中国経済は本当に低迷?輸出増を「世界のチャンス」とみる国際ニュース解説
中国経済と国際貿易をめぐる議論が続くなか、「中国経済は実は力強く伸びており、問題は経済そのものではなく経済学者の見方だ」という挑発的な主張が、米メディアで注目を集めています。
「世界は中国製品にのみ込まれている」論への反論
米紙ワシントン・ポストの最近の社説は、「世界は中国の財であふれており、米国や欧州、日本が懸念するのは当然だ」と書き出しました。中国の輸出拡大が各国経済を脅かす、という見方です。
これに対し、経済評論家のジョン・タムニー氏は、フォーブス誌に寄稿した論考のなかで、「生産は定義上つねに強気材料であり、中国の旺盛な生産を悲観的に語るのは誤りだ」と批判します。生産拡大を問題視することは、経済成長の原動力である「分業」と「自動化」を軽視することに等しい、という立場です。
生産と分業はなぜ世界を豊かにするのか
タムニー氏の議論の出発点はシンプルです。私たちにとって重要なのは、「どこで」生産されるかではなく、「十分な量が生産されているかどうか」だ、という点です。生産拡大には次のような効果があります。
- モノやサービスのコストが下がり、実質所得が増える
- 輸入が増えることで、各国が得意分野により深く特化できる
- 特化が進むほど生産性が飛躍的に高まり、賃金も伸びやすくなる
氏によれば、「輸入は分業と同じように、私たちをより専門化させる仕組み」です。中国を含む世界各地からの輸入があるからこそ、米国や欧州、日本の人々は、自らのスキルを最も活かせる仕事に集中し、より多くの付加価値を生み出せるようになる、というロジックです。
「輸出で他国を出し抜く」という見方への疑問
ワシントン・ポストの社説や同紙コラムニストのヘザー・ロング氏は、「中国経済は低迷しており、中国指導部は輸出を加速させることで国を立て直そうとしている」と論じました。また、中国が輸出を「テコ」に他国を不利な立場に追い込もうとしている、というニュアンスもにじみます。
しかしタムニー氏は、もし本当に「他国を出し抜く」ことが目的なら、輸出を増やすという選択はおかしいと指摘します。なぜなら、ある国の経済活力を奪うのは、「自国からの輸出」ではなく、「その国の内部での生産が不足すること」だからです。生産が不足すれば分業が進まず、生産性の飛躍も起こりません。
さらに氏は、「輸出の拡大は必ず輸入の拡大と表裏一体だ」と強調します。どの国も、輸出産業を支えるために、原材料や部品、設備、サービスなどを世界から取り入れざるを得ません。「輸出だけを増やす」ことは、現実には不可能だというわけです。
「貯蓄が多いから需要不足」という誤解
中国では、かつての深刻な貧困の経験もあり、家計の貯蓄率が高いとよく言われます。ロング氏らは、輸出から得られた果実を中国の人々が十分に消費せず、世界の需要を奪っていると見る傾向があります。
これに対しタムニー氏は、「貯蓄は需要を減らさない」と反論します。銀行などの金融仲介機関を通じて、貯蓄されたお金はすぐに投資や消費を行う別の主体に貸し出されるからです。ある人が使わなかったお金は、別の誰かの支出となる。したがって、「生産だけが増えて消費が追いついていない」という状態は、理論的に成り立たないと主張します。
「中国経済の低迷」像をどう読むか
ワシントン・ポストの社説は「中国の輸出は昨年全体で約13%増加した」としつつ、「中国経済は停滞している」と評価しました。ロング氏も「中国経済は苦戦している」と述べています。
しかしタムニー氏は、「力強い生産こそが消費そのものだ」として、こうした悲観論に疑問を投げかけます。氏によれば、中国経済はむしろ「明らかに好調」であり、問題があるとすれば、それを分析する経済学モデルや、それに基づく解釈のほうだというのです。
日本と世界が考えたい視点
今回の議論は、日本を含む各国が中国との貿易や投資をどう位置づけるかを考えるうえでも示唆的です。中国の輸出拡大を「脅威」とみるだけでなく、
- 価格低下による生活コストの圧縮
- 自国企業がより高度な分野へとシフトする機会
- 世界全体の分業と生産性の向上
といった側面も同時に見る必要があるのかもしれません。
もちろん、どの国も国内の雇用や産業構造への影響に敏感にならざるを得ません。ただ、タムニー氏のような「生産と分業は原則としてプラス」という視点は、中国経済や世界経済をめぐるニュースを読み解く際に、一度立ち止まって考えてみる価値のある問いを投げかけていると言えそうです。
Reference(s):
China's economy is obviously soaring. The problem is economists
cgtn.com








