中国国務院がサービス貿易拡大とEV電池リサイクル強化へ新方針
中国の李強・中国国務院総理が議長を務める国務院常務会議で、サービス貿易とサービス消費の拡大、新エネルギー車用電池のリサイクル強化など、国内外の企業や家計に影響しうる新方針が相次いで打ち出されました。
会議の主なポイント3つ
今回の国務院常務会議では、次のような点が確認されました。
- サービス貿易の拡大に向けた革新的な措置と、越境サービス貿易への「ネガティブリスト」の全面適用
- 通信、教育、文化、医療、金融などサービス分野での新たな対外開放措置
- 新エネルギー車(NEV)用動力電池のリサイクル・再利用を進める行動計画の承認
サービス貿易をどう広げるのか
中国政府は、サービス貿易(モノではなく金融、教育、IT、観光などのサービスを国境を越えて取引すること)の拡大を、今後の成長戦略の柱の一つと位置づけています。
会議では、サービス貿易を押し上げるために、次のような方針が示されました。
- 越境サービス貿易にネガティブリストを全面適用し、市場参入ルールを明確化
- サービス輸出を増やすための各種支援策の推進
- 多国間・二国間、そして地域レベルでのサービス貿易およびデジタル貿易協力の拡大
ネガティブリストとは何か
ネガティブリストとは、「原則自由・例外制限」の考え方にもとづき、外国・海外企業の参入を制限する分野だけをリストに書き出す方式です。リストに載っていない分野については原則として参入が可能になるため、ビジネス側から見ると分かりやすく、予見可能性が高い制度と言えます。
今回、越境サービス貿易でもこのネガティブリストを全面的に適用するとしたことで、国際的なサービス企業やスタートアップが中国市場で事業展開を検討しやすくなる可能性があります。
通信・教育・医療などサービス分野の開放
会議では、次のような分野で新たな開放措置を導入するとしています。
- 通信
- 教育
- 文化
- 医療サービス
- 金融
いずれも、デジタル化や高齢化、所得向上などを背景に需要が伸びている分野です。規制の見直しや参入条件の緩和が進めば、海外のサービス企業にとっても、新たな連携や投資の機会が広がる可能性があります。
サービス消費の「質」を高める狙い
今回の会議では、「サービス消費の高品質な発展」を図ることも強調されました。サービス消費とは、飲食や観光だけでなく、教育、医療、介護、文化・娯楽、オンラインサービスなど、人々の生活の質に直結する支出全般を指します。
中国政府は、次のような政策手段を総合的に活用して、質の高いサービスの供給を増やす方針です。
- 財政政策(補助、予算措置など)
- 税制(減税・優遇税制など)
- 金融政策(融資支援や金利・信用面での後押しなど)
モノからサービスへと消費構造がシフトする中で、サービス産業の質と量の両面を底上げしていく狙いがあるとみられます。
NEV動力電池のリサイクルを「見える化」
会議では、新エネルギー車(NEV)用の動力電池のリサイクルと再利用に関する行動計画も承認されました。電気自動車などの普及が進む一方で、使用済み電池の処理・再利用は、資源確保と環境保護の両面で重要な課題となっています。
今回の行動計画では、次のような方向性が示されています。
- 規範的で安全かつ効率的な電池のリサイクル・利用システムの構築
- 生産から販売、回収・分解、再利用まで、電池のライフサイクル全体を追跡可能にする仕組みづくり
- 関連する行政規則の整備と改善
- 電池のグリーン設計やカーボンフットプリント(製造から廃棄までに排出される二酸化炭素量)の算定に関する標準づくりと、その改定の加速
なぜ電池リサイクルが重要なのか
動力電池は、レアメタルなどの重要な資源を多く含む一方で、不適切な処理を行うと環境負荷が高くなります。ライフサイクル全体を通じて電池を追跡し、再利用や再資源化を進めることは、環境対策であると同時に、資源安全保障の観点からも重要になりつつあります。
中国が電池リサイクルのルールや標準づくりを進めることは、今後、国際的な電池サプライチェーンや環境規制にも影響を与える可能性があります。
政策提案への対応を「質」で評価
今回の会議では、中国の立法機関や政治協商機関のメンバーが昨年提出した提案・意見について、国務院の各部門がすでに処理を完了したと報告しました。そのうえで、今年の提案・意見についても、質の高い対応を行うよう求めています。
単に件数をこなすのではなく、政策形成に役立つ形で提案を生かしていくことが、国民の信頼を高め、「高品質な発展」への幅広い支持につながるというメッセージと受け取ることができます。
国際社会と日本への含意
サービス貿易やデジタル貿易の拡大、サービス分野の開放、環境・資源分野での標準づくりは、いずれも国境を越えて波及するテーマです。今回の決定は、次のような点で国際社会にも影響しうる内容です。
- サービス産業やIT、金融、医療など、海外企業にとっての新たなビジネス機会の拡大
- デジタル貿易ルールづくりや環境標準をめぐる国際協調の重要性の高まり
- 電池リサイクルやカーボンフットプリントをめぐる技術・制度面での連携の可能性
日本を含むアジアの企業や政策担当者にとっても、中国のサービス貿易戦略や環境関連の標準づくりを丁寧にウォッチしていくことが、今後の事業戦略や政策設計を考える上で一つの手がかりになりそうです。
Reference(s):
State Council discusses trade in services, services consumption
cgtn.com







