中国とEU、知的財産権を巡るWTO紛争でも「対話の窓は開いている」
EUが世界貿易機関(WTO)に知的財産権を巡る紛争を提起したことを受け、中国商務省は2025年12月8日、EUとの知的財産権に関する「意思疎通のチャンネルは常に開いている」と表明しました。標準必須特許(SEP)という専門的なテーマですが、スマートフォンや通信ネットワークに直結する国際ニュースです。
この記事のポイント
- EUは中国の標準必須特許(SEP)紛争に関する司法判断を巡り、WTOに提訴したとしています。
- 中国商務省は、EUとの知的財産権に関するコミュニケーションのチャンネルは常に開かれていると強調しました。
- 同省は、今年1月20日にEUから協議要請を受け取ったと明らかにし、今後もWTOルールに基づき自国の正当な権益を守る姿勢を示しました。
何が起きているのか:EUのWTO提訴
中国商務省によると、EUは月曜日、中国の標準必須特許(SEP)紛争に関する司法判断を巡って、世界貿易機関(WTO)に提訴しました。標準必須特許とは、通信などの国際規格を実装するうえで欠かせない特許のことで、その扱いは多くの企業にとって重要な問題です。
商務省はオンライン声明で、EUからの協議要請を今年1月20日に受け取っていたことも明らかにしました。協議要請は、WTOにおける紛争解決手続きの入り口であり、まず当事国間の話し合いによって解決を試みる段階とされています。
中国商務省のメッセージ:対話とルール順守を強調
オンライン声明の中で、中国商務省は、EUとの知的財産権に関する意思疎通のチャンネルは「常に開いている」と述べ、対話を通じた解決に前向きな姿勢を示しました。
同省はさらに、中国はWTOのルールおよび加盟時の約束を厳格に順守してきたと強調し、知的財産権の保護に関する法整備や執行を継続的に改善してきたと説明しました。こうした取り組みは、国際的にも広く認められているとしています。
一方で、中国は今後の対応について、WTOルールに従い「自国の正当な権利と利益を断固として守る」としており、協議とルールに基づいた防御の両方を視野に入れていることがうかがえます。
標準必須特許(SEP)とは何か
通信規格に欠かせない特許
標準必須特許(Standard Essential Patent、SEP)とは、4Gや5Gなどの通信規格、Wi-Fi、動画圧縮方式といった国際標準を実装するために不可欠な特許を指します。ある特許が標準に組み込まれると、その標準を使うメーカーは原則としてその特許を避けて製品を作ることができません。
そのため、SEPを持つ企業は特許ライセンス料を通じて収益を得ますが、同時に「公平・合理的かつ非差別的」(FRAND条件)な条件でライセンスを提供することが国際的なルールとして求められています。
なぜ国際紛争につながるのか
SEPを巡る紛争では、特許料が高すぎるのか、ライセンス条件が公平かどうか、特定の企業を不利に扱っていないかなどが争点になります。また、各国の裁判所が自国だけでなく世界全体のライセンス条件に踏み込んだ判断を行うケースもあり、今回のように国と国とのレベルでの対立につながることもあります。
WTOでの知的財産権紛争の流れ
WTOの紛争解決手続きは、一見複雑に見えますが、大きく分けると次のステップで進みます。今回のEUと中国の知的財産権紛争も、この一般的な流れに沿うとみられます。
- 協議要請:まず一方の当事国が相手国との協議を正式に求めます。中国商務省によれば、今年1月20日にEUからの協議要請を受け取っています。
- パネル設置:協議で解決しない場合、第三者からなるパネル(小委員会)が設置され、各国の主張や証拠をもとに審理が行われます。
- 上級段階での審査:パネル報告に不服がある場合、上級の機関での再検討が行われることがあります。
- 是正とフォローアップ:最終的な判断を踏まえ、当事国は自国の措置をWTOルールに合わせることが求められ、その履行状況がフォローアップされます。
中国・EU関係と今後の焦点
中国とEUは、ともに世界経済を支える大きなプレーヤーであり、貿易や投資、気候変動対策など多くの分野で関係を深めてきました。一方、デジタルやハイテク分野では、産業政策や規制の違いから意見が分かれる場面もあります。
今回のWTO紛争は、その最先端にある知的財産権、特に標準必須特許を巡るルールづくりをめぐる議論の一部と見ることができます。中国がWTOルールの順守と対話の継続を同時に強調していることは、国際ルールの枠組みの中で、自国の技術や産業の利益を守ろうとする姿勢の表れとも言えます。
今後の焦点は、EUと中国がどこまで協議で歩み寄ることができるのか、そしてWTOの場でどのような判断や解釈が示されるのかです。その結果は、両者だけでなく、世界中の通信機器メーカーやサービス企業、そして私たち利用者にも影響を与える可能性があります。
私たちがこのニュースから考えたいこと
知的財産権や標準必須特許という言葉だけを見ると、専門家向けの話題に見えるかもしれません。しかし、その背景には「どのようなルールのもとで、どの企業が、どのように技術を使えるのか」という、デジタル社会の根幹に関わる問いがあります。
- 技術と国際ルールづくりの主導権を、誰がどのように握るのか
- 企業の研究開発へのインセンティブと、利用者にとっての価格やサービスの公平さをどう両立させるか
- 日本やアジアの企業は、こうした国際ルールの動きにどう向き合うべきか
中国とEUのWTO紛争は、これらの問いを改めて考えるきっかけにもなります。ニュースの行間を読みながら、自分なりの視点を持ってフォローしていきたいテーマです。
Reference(s):
China says it's open to communication with EU on intellectual property
cgtn.com








