中国の2025年経済戦略を読み解く 中央経済工作会議のポイント整理
2025年の中国経済がどのような方針で運営されているのか。先ごろ開かれた年次の中央経済工作会議では、「より積極的で有効な財政政策」「適度に緩和的な金融政策」「内需拡大」と「新質生産力の育成」が大きな柱として示されました。
習近平中国共産党中央委員会総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)は会議で重要演説を行い、2024年の経済運営を総括するとともに、2025年の経済運営の基本方針を提示しました。本記事では、公表内容をもとにそのポイントをコンパクトに整理します。
- 財政赤字拡大と超長期特別国債・地方特別債の活用
- 準備率・金利の機動的な引き下げによる「適度に緩和的」な金融
- 消費キャンペーンや設備更新・買い替え促進による内需拡大
- AIプラスや新質生産力の育成による産業高度化
- 不動産・金融リスクの抑制、グリーントランジションと民生の保障
2024年の総括と中国経済への基本認識
会議は、2024年の中国経済について「安定の中で前進し、高品質発展で着実な進展を遂げた」と評価し、年初に掲げた経済・社会発展の主要目標はおおむね達成できるとの見方を示しました。
とくに、中国共産党指導部が9月末以降に打ち出した一連の「積み増し」政策が社会の信頼感を高め、経済の顕著な持ち直しにつながったとしています。
一方で、外部環境の変化による逆風は強まり、国内の経済運営もなお多くの困難や課題に直面していることを認めました。それでも、「中国経済の長期的で健全な発展を支える条件と基本的なトレンドは変わっていない」と強調しています。
会議は「困難に正面から向き合い、自信を強め、あらゆるプラス要因を実際の発展成果に変えていかなければならない」と呼びかけました。
マクロ政策の方向性:積極財政と適度緩和の金融
2025年のマクロ経済運営について、会議は次の4点を重視するとしています。
- 安定した経済成長の維持
- 雇用と物価の大きな乱れを防ぐこと
- 国際収支の基本的均衡の維持
- 住民所得を経済成長とおおむね歩調を合わせて引き上げること
より積極的で有効な財政政策
財政面では、赤字対国内総生産比率(財政赤字率)を引き上げ、より積極的で「力強く効果的な」財政政策を実施するとしています。具体的には、次のような方針が示されました。
- 超長期の特別国債の発行枠を拡大
- 地方政府の特別目的債の発行を増やす
- 財政支出の構造を見直し、重点分野への投資を厚くする
こうした手段を通じて、景気の下支えと中長期の成長力強化を両立させる狙いです。
「適度に緩和的」な金融政策
金融政策については、「適度に緩和的」と位置付け、必要に応じて以下のような対応を行うとしています。
- 預金準備率(金融機関が中央銀行に預けるお金の比率)の段階的な引き下げ
- 政策金利の適切なタイミングでの引き下げ
- 市場に十分な資金流動性を供給すること
また、財政・金融だけでなく、雇用、産業、地域、貿易、環境、監督規制、改革・対外開放など、各分野の政策をより緊密に連携させる重要性も指摘されました。
消費と投資、内需拡大の具体策
2025年の重要課題として、会議は「消費の拡大」「投資効率の向上」「内需の全面的な拡大」を挙げています。
消費キャンペーンと所得支援
内需拡大の柱となるのが、大規模な消費振興キャンペーンです。会議は、次のような方向性を示しました。
- 住民所得を引き上げる施策の強化
- 低・中所得層の負担軽減による消費余力の拡大
- 消費分野ごとの重点策を組み合わせた「専用キャンペーン」の展開
設備更新・買い替えと新たな消費分野
投資と消費を同時に押し上げる施策として、次のような方向が打ち出されています。
- 生産設備の大規模な更新・高度化投資を後押し
- 家電など消費財の「買い替え(トレードイン)」プログラムの拡大
- 新製品や新サービスを初めて市場に投入する「デビュー経済」の育成
- 冬季スポーツなどを軸とした「氷雪経済」の発展
- 高齢者向け市場を意味する「シルバー経済」の拡大
あわせて、国家レベルの重要戦略の実施を支える投資を増やし、重要分野の安全保障能力を高めるため、必要に応じて中央予算からの投資も増額するとしています。
新質生産力と「AIプラス」で産業を高度化
