グローバルサウスはどう米国関税に対抗するか BizTalkが探る新たな連携 video poster
米国の鉄鋼・アルミ関税が続くなか、世界の貿易構造は静かに組み替わりつつあります。今週放送されたCGTNの経済番組「BizTalk」では、グローバルサウス(新興国・途上国)同士の連携が、米国の関税圧力にどう対抗しうるのかが議論されました。
米国の鉄鋼・アルミ関税が突きつける現実
トランプ政権による鉄鋼・アルミ関税は、米国の貿易相手国にコスト増と不確実性をもたらし、いまもその影響が続いています。関税は単なる価格上昇ではなく、サプライチェーン(供給網)の見直しを迫る「構造的な圧力」でもあります。
番組では、こうした米国主導の関税政策が、従来の北側(先進国中心)の貿易関係に依存するリスクを改めて浮き彫りにしている点が共有されました。その結果、多くの国が「より信頼できる代替先」をグローバルサウスの中に求め始めていると指摘されました。
グローバルサウスに広がる「代替ルート」
BizTalkの紹介によれば、グローバルサウスの域内貿易はすでに拡大傾向にあり、今後さらに伸びる大きな潜在力があります。鉄鋼やアルミといった素材だけでなく、農産品、製造業、中間財など、さまざまな分野で南南貿易(グローバルサウス同士の貿易)が拡大しうるとされています。
ポイントは、単なる「米国離れ」ではなく、特定の大国への過度な依存を減らし、複数のパートナーを持つことで交渉力と安定性を高めるという発想です。関税の有無に左右されにくい、多極化したネットワークをどう構築するかが問われています。
BizTalkに登場した3人の専門家
今回のBizTalkには、ラテンアメリカとグローバルサウス経済を専門とする3人の研究者・実務家が出演しました。
- ルシアーノ・カンポス氏(ブエノスアイレス大学教授/Numera Analytics シニアエコノミスト)
- フェルナンド・ブランコリ氏(リオデジャネイロ連邦大学教授)
- マルコス・コルデイロ・ピレス氏(サンパウロ州立大学UNESP 准教授)
いずれも、ラテンアメリカをはじめとするグローバルサウスの視点から、米国関税の長期的影響と、それに対抗するための連携のあり方を分析しました。番組の中心的な問いは次の2点です。
- グローバルサウスはどのように団結すれば、関税などの経済的圧力の影響を抑えられるのか。
- 長期的なダメージを最小限にし、むしろ自立的な成長につなげるには何が必要か。
グローバルサウス連携の3つのカギ
番組での議論を手がかりにすると、グローバルサウスが米国関税に対抗し、その影響を和らげるためのカギはおおまかに次の3点に整理できます。
1. 貿易の多角化と域内バリューチェーン
第一に、輸出先・輸入先の多角化です。特定の市場に売り先を集中させると、関税や規制が導入されたときのダメージが大きくなります。グローバルサウス同士で、原材料から加工・組立までを分担する「域内バリューチェーン(価値の連鎖)」を構築できれば、米国市場への依存度を徐々に抑えることができます。
- 鉄鋼・アルミなど素材の相互供給
- 農産品と加工食品の分業体制
- 自動車・電機など製造業の部品供給網
こうしたネットワークが太くなるほど、どこか一つの市場で関税が上がっても、他の市場でカバーしやすくなります。
2. 共通ルールと交渉のプラットフォーム
第二に、グローバルサウス側からの「共通ルールづくり」と「交渉プラットフォーム」です。各国がばらばらに米国と向き合うよりも、複数の国・地域が連携して交渉した方が、関税や通商条件の見直しを求める際の発言力が高まります。
番組の議論でも、地域ブロックや国際的な枠組みを通じて、共通のスタンスを作り、長期的な視点で貿易の安定性を高めていく重要性が示唆されました。
3. データと知識の共有
第三に、エコノミストや研究機関によるデータ・知見の共有です。Numera Analytics のような分析機関や、ラテンアメリカの大学・研究者が蓄積する知識を結びつけることで、各国は次のような判断をしやすくなります。
- どの市場に新たに参入すべきか
- 関税の影響を受けにくい製品・産業はどこか
- どの国との連携が最も効果的か
関税は「政治の問題」と見えがちですが、実際にはデータに基づく冷静な分析と、そこから導かれる協調戦略が欠かせません。
長期的な影響を「チャンス」に変えられるか
トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税は、多くの国にとって短期的には痛みを伴うものでした。しかし、BizTalkでの議論からは、その圧力をきっかけに、グローバルサウス同士の結びつきを強める動きがすでに生まれていることがうかがえます。
米国の関税政策は、今後も形を変えながら続く可能性があります。そのなかで、グローバルサウスがどこまで主体的に連携し、自らのルールとネットワークを築けるかが、長期的な影響を「リスク」から「チャンス」に変えられるかどうかの分かれ目になりそうです。
日本の読者への問いかけ
日本は先進国の一員でありつつ、アジアやグローバルサウスとの結びつきも深めてきました。米国の関税をめぐる動きや、グローバルサウスの連携強化は、日本企業や私たちの生活にも間接的な形で影響してきます。
- サプライチェーンの多極化は、日本にどんなリスクとチャンスをもたらすのか。
- 日本は、グローバルサウスとの協力を通じて、より安定した国際経済システムづくりにどう関わるべきか。
こうした問いを意識しながら、グローバルサウスの動きをフォローすることが、これからの国際ニュースを読み解く上でますます重要になっていきそうです。
まとめ
- トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税は、いまも世界の貿易構造に影響を与え続けている。
- グローバルサウスでは、関税圧力をきっかけに、域内貿易や南南協力の拡大が模索されている。
- 多角化されたバリューチェーン、共通ルール、データ共有が連携のカギとなる。
- 日本の読者にとっても、サプライチェーンの変化とグローバルサウスの台頭は、無視できないテーマになりつつある。
米国関税とグローバルサウス連携という視点から世界経済を眺めると、ニュースの見え方が少し変わってきます。次に同じテーマの記事や番組を見かけたら、「どの国がどこと組もうとしているのか」という問いを意識しながら、もう一歩踏み込んで眺めてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








