米国がカナダ・メキシコに25%関税 北米貿易は「経済戦争」へ?
米国がカナダとメキシコからの輸入品に一律25%の関税を課す決定を下し、両国が即座に報復措置を打ち出しました。2025年2月4日以降に発効することになっていたこの関税は、北米3カ国の貿易関係を大きく揺さぶり、「貿易戦争」への懸念も高まっています。
何が起きたのか──米国の25%関税
今回の国際ニュースの出発点は、トランプ米大統領がカナダとメキシコからの輸入品に対して25%の追加関税を課す決定をしたことです。ホワイトハウスは、この関税が「2025年2月4日午前0時1分(米東部時間)以降」に発効する予定だと確認しました。
大統領令には、カナダやメキシコが報復した場合に、米国側がさらに関税を引き上げることができる仕組みも盛り込まれています。つまり、「やり返せば、さらに上乗せされる」エスカレーション前提の設計になっているのが特徴です。
25%という水準は、10ドルの品物が国境を越える時点で2.5ドル分の追加負担がかかるイメージで、企業にとっても消費者にとっても小さくないコスト増となります。
カナダの即時報復:1,550億カナダドル分に25%関税
これに対し、カナダのジャスティン・トルドー首相は、米国製品に対する対抗関税を発表しました。内容は、総額1,550億カナダドル(約1,070億米ドル)相当の米国製品に一律25%の関税を課すというものです。
その内訳として、
- 1段階目:300億カナダドル分の米国製品に対する25%関税が、米国の関税発効と同じ2月4日から適用
- 2段階目:残る1,250億カナダドル分については、その後21日以内に順次適用
とされ、短期間で一気に引き上げるスケジュールです。カナダ側も「待つ」のではなく、「即応する」姿勢を鮮明にした形です。
ブリティッシュコロンビア州の強い反発
カナダ西部のブリティッシュコロンビア州(BC州)のデイビッド・イービー州首相も、米国の決定を強い言葉で批判しました。イービー氏は、トランプ大統領の25%関税について、「我々の国の歴史的な絆を完全に裏切るものであり、信頼できる同盟国に対する『経済戦争』の宣言だ」と述べています。
同氏は、州としての独自の対抗措置も打ち出しました。具体的には、
- BC州の公的機関である酒類流通公社に対し、米国の「レッドステート」(共和党支持が強い州)からのアメリカ産酒類の購入を即時停止するよう指示
- 同州の酒販店の棚から、そのレッドステートの売れ筋ブランドを撤去する方針
- 州政府の調達から米国製品を可能な限り排除する方向で検討
といった措置です。連邦レベルの関税に加え、州レベルでも「米国製品を買わない」というメッセージを出すことで、圧力を高めようとしています。
メキシコも対抗措置を表明
メキシコでも、クラウディア・シェインバウム大統領が対抗措置を発表しました。シェインバウム氏は、トランプ大統領による25%関税に対し、メキシコも報復関税やその他の措置を講じると表明しています。
具体的な品目や税率の詳細は今後の協議次第ですが、「関税には関税で応じる」という基本方針を明確に示したことで、北米全体で報復の応酬が起きる可能性が高まっています。
北米3カ国は「切っても切れない」関係
今回のニュースを理解するには、米国・カナダ・メキシコの経済的な結びつきの強さを押さえておくことが重要です。米国は、メキシコ、カナダ、そして中国本土からの輸入に大きく依存しています。
米国勢調局のデータによると、2024年1〜11月の米国の輸入額は、
- メキシコから:約4,666億ドル
- カナダから:約3,772億ドル
- 中国本土から:約4,014億ドル
となっており、この3つの国・地域が米国にとって最大の供給元となっています。つまり、今回の25%関税は、米国経済自身にも跳ね返る可能性がある決定だと言えます。
なぜ「貿易戦争」懸念なのか
関税は、一度かけて終わりではなく、相手が報復し、それに再び反応する中でエスカレートしやすい政策です。今回の大統領令には、相手国の報復をきっかけに米国側の関税をさらに引き上げる仕組みが含まれており、まさにこの「エスカレーション」を前提とした設計になっています。
そのため、
- 企業は先行きのコストを読みづらくなり、投資や採用を慎重にせざるを得ない
- 輸入品価格の上昇が、家電や自動車、食料品などの小売価格にも波及する可能性
- サプライチェーン(部品や原材料の供給網)の再編が迫られ、物流コストが増大するリスク
といった影響が懸念されています。特に自動車やエネルギー、農産物など、北米3カ国の相互依存が強い分野ほど影響は大きくなりやすいと考えられます。
日本や世界への波及をどう見るか
日本から見ると、これは「遠い国の話」に見えるかもしれませんが、北米市場は多くの日本企業にとって最大級の稼ぎ場です。自動車、部品、機械、電子機器など、サプライチェーンは北米3カ国と複雑に絡み合っています。
例えば、
- 日本企業がカナダやメキシコに持つ工場の製品が米国向け輸出に依存している場合、関税によるコスト増が利益を圧迫する可能性
- 米国内での物価上昇が消費を冷やし、日本企業の売上減につながるリスク
- 地政学リスクの高まりを受け、企業が生産拠点の分散や在庫の積み増しを検討する必要性
などが考えられます。直接の数字はまだ見えていない段階でも、企業や投資家が「次の一手」を慎重に見極める局面に入っているといえるでしょう。
これから注目したい3つのポイント
北米をめぐるこの貿易摩擦が、今後どこへ向かうのか。ニュースを追う際に押さえておきたいポイントを3つに整理します。
- 1. 追加関税の「第2弾」が出るか
米国側がさらに関税を引き上げるのか、あるいは対象品目を拡大するのか。それに対し、カナダとメキシコがどう応じるのかが、最初の焦点になります。 - 2. 交渉のテーブルに戻れるか
強硬な関税の応酬が続くのか、それとも水面下の協議を通じて妥協点を探るのか。首脳同士の発言や閣僚級会合の行方にも注目です。 - 3. 企業・市場の反応
株式市場や為替、企業の投資計画、サプライチェーンの再編など、「数字」と「現場」の動きがどこまで変化するかが、実体経済への影響を測る鍵になります。
「読みやすいけれど考えさせられる」ニュースとして
北米3カ国の動きは、日本に直接関係ないようでいて、エネルギー価格から身近な消費財の値段、さらには年金資産を左右するマーケットの動きにまで影響しうるテーマです。
関税という一見テクニカルなニュースの裏には、「どの国がどのように他国と付き合うのか」という大きな問いがあります。短期的な損得だけでなく、中長期の信頼関係やルール作りをどう考えるのか──北米の動きは、私たち一人ひとりが国際ニュースを見る視点も静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com








