中国がAIと低空交通の標準化を最優先 2025年の新成長戦略
中国の交通運輸部が、2025年の重点分野として人工知能(AI)と低空交通の標準化を掲げました。ドローンなどを活用した「低空経済」を新たな成長エンジンと位置づけ、道路と空の移動をつなぐスマートな交通インフラづくりを加速させる方針です。
2025年の重点はAIと低空交通標準化
交通運輸部によると、2024〜2027年の運輸業界の標準化を進めるためのタスク配分計画が承認され、その中で低空交通とAIに関する標準作りが2025年の最重要課題として位置づけられました。
具体的には、次のような方向性が示されています。
- 道路交通と空の移動を連携させる「ロード・エア協調」の仕組みづくり
- AIなどデジタル技術を使ったインテリジェント交通システムの整備
- サービス標準化の国家パイロット事業の一環として、スマートでデジタルな交通サービスを普及させること
こうした取り組みは、中国全体の低空経済を本格的な産業として育てる国家戦略と連動しています。
「低空経済」とは何か
低空経済とは、地上から高度1,000メートル未満の空域で行われる経済活動を指します。有人・無人航空機(ドローンなど)を活用し、さまざまなサービスを提供する産業群です。
代表的な用途には、次のようなものがあります。
- 荷物や商品を運ぶドローン配送
- インフラや設備の点検・監視、地形の測量
- 人員輸送や観光など、新しいタイプの移動サービス
近年、中国ではこうした低空輸送や物流が急速に進展しており、とくにドローンは短距離・越境・都市部配送の「足」として重要な役割を担っています。交通運輸部のデータでは、2024年だけで約270万個の小包がドローンで配送されました。
急成長するドローン物流市場
低空物流市場の規模は、この数年で大きく拡大しています。Linksum Institute of Digital Industryの報告によると、
- 2020年の市場規模は271.8億元
- 2023年には581.8億元まで拡大
と、わずか3年で倍以上になりました。同じ報告は、低空物流市場が2025年に1,500億元規模に達する可能性も指摘しています。
物流に限らず、点検や測量、旅客輸送などの周辺サービスが加わることで、低空経済全体の市場はさらに大きくなります。中国民用航空局によると、低空経済全体の市場規模は2025年に1.5兆元、2035年には3.5兆元を超える可能性があると見込まれています。
国家戦略としての低空経済
低空経済の位置づけは、ここ数年で段階的に引き上げられてきました。主な流れを振り返ると次の通りです。
- 2023年12月 中央経済工作会議が低空経済を「戦略的新興産業」と位置づけ
- 2024年3月 国務院の政府活動報告に初めて低空経済が盛り込まれ、「新たな成長エンジン」として明示
- 2024年7月 中国共産党中央委員会第20期第3回全体会議(3中全会)で、汎用航空と低空経済の発展が改めて強調
- 2024年12月 低空経済発展部門が設立され、政策調整と推進の専任組織が整備
政策面・制度面・組織面が一体となった「三位一体」の体制が整いつつあると言えます。今回の標準化方針は、その中でも実務レベルでの基盤づくりにあたる動きです。
インフラとデジタル技術が支える「空の道」
インフラ整備も同時に進んでいます。2023年末時点で、中国には一般航空空港が449カ所、飛行サービスステーションが32カ所整備されています。これらは、低空域での飛行計画や安全管理を支える中核拠点です。
さらに、5G-Aと呼ばれる次世代通信技術やAIが、低空経済インフラに広く導入されています。リアルタイムでの機体監視や経路最適化、気象リスクの予測など、AIと通信技術は低空交通の安全性と効率性を高める鍵となっています。
交通運輸部が強調する「ロード・エア協調」は、地上の道路交通と空のドローン・航空機を一体的に運用しようとする構想です。例えば、
- 地上の物流拠点とドローン発着拠点を統合したハブの整備
- 道路渋滞情報と空域情報を組み合わせた配送経路の自動最適化
- 災害時に道路・空の両方から支援物資を届ける仕組み
といったイメージが想定されています。
日本を含む各国への示唆
今回の動きは、中国の低空経済やAI政策のニュースであると同時に、日本を含む各国にとっても示唆に富んでいます。空の移動を日常のインフラとして組み込むには、技術だけでなく、標準化とルールづくりが不可欠だからです。
今後、各国で問われそうなポイントとしては、
- 都市の安全とプライバシーを守りながら、低空域をどう開放していくか
- 地上交通との連携を前提に、どのようなサービス設計を行うか
- 国際的な標準・ルール作りにどう関わっていくか
などが挙げられます。中国の事例は、低空経済をめぐる国際的な競争と協調の行方を考える上で、重要な参考事例になりそうです。
これから注目したい点
2025年は、中国にとって低空交通とAIの標準化が本格的に進む節目の年になります。標準化が進むことで、市場が拡大すると同時に、安全や環境への配慮も一段と問われていくでしょう。
国際ニュースとしての視点からは、
- 2025年末までに低空物流市場がどこまで拡大するか
- 1.5兆元規模と見込まれる低空経済全体が、地域経済や雇用にどのような影響を与えるか
- AIを活用した交通システムの標準が、国際的なルール形成にどうつながるか
といった点が注目されます。日本語で読める国際ニュースとして、newstomo.comでは今後も中国を含む各国の低空経済とAI政策の動きをフォローしていきます。
Reference(s):
China prioritizes AI, low-altitude transport standards for 2025
cgtn.com








