世界の夜空を照らす中国・瀏陽の花火 伝統とイノベーションの現在地 video poster
世界で打ち上がる年越しやお祝いの花火の多くは、実は中国本土の中部にある小都市・瀏陽(Liuyang)から届いているかもしれません。世界の花火の約6割がこの街で生産されていると言われ、1400年におよぶ伝統が最新技術によって進化し続けています。
世界の花火の6割を生む「瀏陽」という場所
瀏陽は、中国本土の中部に位置する地方都市です。地図で見ると決して大都市ではありませんが、世界中の夜空を彩る花火の供給地として、きわめて大きな存在感を持っています。
私たちが年越しカウントダウンや夏祭り、スポーツイベントで目にする華やかな花火の一部は、次のような流れで瀏陽から世界へと旅立っています。
- 瀏陽の工房や工場で花火玉や仕掛けを製造
- 各国・各地域の法律や安全基準に合わせて調整
- コンテナなどで世界の港へ出荷
- 現地の花火師やイベント会社が打ち上げプランを設計
地方都市の専門産業が、地球規模の祝祭文化を支えている。その関係性が、瀏陽の花火産業には端的に表れています。
1400年続く花火づくりと「スカイペインター」
瀏陽の花火づくりは、約1400年前から続くとされています。火薬と炎を扱う危険な仕事でありながら、同時に高い芸術性が求められる職人の世界です。
この街では、花火をつくる人たちはしばしば「空の画家」=スカイペインターと呼ばれます。火薬の配合や色の組み合わせ、開いたときの形やタイミングを緻密に設計し、夜空をキャンバスのように扱うからです。
夜空をキャンバスにする発想
スカイペインターたちは、単に「高く打ち上げる」だけでなく、見る人の感情や、会場となる街の風景まで意識してデザインします。
- 星やハート、花など、特定の形を描く花火
- 音楽やカウントダウンとぴったり同期させた演出
- 国や地域の文化・色彩感覚に合わせた色の選択
こうして設計された花火は、打ち上げられて数秒で消えてしまいます。しかし、その瞬間を最大限に輝かせるために、多くの時間と試行錯誤が費やされています。
テクノロジーが変える花火産業
瀏陽の花火産業は、伝統的な手仕事を大切にしつつも、現代のテクノロジーを積極的に取り入れています。火薬の配合や安全管理、演出のシミュレーションなど、多くの工程がデジタル化されつつあります。
例えば、コンピューター上で事前に花火の打ち上げパターンを確認したり、電子点火システムで秒単位の制御を行ったりすることで、
- 複雑な演出を安定して再現しやすくなる
- 人が火薬に近づく時間を減らし、安全性を高める
- 音楽やライトショーとの同期がしやすくなる
といった変化が起きています。伝統とテクノロジーが衝突するのではなく、補い合う関係にあるところが、瀏陽の花火産業の興味深いポイントです。
安全性と環境への意識
火薬を扱う産業である以上、安全対策は最重要課題です。製造工程の管理や、保管方法、輸送のルールなど、さまざまな段階でリスクを下げる工夫が重ねられています。
また、世界的に環境への配慮が重視されるなかで、煙や残骸を減らす工夫や、騒音への配慮なども今後ますます重要になっていきます。瀏陽のような花火産地にとっても、華やかさと持続可能性をどう両立するかは、これからの大きなテーマと言えます。
ローカルな工房からグローバルな祝祭へ
瀏陽の花火は、新年のカウントダウンや旧正月、都市の記念イベントなど、世界各地の祝祭を彩っています。日本の読者にとっても、海外旅行先や国際スポーツ大会で見た印象的な花火の一部が、瀏陽で作られたものだった可能性があります。
一つの地域に集積した専門産業が、世界の祝祭文化と結びつき、
- 現地の雇用や地域経済を支える力
- 国や地域を超えたクリエイティブな協業の場
- 「モノづくり」を通じた文化交流のきっかけ
といった形で、静かに影響力を広げているのが瀏陽の花火産業です。
CGTNの取材が映し出した瀏陽の素顔
国際メディアのひとつであるCGTNの取材では、記者の徐毅(Xu Yi)さんが瀏陽を訪れ、花火産業の現場を伝えています。工房で作業するスカイペインターたちや、夜空を彩る花火ショーの舞台裏など、普段は見えない風景が丁寧に描かれています。
現地の人々のインタビューからは、
- 花火づくりを誇りとする職人のまなざし
- 次世代に技をつなごうとする動き
- 世界中の観客を喜ばせたいという思い
といった声が浮かび上がります。花火は数秒で消える儚い芸術ですが、その裏側には長い歴史と、日々の地道な積み重ねがあることが伝わってきます。
2025年の年末、花火の向こう側を想像してみる
2025年の年末、これから花火を見る機会がある人も多いはずです。その瞬間、夜空に広がる光と音の向こう側に、中国本土の中部にある瀏陽という街の姿を少しだけ思い浮かべてみてはいかがでしょうか。
私たちの日常の「きれいだったね」という一言の背景には、遠く離れた土地の歴史や技術、そして職人たちの試行錯誤があります。瀏陽の花火産業を知ることは、アジアのモノづくりやグローバルなつながりを考える一つの入口にもなります。
次に夜空を見上げたとき、そこに描かれた一瞬の光が、世界のどこかの工房と自分を静かにつないでいる──そんな視点で花火を眺めてみるのも面白いかもしれません。
Reference(s):
Liuyang city illuminating world: the art and innovation of fireworks
cgtn.com








