み切れば、
- 生産拠点や仕入れ先の見直し
- 輸送コストや在庫コストの増加
- 最終製品の価格上昇
といった対応を迫られる可能性があります。
一方で、貿易摩擦が激化せず、建設的な対話を通じてルールが整備されれば、企業は中長期の投資計画を立てやすくなります。日本の読者にとっても、「関税」は遠い国の話ではなく、自分の給料や物価、投資先に影響しうるテーマとして、今後の米中関係の動きを追う必要がありそうです。
「勝者なき貿易戦争」を避けられるか
在米中国大使館が強調した「貿易戦争や関税戦争に勝者はいない」というメッセージは、過去の関税政策の検証結果とも重なります。自国産業を守るための関税が、消費者の負担増や別の産業の雇用減少という形で跳ね返ってくることは少なくありません。
トランプ氏の追加関税公約が今後どのような形で政策化されるのか、そして米中双方がどのレベルで応酬するのかは、2026年に向けても国際経済の大きな焦点となりそうです。日本としても、短期的な損得だけでなく、長期的な安定とルールづくりという視点から、この問題を注視していくことが求められます。
Reference(s):
cgtn.com








