マカオ経済がカジノ依存から転換 グレーターベイエリアで進む多角化
マカオ経済がカジノ依存から転換 グレーターベイエリアで進む多角化
カジノと観光の街というイメージが強いマカオで、経済の多角化が加速しています。広東・香港・マカオグレーターベイエリア(GBA)の枠組みを活用し、テックや金融、文化産業など新たな成長分野へのシフトが本格化しているからです。
カリフォルニア帰りの若手が見た「新しいマカオ」
中国のマカオ特別行政区出身で、カリフォルニアの大学で学んだフイ・ホーキットさんは、卒業後に故郷へ戻り、中国本土の先端ロボット技術をマカオに持ち込む起業に踏み出しました。
フイさんが拠点に選んだのが、広東省・香港・マカオを結ぶグレーターベイエリアです。彼はこの地域の起業環境について、各都市がそれぞれの強みを持ち寄り、近接したエリアで連携できる点を魅力に挙げています。マカオはポルトガル語圏とのネットワーク、香港は金融、深センは先端製造といった具合に役割分担が進み、スタートアップにとって多様な資源を活用しやすい環境になっているといいます。
フイさんのような若い起業家の存在は、マカオ経済が単なる観光都市から、テクノロジーとイノベーションの拠点へと姿を変えつつあることを象徴しています。
1999年の返還から続く「ポスト・カジノ」の模索
マカオは1999年の中国への返還以降、カジノと観光が経済を支えてきました。しかしここ数年、当局は「単一産業への依存」からの脱却を掲げ、経済構造の転換を進めています。
グレーターベイエリアへの本格的な組み込みは、その流れを後押ししてきました。中国本土の製造業やテックの力、香港の金融機能などと結びつくことで、マカオは観光以外の分野でも存在感を高めつつあります。いまや、マカオは「世界的な観光都市」であると同時に、「イノベーションの実験場」としての顔も持ち始めています。
2024〜2028年の経済多角化計画 6つの重点分野
マカオ特別行政区政府は、2024〜2028年を対象とした「適切な経済多元化」の発展計画を公表し、具体的な産業戦略を示しました。計画では、次の6分野が重点産業として位置づけられています。
- 観光・レジャー産業
- 中医薬とビッグヘルス(健康関連)産業
- モダン・ファイナンス(現代的な金融サービス)
- 新技術・ハイテク産業
- 会議・展示(MICE)産業
- 文化・スポーツ産業
計画期間の現在、マカオはこの6分野を柱に、従来の観光・カジノ産業と共存させながら、よりバランスの取れた都市経済を目指しています。
大学から生まれるイノベーションと宇宙分野への一歩
マカオの多角化を支えているのが、高等教育機関と産業界の連携強化です。近年、大学と企業、研究機関が協力して進める「産学研連携」による収入は増加が続き、約4億7,500万パタカ(約5,920万米ドル)規模に達しました。
2019年から2024年9月までに取得された特許は340件を超え、研究成果の社会実装が着実に進んでいます。観光とカジノだけに頼らない、知識と技術に基づく新たな産業基盤を築こうとする動きが見えてきます。
象徴的なのが、宇宙分野への参画です。マカオは2024年5月、中国本土の酒泉衛星発射センターで初の宇宙科学衛星を打ち上げました。中国本土の宇宙開発の流れと歩調を合わせることで、データ解析や宇宙関連研究など、新たな高付加価値分野への展開も視野に入っています。
花火、音楽、グランプリ イベントを核にした観光戦略
一方で、観光の強みを生かしながら中身を多様化する試みも進みます。マカオは国際花火コンテスト、国際音楽祭、グランプリといった大型イベントを積極的に展開し、世界各地から観光客を呼び込んでいます。
こうしたイベントは毎年、多くの来訪者を集め、マカオ経済に新しい活力を与えています。同時に、「カジノ中心」のイメージから「文化・エンターテインメントの都」へのシフトを後押しし、国際観光都市としてのブランドを強化しています。
従来型のカジノ収入に頼るのではなく、文化やスポーツを軸にした体験型観光を広げることで、収入源の分散とリピーターの獲得を狙う戦略といえます。
横に広がるインフラと、縦に積み上げる都市計画
マカオ経済の変化を支えるもう一つの柱が、インフラと都市計画です。広東省珠海市の南部に位置する横琴では、「広東・マカオ深合弁協力区」が整備され、マカオと珠海の連結が大きく改善しました。
珠海とマカオを結ぶ最大の通関口である拱北口岸では、ある年の1〜10月だけで延べ9,000万人以上が往来し、1日平均では30万人を超える人々が行き来しました。このスムーズな人とモノの流れが、貿易、観光、越境ビジネスの活性化につながっています。
都市計画の面では、新たな土地開発のおよそ3割が協力区で進められており、マカオ本島だけでは限られた空間を、周辺エリアとの連携によって補完する形が取られています。こうした越境型の土地利用は、空間の有効活用だけでなく、環境負荷の軽減や持続可能な都市運営にもつながると期待されています。
グレーターベイエリアという広域の枠組みの中で、マカオはコンパクトな都市でありながら、周辺都市との役割分担と連携を通じて、自らの強みを拡張しているとも言えます。
マカオの選択が示すもの 日本への示唆
カジノと観光に大きく依存してきたマカオが、テクノロジー、金融、健康、文化、スポーツへと経済の軸を広げようとしている現在の動きは、単なる一都市の話にとどまりません。
人口や面積が限られた都市が、どのようにして周辺地域とのネットワークを生かし、新しい産業を育てるのか。観光に依存してきた地域が、いかにして「体験価値」や「知識産業」を組み合わせていくのか。これらは、日本の地方都市や観光地にも共通する問いではないでしょうか。
2024〜2028年の計画期間の中で、マカオは今後も試行錯誤を続けながら、多角化と持続可能性の両立を模索していくことになります。そのプロセスを追っていくことは、グローバルな経済変化を考える上で、一つの興味深い「ケーススタディ」となるはずです。
マカオが波を読み、潮目を変えようとしている今、その動きがどこまで高い「新しい波」をつくり出せるのか。引き続き注目していきたいところです。
Reference(s):
Tide rising: A new height in Macao's economic diversification
cgtn.com








