米郵政公社が中国本土・香港からの荷物停止を一転撤回
米国のU.S. Postal Service(米郵政公社、USPS)が、中国本土(中国)と香港特別行政区(HKSAR)からの国際郵便物の扱いをめぐり、一度発表した荷物の受け入れ停止をわずか1日で撤回しました。米中関係と国際物流が交差する今回の動きは、越境ECや国際ビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があります。
何が起きたのか:発表から撤回まで
USPSは当初、火曜日に中国本土と香港特別行政区からの荷物(小包)について、米国への国際郵便としての受け入れを一時停止すると発表しました。手紙や書類などのレター類は対象外とされていました。
しかしその翌日、水曜日になってUSPSは方針を転換し、中国本土および香港特別行政区からの全ての国際郵便物と荷物の受け入れを継続すると短い通知で発表しました。事実上のUターンです。
中国本土と香港特別行政区の反応
USPSの一時停止発表に対し、中国外交部は水曜日の記者会見で、米国側に対し貿易や経済問題を政治化・武器化することをやめ、中国企業を理由なく標的にする行為を中止するよう呼びかけました。報道官の林剣氏は、中国側としても中国企業の合法的な権益を守るために必要な措置を引き続き講じると述べました。
香港特別行政区政府も強い不満を表明しました。政府報道官は、USPSによる香港郵政(Hongkong Post)からの貨物を含む郵便物の受け入れ一時停止と、香港産品への追加関税10%の賦課に対し強い不満を示しました。その上で、米国側に対し、米連邦官報に掲載された関連通知の是正と、香港郵政からの荷物を含む郵便物の受け入れ停止措置の速やかな撤廃を求めました。
背景にある少額輸入ルールの変更
今回の混乱の背景には、ドナルド・トランプ米大統領が発表し、火曜日に発効した対中貿易措置があります。トランプ大統領は土曜日、中国本土からの少額輸入品に適用されてきた免税枠(de minimis)を終了する大統領令を発表しました。
これにより、これまで一定額以下であれば関税がかからなかった中国本土からの小口荷物にも、新たな関税が広くかかることになります。USPSは声明で、関税の徴収を担う米税関・国境警備局(CBP)と連携し、新しい対中関税を効率的に徴収しつつ、荷物配送への影響を最小限に抑える方法を模索していると説明しました。
現場で広がる混乱:誰が関税を取り、誰が払うのか
方針転換は、米国内外の小売業者や国際宅配事業者の混乱に拍車をかけています。ある郵便業界の専門家は匿名を条件に、問題は郵便局ではなく税関であり、税関が今回の事態に対応できる準備ができていないと指摘しました。
同じ専門家は、誰が関税を徴収し、最終的に誰が支払うのかという点が数兆ドル規模の問いになっていると述べ、コスト負担の行方が依然不透明であることを強調しました。
米国の国際郵便・配送業界を代表する団体、インターナショナル・メイラーズ・アドバイザリー・グループ(International Mailers Advisory Group)のケイト・マス事務局長は、USPSの決定により、すでに限られた人員と予算で運営されているCBPに、小口荷物に対する関税徴収という新たな負担がのしかかると懸念を示しました。
本来であれば、こうした制度変更は連邦政府の正式なルールメイキング(規則策定)プロセスを通じ、数カ月単位で関係者が意見を述べたり準備を進めたりする期間が設けられます。マス氏は、今回はその余裕が全くない、何も準備ができないまま、すべてが即時に動き始めていると語りました。
さらに、徴収にかかる事務コストが実際に集める関税収入を上回る可能性も指摘しています。その場合、CBPにとっては手間をかけたのに財政的にはマイナスという事態になりかねません。
大手配送会社も対応に追われる
USPSとCBPが小口荷物への新関税の徴収方法を調整する間にも、FedExなど大手の国際配送会社はサービス継続を約束しています。ただし、実務面での調整が完了するまでは、配送の遅延など何らかの混乱が生じる可能性があります。
FedExはすでに海外向け配送について、配送日数を保証し料金を返金する返金保証の適用停止を発表しました。制度や料金体系が頻繁に変わるなかで、従来通りのサービス品質を約束することが難しくなっているためです。
越境EC向けのデータ提供を行うハリケーン・コマース(Hurricane Commerce)の共同創業者マーティン・パーマー氏は、今はみんな、まるで首のないニワトリのように走り回っている、2週間後には元に戻っているかもしれないが、先が読めないと現場の雰囲気を語りました。
ニューヨーク拠点のコンサルティング会社サプライチェーン・コンプライアンス(Supply Chain Compliance)の共同創業者モーリーン・コーリ氏も、関係者に準備する時間は全く与えられていない、いま必要なのは政府からの明確な指針だと訴えています。
国際ニュースとしての意味:制度と現場のギャップ
今回のUSPSのUターンは、国際ニュースとして、制度変更のスピードと現場の準備とのギャップを浮き彫りにしています。貿易政策や関税ルールが突然変更されると、その影響は国境を越えた物流ネットワークや、そこに依存する何百万もの小売事業者・消費者に一気に波及します。
同時に、今回のやり取りは、米中関係や米国と香港特別行政区との関係が、貿易や物流といかに密接に結びついているかを改めて示す事例とも言えます。政策判断が、単なる外交のシグナルにとどまらず、日々の配送やオンラインショッピングの現場に直結する時代になっているからです。
私たちが押さえておきたいポイント
今回のニュースから、読者が押さえておきたいポイントを整理すると、次の通りです。
- USPSは一度発表した中国本土・香港特別行政区からの荷物受け入れ停止を撤回し、当面は受け入れを継続する方針を示した。
- 背景には、トランプ米大統領による中国本土からの少額輸入品への免税枠終了と、新たな関税徴収ルールの導入がある。
- 中国外交部と香港特別行政区政府は、USPSと米側の決定に強い不満を表明し、自国企業や地域の権益を守る姿勢を鮮明にしている。
- 税関当局や配送会社は、準備期間がほとんどないまま新ルールへの対応を迫られ、現場には混乱と不透明感が広がっている。
ニュースを追ううえでは、貿易政策と国際物流のどちらか一方だけを見るのではなく、その相互作用に目を向けることが重要になっています。今回のUSPSの動きは、その典型例だと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








