バイデン大統領が日本製鉄のUSスチール買収を阻止 安全保障と供給網を懸念
米国のジョー・バイデン大統領は米国時間の金曜日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画を大統領令で正式に阻止しました。約149億ドルにのぼる大型の国際M&Aが、安全保障とサプライチェーンを理由に止められた形で、世界の産業政策と企業戦略にとっても象徴的な動きといえます。
大統領令の理由 米大手鉄鋼会社を外国支配下に置けないと強調
今回の発表によると、バイデン大統領は声明の中で、日本製鉄によるUSスチール買収が実現すれば「米国最大級の鉄鋼メーカーの一つが外国の支配下に置かれる」と指摘し、米国の国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクを生むと説明しました。
こうした認識に基づき、大統領は買収を禁じる大統領令に署名し、日本製鉄によるUSスチールの取得を正式にブロックする判断を示しました。
- 買収額は約149億ドルにのぼる大型案件
- 米側は国家安全保障と重要サプライチェーンへの影響を懸念
- 老舗鉄鋼メーカーUSスチールの今後の行方に注目が集まる
USスチールとは 米国の工業化を支えた老舗メーカー
USスチールは1901年に設立された、米国を代表する鉄鋼メーカーです。中国中央テレビによると、同社は米国の工業化を進める上で欠かせない存在であり、橋梁や高層ビルの建設、第二次世界大戦中の米海軍艦艇向けの鋼材供給など、幅広い分野で重要な役割を果たしてきました。
続く業績不振が売却判断の背景に
しかし近年、USスチールは赤字が続いており、鉄鋼生産量や企業価値は他の米国鉄鋼会社と比べて大きく見劣りする状況にあります。その結果、競争力の低下が意識されるようになり、売却という選択肢が現実味を帯びていきました。
今回の売却計画も、こうした業績不振を背景に、事業の立て直しと将来の投資を外部資本に委ねる狙いがあったとみられます。
日本製鉄の買収計画 名称と本社維持、数十億ドル投資を約束
約2年前の2023年12月、日本製鉄はUSスチールを約149億ドルで買収する計画を発表しました。発表当時、日本製鉄はUSスチールの社名や本社機能を維持する方針を示し、さらに数十億ドル規模の投資を行うと約束していました。
買収が実現すれば、USスチールのブランドと拠点を生かしながら、日本製鉄の技術や経営資源を投入することで競争力の回復を図る構想でした。しかし今回の大統領令により、この青写真は少なくとも現時点では実現できない状況になりました。
国際M&Aに広がる安全保障のフィルター
今回の決定が浮き彫りにしているのは、国境を越える企業買収が、単なるビジネス上の判断だけでは完結しなくなっている現実です。とくに鉄鋼のように、軍事やインフラ、エネルギーなどと深く結びつく分野では、安全保障やサプライチェーンの観点から政府の関与が強まる傾向があります。
企業にとっては、財務やシナジーといった従来の検討項目に加えて、買収が安全保障や重要物資の供給にどう影響すると見なされるのかを読み解く力が求められています。今回のように、最終段階で政策判断によって計画が大きく変わるリスクもあるためです。
私たちにとっての意味 サプライチェーンは安さだけで測れない
鉄鋼は、自動車や家電、建設など、私たちの生活を支える多くの産業の土台となる素材です。その供給をどの国のどの企業に任せるのかという問題は、価格だけでなく、安定性や安全保障とも切り離せなくなっています。
バイデン大統領による今回の判断は、サプライチェーンの世界で「どこで、誰が、どのように作るのか」という視点が一段と重視されていることを示すものだといえます。日本企業を含む各国の企業は、今後も国際M&Aや投資戦略を考える際に、政治と安全保障の変化をより慎重に織り込む必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








