トランプの対カナダ・メキシコ25%関税案は本当に実行されるのか
リード
トランプ氏がカナダとメキシコからの全輸入品に一律25%の関税をかけると公約し、新機関「External Revenue Service(外部歳入局)」の創設まで打ち出しています。この強硬な関税計画は、本当に実行される「脅し」なのか、それとも交渉のカードにすぎないのか。カナダの反応やUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)への影響を手がかりに整理します。
トランプ氏の25%関税計画と「External Revenue Service」
トランプ氏は選挙キャンペーン中の10月、「辞書の中で最も美しい言葉は関税(tariff)だ。私のお気に入りの言葉だ」と語り、関税を自らの政策の中心に据える姿勢を強調してきました。
その流れの中で、11月25日には大統領就任後の1月20日に、大統領として最初の日に署名する大統領令として、カナダとメキシコからの全ての輸入品に25%の関税を課すと公約しました。名目上の理由は、長年くすぶってきた不法移民と麻薬流入の問題に対処するためだとされています。
さらに就任を目前に控えた火曜日、トランプ氏は「External Revenue Service(外部歳入局)」という新たな省庁を設置し、外国からの関税・税関・その他の歳入を一元的に徴収する構想も打ち出しました。就任初日から関税政策を一気に加速させるというメッセージです。
カナダのスタンス:「全てがテーブルの上」
こうした関税の脅しに対し、カナダ側は「全てがテーブルの上だ」として、取れる対応の選択肢を狭めない構えを見せています。
トランプ氏がカナダへの25%関税に言及してから数日後、カナダのジャスティン・トルドー首相は予告なしにトランプ氏を訪ね、11月29日に米フロリダ州マー・ア・ラゴで夕食をともにしたと報じられています。
メディア報道によると、この席でトランプ氏はカナダを米国の「51番目の州」にするというアイデアに言及し、トルドー氏を「カナダの知事」と呼んでからかいました。その後もトランプ氏は自身のSNS「Truth Social」で、「知事にまた会い、関税と貿易について踏み込んだ議論を続けるのを楽しみにしている」と投稿しています。
形式上は友好的なディナーのように見えますが、カナダを米国の一部として扱うかのような発言は、力関係の差を誇示しつつ関税問題で圧力をかけるシグナルとも受け取れます。
「全てがテーブルの上」という姿勢の中には、例えば次のような選択肢が含まれると考えられます。
- 米国の関税に対する報復関税の検討
- USMCAの枠組みを活用した紛争解決手続きの活用
- メキシコなど他のパートナーと連携した外交的圧力
ただし、カナダ経済は米国市場に深く組み込まれており、自動車やエネルギーなどの分野で相互依存も大きいため、どのカードをどこまで切るのかは非常にデリケートな判断になりそうです。
メキシコとUSMCAへのインパクト
今回の関税案はメキシコにも同様に適用されるとされており、北米のサプライチェーン全体に大きな影響を与えかねません。
25%という一律の高関税は、自動車、農産品、製造業製品など、メキシコから米国への幅広い輸出に重くのしかかります。企業にとってはコスト上昇となり、最終的には米国の消費者価格にも跳ね返る構図です。
トランプ氏が第1期目の政権時代に署名したUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)は、本来、関税の撤廃や貿易ルールの安定化を通じて北米の経済統合を進めるための枠組みです。そこに一方的な25%関税が課されれば、協定の精神と整合的なのかどうかが問われます。
実際に関税が導入される場合、協定に基づく紛争解決や再交渉が議論になる可能性があります。メキシコ側の具体的な対応は現時点で詳細には伝えられていませんが、USMCAの土台そのものが揺らぎかねないという点で、各国政府も企業も神経をとがらせているといえるでしょう。
「本気の政策」か、「交渉カード」か
では、トランプ氏の関税計画はどの程度「本気」とみるべきでしょうか。
本人が「最も美しい言葉は関税」と繰り返し語ってきたことや、関税徴収のための新機関まで構想していることを踏まえると、関税を単なるレトリックではなく、外交・経済政策の中心に据えようとしているのは確かです。
一方で、カナダとメキシコは米国にとって最大の貿易相手であり、25%という水準は企業や消費者にとっても負担が大きい数字です。米国内の産業界や議会からの反発、雇用や物価への影響を考えると、当初の発言どおり全面的な関税を長期にわたり維持するのは容易ではありません。
そのため、関税案の一部は、移民・麻薬対策や貿易交渉で譲歩を引き出すための「強いカード」として使われる可能性もあります。どこまでが本気の実行計画で、どこからが交渉用のレバレッジなのかを見極めることが、今後の国際ニュースを読み解く鍵になりそうです。
日本・アジアへの波及も無視できない
一見すると北米地域に限定された関税問題のように見えますが、日本やアジアの経済にも無関係ではありません。
日本企業を含む多くのアジア企業が、カナダやメキシコを生産拠点として米国市場に製品を供給しています。ここに一律25%の関税が課されれば、ビジネスモデルの見直しや生産拠点の再編を迫られる可能性があります。
また、主要国が二国間の関税引き上げを交渉手段として多用する流れが強まれば、世界の貿易ルールや多国間の枠組みの信頼性も試されます。日本としても、北米の動きを注視しつつ、自らの通商戦略を柔軟にアップデートしていく必要があるでしょう。
押さえておきたいポイント
- トランプ氏はカナダ・メキシコからの全輸入品に25%の関税を課すと公約し、就任初日の大統領令として実行するとしています。
- 関税徴収を担う新機関「External Revenue Service(外部歳入局)」の創設計画も打ち出し、関税政策を体制面から強化しようとしています。
- カナダのトルドー首相はマー・ア・ラゴでトランプ氏と会談し、「全てがテーブルの上」としてあらゆる選択肢を排除しない姿勢を見せています。
- USMCAの枠組みと25%の一律関税は緊張関係にあり、北米のサプライチェーンや世界の貿易秩序に波紋を広げる可能性があります。
- この関税案がどこまで実行されるのか、それとも交渉のための圧力なのかを見極めることが、これからの国際ニュースを理解するうえで重要です。
国境を越える経済と政治が複雑に絡み合う時代にあって、関税は単なる税金ではなく、外交・安全保障・国内政治を貫くツールになりつつあります。今回のトランプ氏の動きも、その一つの象徴として引き続き注目を集めそうです。
Reference(s):
Analysis: Are Trump's tariff plans for Canada, Mexico real threats?
cgtn.com








