北京の春節廟会で出会ったAIロボットと伝統文化:ある外国人の体験記
春節シーズンの北京では、ユネスコ無形文化遺産にも登録された「廟会(ミャオフイ)」が街を彩ります。今年、北京に引っ越してきたばかりのある外国人は、伝統的な文化街の廟会と、AI・ロボットをテーマにした斬新な廟会をハシゴし、そのギャップに驚かされたといいます。
春節の「廟会」とは?
春節は、中国で最も重要な年中行事のひとつで、家族が集まり新年を祝う特別な期間です。今年の春節でも、北京では多くの地域で「廟会」と呼ばれる縁日や祭りが開かれました。
廟会はもともと、寺院への参拝と市場が一体になった行事で、現在は露店や伝統芸能、食べ物の屋台などが集まる大規模なイベントとして親しまれています。こうした春節の民俗行事は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されており、地域に根付いた生活文化の一部になっています。
北京に引っ越したばかりの目に映ったもの
今年の春節直前、この外国人は仕事の都合で北京に移り住みました。来る前から、春節の重要性とにぎやかさについては耳にしていましたが、実際に街を歩いてみると、その熱量は想像以上だったといいます。
通りにはあらゆる種類の飾りや提灯が並び、食べ物の屋台や期間限定のメニューがあふれ、まさに「街全体が祝っている」ような雰囲気。そんな中で、「せっかくなら廟会も見てみよう」と、週末の買い物のついでに二つの廟会を一日で巡ることにしました。
AI・ロボットが主役の五棵松の廟会
最初に向かったのは、北京西部の五棵松(Wukesong)エリアで開かれていた、AI(人工知能)とロボットをテーマにした廟会でした。長く北京に住む人にとっても「これは新しい」と感じさせるような、斬新な試みだったといいます。
会場では、春節らしい赤や金の装飾の中に、AIやロボットをイメージした演出が組み込まれ、旧正月のモチーフと未来的なイメージが同じ空間に共存していました。普段の生活で当たり前になりつつあるデジタル技術が、年中行事の世界にも自然に入り込んでいることを象徴するような光景です。
伝統の空気が色濃い琉璃廠文化街の廟会
その日の二つ目の目的地は、文化街として知られる琉璃廠文化街の伝統的な廟会でした。長い歴史を感じさせる街並みの中に春節の飾りや屋台が並び、先ほどの五棵松とはまったく異なる空気が流れていたといいます。
ここで開かれていたのは、いわば「王道」の春節廟会。落ち着いた通りに、工芸品や書画、紙の切り絵、昔ながらの軽食などが並び、観光客だけでなく地元の人々もゆっくりと買い物や食事を楽しんでいました。
午前中にハイテク色の強い五棵松の廟会を体験し、午後には琉璃廠のクラシックな雰囲気に浸る――この一日で、同じ北京の春節でも「未来」と「伝統」を行き来するような体験になったといいます。
伝統行事がアップデートされていくということ
二つの廟会をハシゴしたこの外国人にとって、日常の買い物に少し足を延ばしただけの一日は、単なる観光以上の意味を持ちました。ひとつはAIとロボットを前面に押し出した新しい形の廟会、もうひとつは文化街で続いてきた伝統的な廟会。同じ「春節廟会」という枠組みの中で、これほど異なる世界が自然に共存していたからです。
日本でも、花火大会や夏祭りがプロジェクションマッピングやキャッシュレス決済などを取り入れ、少しずつ形を変えています。北京の廟会の姿は、東アジアの大都市がそれぞれ、「伝統行事とテクノロジーをどう組み合わせるか」を模索していることを映し出しているとも言えるでしょう。
私たちが持ち帰れる視点
春節の廟会は、海外から来た人にとっては特別な観光体験ですが、地域の人々にとっては世代を超えて共有されてきた生活のリズムでもあります。そうした場にAIやロボットが組み込まれ始めているという事実は、「テクノロジーは生活文化とどう付き合うべきか」という問いを静かに突きつけています。
2025年のいま、日本でも生成AIやロボットは急速に身近な存在になっています。北京の春節廟会での体験は、「中国の面白い事例」として眺めるだけでなく、私たち自身の暮らしや祭り、コミュニティのあり方を考えるヒントとして受け止めることができそうです。
旅先や留学、駐在先で、現地の年中行事に実際に参加してみる。そんな小さな一歩から、ニュースでは見えにくい国や地域の姿が立ち上がってきます。北京の春節廟会で文化とロボットが出会う風景も、その一つの断面だと言えるでしょう。
Reference(s):
Culture and robots: An expat's first Beijing temple fair experience
cgtn.com