会議は、科学技術イノベーションを最優先に位置付け、新質生産力の発展と現代的な産業体系の構築を進める方針を明確にしました。
先端技術プロジェクトとAIプラス
新質生産力の育成に向けて、次のような取り組みが示されています。
- 主要な科学技術プロジェクトを先を見据えて計画し、集中的に推進する
- 新しい技術・製品・サービスの「実証プロジェクト」を大規模に展開する
- 経済社会のさまざまな分野に人工知能を組み込む「AIプラス」イニシアチブを立ち上げる
- 次世代産業や将来有望な新興産業の育成を加速する
- 戦略的な科学技術力を強化する
「忍耐強い資本」と公正な競争環境
イノベーションを支える資金面では、短期的な利益を急がない「忍耐強い資本」を育成し、ベンチャー投資への社会資本(民間資金など)の参加を広く呼び込む方針です。
同時に、過度な競争や「消耗戦」を是正し、地方政府や企業の行動を適切に規律づけることも掲げられました。
経済制度面では、重要な経済改革措置を着実に実行し、監督・規制を強化しつつ、プラットフォーム経済の健全な発展を促すとしています。また、資本市場については、より包摂的で適応力の高い仕組みへと改善していく方針です。
高水準の対外開放とリスク防止
会議は、対外開放について「高水準の開放を拡大し、貿易と投資の安定を図る」としました。具体的には、次のような分野でパイロット(試行)プログラムを広げるとしています。
- 通信
- 医療・ヘルスケア
- 教育
一方で、リスク管理の重要性も強調されました。重点分野のリスクを有効に防止・軽減し、「システミックリスク(連鎖的な大混乱)」が起きないようにすることが求められています。
不動産市場と金融機関の安定
不動産については、市場の下振れを反転させ、安定化を図ることが明確な課題とされました。そのために、次のような対応を進めるとしています。
- 新たに供給する不動産用地の量を「合理的な範囲」にコントロールする
- 新しい不動産開発モデルへの転換を促進する
金融面では、地方の中小金融機関が抱えるリスクを「慎重かつ着実に」処理する方針が示されました。
地域発展、都市と農村の一体化
地域政策では、新型都市化と農村振興を車の両輪として進め、都市と農村の一体的な発展を促すことが掲げられました。
- 穀物など重要農産物の安定的な生産と供給を確保する
- 超大都市・特大都市のガバナンス(管理・運営)の現代化を進める
さらに、各地域の特色を生かした戦略の実行を強化し、新たな「成長極(成長エンジン)」を育てることも重視されています。経済的に先行する地域のイノベーション能力を高め、全国発展をけん引する役割を発揮させる考えです。
グリーントランジションと暮らしの安心
会議は、経済・社会のあらゆる分野でグリーントランジション(脱炭素・省エネへの移行)を加速する必要性を強調しました。
- 砂地や岩地、砂漠などにおける新エネルギー基地の建設をスピードアップ
- ゼロカーボン工業団地の整備を進める
同時に、「民生(人々の暮らし)」の保障と改善も重視されています。雇用政策では、重点産業や地域、都市・農村コミュニティ、中小・零細企業を対象にした雇用支援プランを打ち出すとしています。
少子化や高齢化への対応としては、次のような方向が示されました。
- 子どもを産み育てやすくする「出産支援政策」の策定
- 地域コミュニティが支える在宅介護サービスの整備
- 広く利用できる「普惠型(すべての人に開かれた)」高齢者ケアサービスの拡充
14次五カ年計画の締めくくりと次期計画への布石
会議は、2021〜2025年の第14次五カ年計画の目標と任務を「高い質で達成する」こと、そして2026〜2030年の第15次五カ年計画の力強いスタートに向けて「しっかりとした土台を築く」ことを打ち出しました。
そのために、マクロ政策をこれまで以上に「積極的で有効なもの」としつつ、成長とリスク防止、構造改革、民生の保障、グリーントランジションのバランスをとることが重視されています。
2025年の中国経済を読み解くうえで、今回の中央経済工作会議で示された方針は、内需拡大と新産業育成、リスク管理と生活の安定をどのように両立させていくのかを考える手がかりとなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








