中国が米国の銅輸入「232条調査」に撤回要求 WTOルールとグローバル供給網への影響は?
中国商務省が、米国による銅輸入への「232条調査」をめぐり、調査の撤回を強く求めています。国家安全保障を名目としたこの調査は、WTOルールや世界の供給網にどんな影響を与えるのでしょうか。
何が起きているのか:中国が米国に「調査撤回」を要求
中国商務省の報道官であるHe Yadong氏は、記者会見で、米国が銅製品の輸入に対して実施した「232条調査」についてコメントしました。これは、米国が自国の国家安全保障を理由に輸入品に追加関税などの措置をとる際に使う枠組みとされています。
He氏は、米国側が中国に対して「補助金や過剰生産能力によって競争をゆがめている」としている点について、「全く根拠がない」と反論しました。その上で、中国としては「米国はこの調査をできるだけ早く撤回すべきだ」と強調しました。
中国側の批判:一方的で保護主義的な措置
中国によると、今回の232条調査は「国家安全保障」を口実とした一方的かつ保護主義的な行動だとされています。He氏は、この種の措置は次のような悪影響をもたらすと指摘しました。
- ルールに基づく多角的な貿易体制(WTO体制)をさらに損なう
- 世界の生産・供給網の安定を妨げる
中国側は、国際貿易はあくまでWTOルールに従うべきであり、個別の国が「安全保障」を理由に広範な関税措置を取ることには強く反対しています。
WTOはどう見ているのか:2022年の判断
He氏によると、世界貿易機関(WTO)の専門家パネルは、2022年の段階で、米国が行ってきた232条に基づく関税措置はWTOルールに反すると判断しています。これは、国家安全保障を盾にした通商措置の正当性に対して、国際機関が疑問を投げかけた形といえます。
今回の銅輸入に対する調査も、同じ枠組みの延長線上にあると中国側は見ており、過去のWTO判断を根拠の一つとして、米国の対応を批判している構図です。
「中国は銅の純輸入国」だという主張
今回の議論で中国側が強調しているポイントの一つが、「中国は精製銅の純輸入国である」という事実です。つまり、中国は精製銅を海外から多く輸入しており、完成した銅製品の輸出量は比較的小さいと主張しています。
そのため、中国側から見ると、米国が中国を狙い撃ちにしたような保護主義的措置を取ることは、実態に合わないだけでなく、むしろ世界の銅市場や供給網に不必要な不安定さを持ち込む行為だという見方になります。
「対抗措置」も示唆:それでも対話は続ける姿勢
もし米国が追加関税などの制限措置を実際に導入した場合、中国は「正当な権益を守るために断固として必要な措置を取る」としています。これは、関税の報復やその他の対抗措置も辞さない姿勢をにじませる発言です。
一方で、中国商務省は、米国の一方的な関税措置には明確に反対しつつも、「対話と協議を通じて問題を解決する用意がある」とも述べています。強い言葉で反対を示しながらも、交渉の窓口は閉ざしていないというメッセージです。
米中通商摩擦の新たな火種?
今回の銅輸入をめぐる232条調査は、米中間で続いてきた通商摩擦の新たな焦点になりつつあります。特に、
- 国家安全保障を理由とする通商措置の妥当性
- WTOルールと各国の「安全保障判断」とのバランス
- 世界の供給網と資源価格への影響
といった論点は、今後も国際経済の重要なテーマであり続けると考えられます。
日本と世界にとっての意味合い
銅は電線や電子機器、再生可能エネルギー設備など、幅広い産業に欠かせない素材です。中国と米国という大きなプレーヤーのあいだで銅をめぐる摩擦が高まれば、日本を含む多くの国や地域の企業にとっても、コストや調達リスクの面で無視できない要因となり得ます。
今回の中国商務省の発言は、米中通商関係がなお不安定さをはらみつつも、対話の余地を残していることを示しているとも言えます。2025年現在、国際ニュースや世界経済をフォローするうえで、こうした通商をめぐる「安全保障」と「ルール」のせめぎ合いに、今後も注目が集まりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








