中国の職業教育が新質生産力を支える理由
中国で職業教育が新質生産力の中核を支える存在になりつつあります。最新の報告によると、現代製造業や戦略的新興産業、現代サービス業の新たな現場労働者の7割超が職業学校の卒業生です。
最前線人材の7割超が職業学校出身
中国は、新たな成長エンジンと位置づける新質生産力の育成に向けて、技能人材の教育を強化してきました。職業教育の発展状況をまとめた「中国職業教育発展報告」によれば、現代製造業や戦略的新興産業、現代サービス業の第一線で新たに働き始めた人材のうち、7割以上が職業学校で学んだ人材だとされています。
新質生産力とは、先端技術、デジタル化、高度なスキルを備えた人材によって生み出される新しいタイプの生産力を指す概念です。大学中心ではなく、実践的な職業教育を通じてこの分野を支える人材を大量に育成している点が特徴といえます。
戦略的新興産業に対応した専攻の拡充
こうした流れを受け、中国教育部は2021年に職業教育の専攻カタログを改定し、次のような分野の専攻を拡充しました。
- 戦略的新興産業
- 現代サービス産業
- デジタル転換(デジタルトランスフォーメーション)
- 農村振興
2023年には、高等職業学校で戦略的新興産業に関連する専攻を設置する新たな学校・拠点が1,266カ所設けられ、前年から8.24%増加しました。対象分野には、次世代情報技術、高端設備製造、新素材、バイオテクノロジーなどが含まれ、関連専攻の卒業生は105万人超に達しています。
大学と企業の連携で現場の課題を解決
職業教育は教室内の教育にとどまらず、企業との協力を通じて現場の生産課題を解決する役割も担っています。職業大学や高等職業学校などは、国家レベルの科学研究プロジェクトを2,700件以上受託し、大学・企業の技術サービスプラットフォームを通じて企業に技術支援を提供してきました。
こうした技術サービスの提供額は累計で91億元超(約12億5,000万ドル)に上り、企業に移転された特許成果は7,000件超、取引額は5億4,000万元を超えています。職業教育機関が、研究と実務をつなぐハブとして機能している姿が浮かび上がります。
世界最大規模の職業教育システム
中国教育部によると、2023年時点で中国には技術学校を含む職業学校が1万1,000校以上あり、約3,500万人の学生が学んでいます。中国は世界最大規模の職業教育システムを持つ国とされています。
職業教育は、新質生産力の発展ニーズに焦点を合わせて専攻構成を最適化し、高品質な労働力の供給を通じて新質生産力の発展を支える基盤となっています。人材育成と産業政策を一体で進めようとする姿勢がうかがえます。
日本の読者にとっての論点
中国の職業教育の動きは、日本にとってもいくつかの論点を投げかけます。
- 産業構造の転換期に、どのように職業教育や専門学校を位置づけるのか
- 大学だけでなく、職業学校と企業が連携した研究・技術支援の仕組みをどう作るか
- デジタル化やグリーン化など新しい分野のスキルを、現場で働く人にどう届けるか
中国では、新質生産力の育成という国家的な課題に対し、職業教育が戦略的なツールとして活用されています。日本でも、学歴中心ではなく「どのようなスキルを、どのような場で身につけるか」という視点から、人材育成のあり方を見直すタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
China's vocational education boosts new quality productive forces
cgtn.com








