トランプ大統領の新税務機関 External Revenue Service に批判集中
トランプ米大統領が新たな税収機関 External Revenue Service(略称 E.R.S.)の設置方針を打ち出し、アメリカ国内で強い反発と懸念の声が高まっています。狙いは外国からの関税収入で自国民を守るという構図ですが、専門家は「結局はアメリカの企業と消費者が負担する」と警鐘を鳴らしています。
外国から税収を集める新機関 E.R.S. とは
トランプ大統領は演説で、External Revenue Service が外国からの関税や各種の税収を一元的に集める役割を担うと説明しました。アメリカ国民に税金を課すのではなく、外国からの輸入品などに関税や課徴金を上乗せし、その収入を財源にする構想です。
大統領は、自国民ではなく外国が多くを支払うことで「莫大な金額が外国から財務省に流れ込み、市民を豊かにする」と強調しました。就任後、貿易制度の抜本的な見直しに直ちに着手するとし、アメリカの労働者と家族を守ると訴えています。
経済アナリスト「支払うのは結局アメリカの消費者」
しかし、この説明に対して経済専門家からは懐疑的な意見が相次いでいます。ワシントン・ポストの経済コラムニストであるヘザー・ロング氏は、発表前にソーシャルメディアの X で「巧妙なマーケティングだが、最終的に高い関税を払うのはアメリカの消費者だ」と指摘しました。
一般に、輸入品に課される関税は、輸入企業や小売業者のコスト増となり、最終的には価格に転嫁されることが多いとされます。そのため、名目上は外国から税収を得ているように見えても、実際には自国の消費者や企業が負担する構図になりやすいのです。
既存の関税徴収機関との重複も
ロング氏は、アメリカにはすでに関税や税金の徴収を担当する機関として、税関・国境警備局が存在している点も指摘しました。E.R.S. を新設することで、同様の業務を担う組織が増え、行政コストや現場の混乱を招く可能性も懸念されています。
あいまいな「外国からの収入」
関税専門の弁護士であるリチャード・モヒカ氏も、E.R.S. 構想の説明には不明確な点が多いとしています。大統領は、E.R.S. が外国から来る収入を集めると語りましたが、モヒカ氏は「外国メーカーで、アメリカに輸入者として登録していない企業から、どうやって直接関税を徴収するのか」と疑問を呈しました。
現在の仕組みでは、輸入手続きの責任を負うのはアメリカ側の輸入者であり、関税を支払うのも原則としてその輸入者です。E.R.S. がこの枠組みをどのように変更しようとしているのか、詳細はまだ示されていません。
民主党は「庶民への大増税」と強く批判
野党・民主党からも強い反発が出ています。オレゴン州選出のロン・ワイデン上院議員は声明で、トランプ大統領の税制構想について「どれほど名前を言い換えても、アメリカの家庭と中小企業に数兆ドル規模の増税を行い、その一方で富裕層には減税を続ける計画だ」と述べました。
ワイデン氏は、External Revenue Service という新しい名前の「売り込み」によって実態が隠されてはならないとし、負担の重さが中間層や低所得層に集中する可能性を強く懸念しています。
カナダ・メキシコに25パーセント関税、貿易摩擦が加速
トランプ大統領の就任後、アメリカはすでに最大の貿易相手国に対して新たな関税措置を取り始めています。大統領は、カナダとメキシコからの輸入品に対し、一律25パーセントの関税を課す大統領令に署名しました。これは、自国産業を保護し、雇用を守るためだと説明されています。
こうした動きは、E.R.S. 構想と合わせて、アメリカが貿易政策の重心を関税と外国からの税収に大きくシフトさせようとしていることを示しています。
カナダのトルドー首相「すべてが選択肢」
カナダのジャスティン・トルドー首相は、アメリカによる関税措置が現実のものとなった場合、対抗措置を取る可能性を示唆しました。首相は「カナダ、労働者、企業、経済、そして主権を守る」と述べ、関税への対応として「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と強調しました。
この発言は、アメリカの強硬な関税政策が、主要な同盟国との関係に緊張をもたらしつつあることを物語っています。今後、報復関税の応酬となれば、北米のサプライチェーン全体に影響が及ぶ可能性もあります。
日本と世界が注視すべきポイント
今回の External Revenue Service 構想と関税引き上げは、アメリカ国内の税制にとどまらず、世界経済にも波紋を広げる可能性があります。日本を含む各国の企業にとっても、次の点が重要な関心事になりそうです。
- 最終的に誰が関税コストを負担するのか
- 税関・国境警備局など既存機関との役割分担と行政コスト
- アメリカ国内での所得分配や格差への影響
- カナダやメキシコなど主要な貿易相手による対抗措置の有無
アメリカが関税と新税収機関を組み合わせて貿易戦略を強化すれば、各国も自国産業を守るために対応を迫られます。結果として、企業がサプライチェーンや投資先を見直す動きが広がる可能性もあります。
これからの焦点は制度設計と国際交渉
External Revenue Service が実際にどのような権限と仕組みを持つのか、現時点では細部は明らかになっていません。関税の徴収方法や対象の範囲、既存の制度との整合性など、多くの論点が今後の議論の焦点となります。
一方で、カナダなど主要な貿易相手との間で、関税をめぐる交渉や対抗措置の駆け引きも続きそうです。トランプ政権の新たな税収構想が、アメリカ国内の政治対立だけでなく、国際貿易秩序にどのような影響を及ぼすのか。日本の読者にとっても、今後の動きを中長期的な視点で追っていく価値があるテーマと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








