ダボス会議2025のテーマ解説:インテリジェント時代の協働とは video poster
世界経済フォーラム(World Economic Forum)の年次総会、いわゆるダボス会議2025は、約3,000人のリーダーやイノベーター、専門家が、130を超える国と地域から集まる国際会議です。今年のテーマは「Collaboration in the Intelligent Age(インテリジェント時代の協働)」。急速に進む人工知能(AI)とデジタル技術の波、経済の不透明感、気候変動という複合的な危機の中で、「どう協力して乗り越えるか」が正面から問われています。
ダボス会議2025で問われる「インテリジェント時代」
ダボス会議2025のテーマ「インテリジェント時代の協働」は、単にAIや最新テクノロジーを礼賛するスローガンではありません。私たちは今、次のような分岐点に立っているとされています。
- 巨大テック企業やスタートアップが、新しい人工知能モデルやサービスを次々に投入している
- 世界経済は不確実性が高まり、成長の果実がどこまで社会全体に行き渡るかが見えにくい
- 気候変動や環境危機が進行し、「待ったなし」の対応が求められている
こうした中で、テクノロジーと経済、地球環境を同時に見据えながら、各国・企業・市民がどう連携していくのか。その問いを、ダボス会議2025は前面に押し出しています。
AIが主役:86%の企業が変革し、1億7,000万の新たな役割が生まれる?
今年のダボス会議では、とくに人工知能(AI)が主役になっています。世界経済が大きな転換期を迎える中で、AIは成長を押し上げ、産業構造をつくり替え、人々の生活を改善する可能性を持つと位置づけられています。
フォーラムに先立って公表された報告書によると、2030年までにAIやその他の情報処理技術によって、世界の企業の86%が変革し、世界全体で1億7,000万もの新しい役割(ロール)が生まれるとされています。
この数字が意味するところを、少し噛み砕いてみます。
- ほとんどの企業が、業務プロセスやビジネスモデルをAI前提に作り替える必要がある
- 「仕事がなくなる」だけでなく、「これまで存在しなかった仕事」が急速に増える
- 人材のスキルや学び直し(リスキリング)が、企業と個人にとって避けて通れないテーマになる
つまり、AIは脅威であると同時に、新しい成長と雇用の源泉にもなり得る存在として描かれています。
AIは「万能薬」ではない:信頼・透明性・包摂性がカギ
一方で、ダボス会議2025の議論は、AIの明るい側面だけにとどまりません。AIは、気候変動への対応や医療・教育へのアクセス改善など、グローバルな課題解決に役立つ強力なツールになり得るとされていますが、その潜在力を引き出すためには条件があります。
キーワードは次の3つです。
- 信頼(トラスト):AIがどのように学習し、どのような根拠で判断しているのかについて、人々が納得できること
- 透明性:アルゴリズムやデータ利用の仕組みが、少なくとも方向性として公開され、検証可能であること
- 包摂性(インクルージョン):一部の国や企業、特定の層だけが恩恵を受けるのではなく、多様な人々がアクセスできる設計になっていること
これらが欠けると、「インテリジェント時代」は既存の格差や対立を深めるリスクがあります。データを持つ側と持たない側、AIを活用できる組織とそうでない組織の差が開き、社会の分断が加速しかねません。
「建設的な楽観主義」というメッセージ
世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ氏は、ダボス会議2025について、「不確実性が大きく、見方の違いも存在するなかであっても、この会合は建設的な楽観主義の精神を育む場だ」と強調しています。
ここでいう「建設的な楽観主義」とは、単に「きっと何とかなる」と信じることではなく、次のような姿勢を指していると考えられます。
- 課題の深刻さを直視しつつも、解決のための具体的な行動を模索する
- 意見の違いを前提に、対話と交渉を続けることをあきらめない
- 長期的な視点から、技術と制度の両面で変化を積み重ねていく
ダボス会議2025は、そうした姿勢を共有するための国際的なプラットフォームとして位置づけられています。
「協働」は何を求めているのか
テーマに掲げられた「インテリジェント時代の協働」は、具体的にはどのような行動を求めているのでしょうか。フォーラムのメッセージからは、次のような方向性が読み取れます。
- 壁を壊す:国境や業界、組織の縦割りを越えて、データや知見を共有する
- 資源を分かち合う:AI開発に必要な計算資源や人材、資金を、より多くのプレーヤーが利用できるようにする
- 信頼を積み上げる:ルールづくりや標準化を通じて、AIやデジタル技術への信頼を高める
地政学的な緊張、経済の分断、気候の不安定化といった難題が重なる中で、協働は「あるとよいもの」ではなく、「前に進むための前提条件」だという認識がにじんでいます。
日本と私たちへの示唆:ダボス会議を自分ごとにする
ダボス会議2025は、一見すると遠い世界のエリートたちの集まりに見えるかもしれません。しかし、そこで語られているテーマは、日本の企業、行政、そして一人ひとりの働き方や暮らしとも無関係ではありません。
たとえば、次のような問いは、日本の読者にとってもそのまま当てはまります。
- 自分の仕事や業界は、AIによってどの部分が変わり得るのか
- その変化は、どのような新しい役割やサービスを生み出し得るのか
- AI活用のメリットから、誰が取り残されやすいのかをどう見極めるか
- 説明責任や透明性をどう確保し、利用者や市民との信頼関係を築くか
ダボス会議2025は、「インテリジェント時代の協働」というキーワードを通じて、私たちにこう問いかけているように見えます。テクノロジーの急速な進歩に対して傍観者でいるのか、それとも課題と可能性の両方を見据えながら、協働のルールづくりや実践に関わっていくのか――。
単なる会議ではなく「行動への呼びかけ」へ
ダボス会議2025は、「これは単なる会議ではなく、行動への呼びかけだ」と位置づけられています。テーマに込められたメッセージはシンプルです。
- AIとテクノロジーのポジティブな可能性を最大化する
- 同時に、格差や分断を広げないためのルールと協力の枠組みを整える
- そのために、政府、企業、市民社会がそれぞれの立場から責任を果たす
スキマ時間でニュースを追う私たちにとっても、「インテリジェント時代の協働」という言葉を、自分の仕事や生活とどう結びつけるかを考えてみることが、次の一歩につながるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








