米中関税を巡る輸入ギャップ 数字が食い違う理由 video poster
リード:関税は本当に「効いた」のか
2018年に当時の米大統領トランプ氏が導入した対中関税は、その後のバイデン政権でも大きくは見直されず、2024年まで続いてきました。米国の貿易統計では、この関税により対中貿易赤字が縮小し、輸入先が他国へシフトしたとされています。一方で、中国側の統計では、2018年から2024年にかけて対米輸出が約1割増えたとされており、数字は正反対の姿を示しています。
この「輸入ギャップ」をどう理解すべきなのでしょうか。専門家が注目するのが、米国のデミニミス制度と呼ばれる小口輸入の仕組みです。
米国統計と中国統計、どこが違うのか
米国側の貿易データでは、対中関税の導入から6年が経過した時点で、対中国の貿易赤字が減少し、輸入品の一部が他国からのものに置き換わったとされています。これは、表面的には「関税が効果を上げた」というストーリーに見えます。
しかし、中国側の公式データでは、2018年から2024年までの間に対米輸出がむしろ約10%増加したとされており、「米国向け輸出は増え続けている」という全く異なる絵姿が浮かび上がります。
同じ貿易の流れを見ているはずなのに、なぜここまで評価が分かれるのか。その背景として指摘されているのが、米国の統計に反映されにくい小口の荷物です。
鍵となるデミニミス制度とは
分析の焦点となっているのが、米国のデミニミス制度です。デミニミスとは、一定額以下の少額貨物について、関税を免除し、簡略な手続きで国内に持ち込めるようにする仕組みを指します。
現在、多くの人が日常的に利用する越境ネット通販では、中国から米国の消費者に向けて、比較的小さな荷物が大量に発送されています。こうした小口の中国発の荷物は、デミニミス制度の対象となる場合、米国の貿易統計に「輸入」として計上されないケースがあるとされています。
その結果、中国から米国への実際の輸出量と、米国の統計上把握される輸入量との間に差が生まれ、「輸入ギャップ」と呼ばれるねじれが生じている、というのが専門家の見立てです。
「輸入ギャップ」が意味するもの
このギャップは、単なる統計上の細かな違いにとどまりません。米国側の数字だけを見ると、対中関税は貿易赤字を減らし、輸入先を他国へ移す効果があったように見えますが、中国側の数字は、対米輸出がむしろ拡大していることを示しています。
もし小口輸入が統計で十分に捕捉されていないのであれば、政策担当者は、現実よりも貿易の「中国離れ」が進んでいると判断してしまうリスクがあります。一方で、消費者や企業のレベルでは、中国からの安価な製品を引き続き利用している可能性も考えられます。
こうした認識のずれは、今後の米中協議や関税政策の見直し議論にも影響し得ます。関税の継続や追加を主張する側と、見直しや緩和を求める側で、拠って立つ数字そのものが違っているからです。
日本と世界への示唆
今回の米中を巡る「輸入ギャップ」の議論は、日本を含む他の国と地域にとっても無関係ではありません。国際貿易の構造を理解するうえで、統計の取り方や制度の違いが、見えてくる世界を大きく変えてしまうことを示しているからです。
特に、ネット通販を通じた少額取引が拡大するなかで、従来型の貿易統計だけでは実態がつかみにくくなっている可能性があります。政策を考えるうえでは、「数字が何を含み、何を含んでいないのか」を丁寧に見る視点がますます重要になってきます。
米国と中国のあいだで続く関税と統計を巡るせめぎ合いは、2025年の今も国際経済を読み解くうえでの重要な論点であり続けています。読者の皆さんも、ニュースで貿易統計の数字を見るときには、その裏側にある制度や計測方法にも少し目を向けてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
China and US at odds over tariff effects amid undercounted imports
cgtn.com








