米国ホリデー消費に二極化 高物価で広がる「年収格差ショッピング」
米国の年末ホリデー商戦では、消費全体は増加している一方で、その内側では「お金を使える層」と「生活必需品だけで精一杯の層」の分断が深まっている様子が浮かび上がっています。高物価のなかで、誰がどれだけ消費できているのかが、はっきりと分かれてきているのです。
ホリデー消費は増加、それでも広がる「二極化」
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが木曜日に伝えたところによると、米国の年末ホリデーシーズンの消費増加を主に支えているのは、年収10万ドル(約1000万円規模)を超える世帯だとされています。一方で、日々の暮らしに直結する食料品や託児サービスなどの価格が上昇し、低所得世帯はホリデーシーズンでも財布のひもを締めざるを得ない状況に置かれています。
決済データを分析するマスターカードの「SpendingPulse」によると、11月1日から12月24日までの米国消費は、自動車販売を除いて前年の同じ期間より3.8%増加しました。ただし、この数字には、年末商戦の「追い込み」ともいえるクリスマス後の買い物シーズンは含まれていません。見かけ上は堅調な数字でも、その中身は一様ではないことが示唆されています。
年収10万ドル以上と5万ドル以下 企業が見る「二つの市場」
こうした二極化は、企業の現場にもはっきりと表れています。シャーピーのペン、グレコのベビーカー、オスターのキッチン家電などを手がけるニューウェル・ブランズの最高経営責任者、クリス・ピーターソン氏は、米紙の取材に対し、米国市場で「年収5万ドル以下」と「年収10万ドル以上」の消費者のあいだに明確な分断が見えてきたと語っています。
ピーターソン氏によれば、同社では100ドル以上の高価格帯ブレンダーなど、プレミアム製品への需要が強くなる一方で、20ドル未満のエントリーレベル製品への関心は弱まっているといいます。その結果、同社は最も安価な製品の改良には力を入れず、むしろ高価格帯の製品ラインを強化する戦略に舵を切っています。
企業がどの価格帯に投資するかは、どの層の消費が伸びているかを映し出す鏡でもあります。いまの米国では、「少し高くても質の良いもの」を選べる層の存在感が増し、そこに焦点を合わせる企業が出てきていることが分かります。
賃金データから見える米国の所得構造
記事では、米国労働統計局の賃金データも紹介されています。2023年時点で、米国の個々の労働者の平均年収は65,470ドル、すべての労働者の年収中央値は48,060ドルとされています。
平均値よりも中央値がかなり低いということは、高い収入を得ている一部の人が平均値を押し上げている一方で、多くの人が「平均未満」の収入で暮らしていることを意味します。中央値に近い年収4万~5万ドル前後の人たちは、記事で言及されている「年収5万ドル以下」のグループにも重なりやすいと考えられます。
この層にとって、食料品や託児サービスといった生活必需品の価格上昇は、ホリデーシーズンの買い物に回せるお金を直接削る要因になります。一方で、平均を上回る高所得層は、物価上昇の影響を受けつつも、余裕がある分だけプレミアム商品の購入を続けやすい立場にあります。
高物価が家計と「楽しみの格差」に与える影響
物価が上がる局面では、まず食費や住居費、託児サービスなど「削りにくい支出」が家計を圧迫します。記事によれば、米国でもこうした必需品のコスト増が低所得層の家計を直撃し、ホリデーのプレゼントや外食、レジャーなど、いわゆる「楽しみの支出」を抑えざるを得ない状況が生まれています。
対照的に、年収10万ドルを超える世帯は、高価格帯のブレンダーなど、日常の質や便利さを高めるプレミアム製品への支出を増やしています。ホリデー商戦の売り上げは伸びていても、「どの層がどれだけ楽しめているか」という体感は、所得によって大きく違っている可能性が高いといえます。
また、企業が高所得層向けの商品やサービスに重点を移すほど、低価格帯商品の選択肢や質が相対的に置き去りにされる懸念もあります。こうした動きは、長い目で見ると「消費の場」における格差を固定化しかねません。
日本の読者が押さえておきたいポイント
米国ホリデー消費のニュースは、日本で暮らす私たちにとっても他人事ではありません。今回の報道から読み取れるポイントを、あらためて整理してみます。
- 消費全体の伸びだけでは見えない格差
「消費は前年比プラス」という数字の裏で、誰の消費が伸び、誰の消費が抑え込まれているのかを見る視点が重要になっています。 - 企業戦略が示すターゲットの変化
ニューウェル・ブランズのように、高価格帯製品に比重を移す企業は、どの層を「これからもお金を使ってくれる顧客」と見ているのかを示しています。 - 生活必需品の価格が生む「楽しみの格差」
食料品や託児サービスのコスト増は、収入の低い層ほどホリデーの楽しみやゆとりを奪いやすくなります。これは、どの国でも社会的な議論につながりやすいテーマです。
表向きは好調に見える米国のホリデー消費も、その内側を丁寧に見ていくと、高物価を背景とした所得階層ごとのギャップがくっきりと浮かび上がります。数字だけではなく、「誰がどれだけ楽しめているのか」という問いを持つことが、これからの国際ニュースを読み解くうえでのヒントになりそうです。
Reference(s):
Deepening divide in U.S. holiday spending trends driven by high prices
cgtn.com








