中国の拡張的財政政策はどこへ向かう?輸出減少時代の成長戦略
2025年現在、中国経済は「脱グローバル化」による輸出減少という長期的な逆風に直面しています。そのなかで注目されているのが、拡張的財政政策を通じて内需と技術革新をテコ入れする戦略です。本稿では、その考え方と狙いを日本語でわかりやすく整理します。
輸出減少が長期トレンドになるという見方
まず押さえておきたいのは、中国の輸出減少が一時的な現象ではなく、長期トレンドになりうるという見方です。背景には「脱グローバル化」と呼ばれる流れがあります。各国が自国優先の政策を強め、国際的な分業やサプライチェーンが揺らぐなかで、中国製品の海外需要が伸びにくくなっているという問題意識です。
この環境変化に対して、中国経済には二つの側面からの転換が求められていると指摘されています。
- 供給面:これまで世界市場向けに中・低価格帯の工業製品を大量に供給してきた生産モデルから、
国内市場向けに「民生の安定」や「技術革新」を支える製品・サービスを供給するモデルへと素早く移行すること。 - 需要面:外需(輸出)の減少を補うために、内需(国内の消費と投資)を積極的に押し上げること。これが成長の安定に不可欠とされています。
輸出主導から内需主導へ――。この大きな方向転換を支える手段として、拡張的財政政策が重要な役割を担うとされています。
なぜ拡張的財政政策がカギなのか
中国の国際収支が、かつての大きな黒字から「おおむね均衡」に近づくと、マクロ経済の力学も変わります。分析では、政府の財政支出が税収を上回り、財政赤字が生じているときにこそ、家計と企業が純粋な黒字(貯蓄超過)を実現できると説明されています。
現在のように、住民・企業・地方政府のバランスシートに圧力がかかり、金融政策の波及メカニズムもスムーズに働きにくい局面では、単なる金利引き下げなどでは貯蓄が投資に十分回りません。そのため、次のようなロジックで拡張的財政政策の重要性が強調されています。
- 家計や企業、地方政府は債務圧力があり、積極的に借りて投資を拡大しにくい。
- 金融緩和をしても、銀行貸出が伸びず、実体経済に資金が届きにくい。
- そこで中央政府が国債を発行し、自らのバランスシートを拡大することで、他の部門のバランスシート縮小を補う。
つまり、財政赤字の拡大と中央政府のレバレッジ(負債)の活用は、景気の下支えにとって有効で実行可能な「逆周期的政策」だと位置づけられています。
財政資金はどこに振り向けるべきか
財政を拡大するだけでは不十分で、その使い道も重要です。分析では、とくに次の二つの方向が指摘されています。
1. 投資と消費を直接押し上げる分野
一つ目は、政府投資の回復と消費の底上げに直結する分野です。具体的には、
- 債務問題の緩和:地方政府などの債務整理や再編を支援し、将来の投資余力を回復させる。
- 移転支出(トランスファー):住民への現金給付や補助金などを通じて、家計の可処分所得を下支えする。
- 買い替え支援(トレードイン):自動車や家電などの「古いものから新しいものへの買い替え」を促すキャンペーンに財政資金を投入し、消費を直接刺激する。
とくに、住民に対する現金給付や補助金は、消費にすぐつながりやすく、景気刺激効果が大きいとされています。単なるインフラ投資だけではなく、家計の財布に届く形の政策が重視されている点が特徴的です。
2. 技術革新を支える「質の高い供給」の強化
二つ目は、供給側の質を高めるための投資です。脱グローバル化によって、従来のように「輸出を通じて技術を学び、スケールメリットを活かす」というlearning by doing(やりながら学ぶ)型の技術進歩ルートが制約を受けているとされています。
このため、政府が技術進歩の新しいルートを設計し、主導する役割を担う必要があると論じられています。具体的には、
- 重要分野での「自主イノベーション」を後押しするため、トップレベルの設計(国家戦略)と財政資金を集中投入する。
- 単独の業種にとどまらず、関連する産業チェーン全体に広く技術進歩を波及させる。
こうした取り組みを通じて、需要の高度化に応えられる「高品質な供給」を整え、内需拡大と産業高度化を同時に進めることが目指されています。
3. 食料・エネルギー安全保障の強化
さらに、世界情勢の不安定化や市場メカニズムの機能不全といったリスクも指摘されています。そのなかで、食料とエネルギーの安全保障は、中国にとって最重要テーマの一つです。
分析では、財政資金を活用して次のような取り組みを進めるべきだとしています。
- 穀物の供給ルートを多様化・再構築し、リスク分散を図る。
- エネルギーの調達ルートや関連インフラを整備し、安定供給を確保する。
- これらに関連する資源供給チェーン全体を強化し、外部ショックに強い体制を築く。
内需拡大や技術革新と並んで、食料とエネルギーの安定供給を支える投資も、拡張的財政政策の重要な柱と位置づけられています。
これからの中国経済と世界への波及
輸出の伸びに頼りにくくなるなかで、拡張的財政政策を通じて内需と技術革新、そして安全保障を同時に強化していく――。こうした方針は、今後の中国経済の成長モデルを大きく形づくる可能性があります。
もしこの方向性が着実に進めば、中国では
- 輸出よりも国内市場の重要性が増す
- 先端分野での自主技術と産業チェーンの強靱化が進む
- 食料・エネルギー分野での安定志向の投資が続く
といった変化が想定されます。これは、中国経済だけでなく、サプライチェーンやエネルギー市場を通じて世界にも影響を与えうる動きです。
日本を含む周辺国や企業にとっても、中国の拡張的財政政策がどの分野に重点配分されるのかは、中長期のビジネス環境や経済連携を考えるうえで重要な情報になります。輸出減少と脱グローバル化という大きな潮流のなかで、中国がどのように成長モデルを組み替えていくのか。今後も慎重にフォローしていく価値がありそうです。
Reference(s):
China's expansionary fiscal policy, expectations of declining exports
cgtn.com








