トランプ次期政権の米政策転換、世界成長にリスク エコノミストが警鐘
アメリカで政権移行を控えるなか、ドナルド・トランプ次期大統領が掲げる財政・通商政策が世界経済の成長を押し下げる可能性があると、国際機関や金融機関のエコノミストが相次いで警鐘を鳴らしています。
トランプ次期政権への期待と不安
シンガポールの華字紙・聯合早報によると、トランプ氏が表明している大規模な財政拡張や保護色の強い通商政策は、来年のアメリカの金利政策をめぐる不確実性を高めており、市場では利下げのプロセスが鈍るとの見方が広がっているといいます。
大統領選の結果は、アメリカだけでなく世界の投資家や企業の前提条件を変えつつあります。とくに、財政と通商を同時に大きく転換する可能性があるため、市場が読みづらい状況が続いています。
- 財政赤字の拡大が金利や為替にどう影響するか
- 通商政策の転換がサプライチェーンに与える影響
- それに対する各国中央銀行の対応
モルガン・スタンレー:消費の「エンジン」減速を懸念
モルガン・スタンレーのエコノミストは最新の見通しノートで、ワシントンでの政権交代と通商政策のタカ派的な転換への期待が、今後数年にわたりアメリカの消費という成長エンジンを冷やす可能性があると指摘しています。
同社のチーフグローバルエコノミスト、セス・カーペンター氏は「米大統領選の結果は、世界経済全体に波紋を広げる政策変更の幕開けになる」と分析しています。
中国本土向け関税から始まる波及経路
カーペンター氏によると、新政権による最初の関税措置は主に中国本土からの輸入品を対象とし、その後、他の国からの品目にも段階的に広がっていくとみられます。
輸出企業は引き上げられた関税分を価格に転嫁せざるを得ず、その結果として、2025年後半にかけて物価上昇圧力が強まり、インフレ率が高まることが予想されます。
物価が上がれば家計の実質的な購買力は落ち込み、消費支出の鈍化を通じて生産や雇用にも下押し圧力がかかる、というのが同氏の見立てです。
- 関税の引き上げ → 輸入品価格の上昇
- 物価上昇 → 家計の負担増
- 消費減速 → 生産・雇用の悪化
- 悪影響が世界経済へと波及
ゴールドマン・サックス:世界成長率2.7%の「ベースライン」
ゴールドマン・サックス・リサーチは先月発表したリポートで、2025年の世界全体の実質GDP成長率について年平均2.7%と予測しました。これは、ブルームバーグがエコノミスト調査でまとめたコンセンサス予想をやや上回る水準です。
同社によれば、過去2年間にかけて世界的なインフレ圧力が和らいできたことが、こうした比較的前向きな成長見通しを支えています。
しかし、チーフエコノミストのヤン・ハチウス氏は、アメリカの通商政策が他地域の経済に逆風をもたらす可能性があると強調します。ハチウス氏は「最大のリスクは、広範な品目に一律で高関税を課すような措置であり、その場合、世界の成長は大きな打撃を受けかねない」と警告しています。
日本とアジアへの影響は
アメリカの消費や貿易政策の変化は、輸出への依存度が高い日本やアジア諸国・地域にも波及しやすい構造があります。とくに、対米輸出が大きい製造業や、グローバルなサプライチェーンに組み込まれた企業にとって、関税や需要減速は収益や投資計画を見直す要因となりえます。
一方で、インフレ圧力が高まる場合、各国の中央銀行は利下げペースの調整を迫られる可能性があり、為替市場や資本フローを通じた影響にも注意が必要です。
これから注視したい3つのポイント
- 具体的な通商・関税措置の中身:どの品目や国・地域が対象になるのか、発表のタイミングや規模が焦点になります。
- アメリカの金利政策の行方:利下げペースの見直しが現実になれば、新興国市場を含む世界の資金フローに影響します。
- 企業と家計の反応:物価や金利の変化を受けて、投資・雇用・消費がどの程度変化するかが、成長シナリオを左右します。
トランプ次期政権の政策はまだ具体像が見えない部分も多いものの、世界のエコノミストは予想外のショックになりかねないと警戒しています。日本の私たちも、日々のニュースの背後にあるこうした国際的な力学を意識しながら、世界経済の行方を見ていく必要がありそうです。
Reference(s):
Economists: US policy changes likely to impact global growth
cgtn.com








