トランプ政権の新関税で米中加が対立 2025年の貿易摩擦を整理
2025年3月初め、ドナルド・トランプ米大統領がメキシコとカナダからの輸入品に25%の追加関税、中国本土からの輸入品への関税引き上げを実施し、米国の主要3貿易相手との貿易摩擦が一気に激しくなりました。本記事では、この国際ニュースを日本語で整理し、北米と中国本土、そして世界経済への影響を考えます。
トランプ政権の新関税措置とは
今回の関税措置は、米国とカナダ、メキシコ、中国本土との間の年間約2.2兆ドル規模の双方向貿易を揺さぶりかねない内容でした。米東部時間の午前0時1分に発動され、具体的には次のようなポイントがあります。
- メキシコとカナダからの輸入品に、一律25%の追加関税を課す。
- 中国本土からの輸入品にかかる関税を倍増させ、20%に引き上げる。
対象品目は幅広く、自動車や機械、エネルギー関連、農産品など、北米経済の中核をなす産業のサプライチェーンに直撃する可能性があります。
中国本土とカナダの対抗措置
中国本土:追加関税と輸出規制で対応
中国本土は米国の措置に対し、3月10日から一部の米国産品に10~15%の追加関税を課すと発表しました。国務院関税税則委員会の声明によると、対象には米国産の鶏肉、小麦、トウモロコシ、綿花などが含まれ、関税率は一律15%とされています。
さらに、中国側は特定の米国企業や団体を対象とした輸出管理の強化も打ち出しました。これは、技術や重要資源の流出を抑える狙いがあるとみられ、米国と中国本土の間で、モノの貿易だけでなく技術・安全保障分野でも緊張が高まりつつあることを示しています。
カナダ:段階的な関税カードで圧力
カナダのジャスティン・トルドー首相は、即時に25%の関税を米国からの輸入品300億カナダドル分に課すと表明しました。さらに、米国の関税が21日後も維持されている場合には、追加で1,250億カナダドル相当の輸入品に関税を拡大する方針も示しました。
トルドー首相は、標的とする品目として、米国産のビール、ワイン、バーボン、家庭用電化製品、フロリダ産オレンジジュースなどを挙げています。いずれも米国の象徴的な消費財であり、政治的なインパクトも意識したラインナップと言えます。
また、オンタリオ州のダグ・フォード州首相は米メディアのインタビューで、報復措置としてニッケル輸出や電力供給を停止する用意があると述べ、強い姿勢を示しました。
一方、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領も、首都メキシコシティでの記者会見で対抗策を発表すると予告しており、北米3カ国が関税をめぐる応酬に踏み込む構図となっています。
連続する関税決定 今年前半のタイムライン
トランプ氏は2025年1月20日に大統領職へ復帰して以降、短期間に次々と関税措置やその検討を打ち出してきました。2~3月にかけての主な動きは次の通りです。
- 2月1日:カナダ、メキシコ、中国本土への関税を2月4日に発動するとする大統領令と説明資料を公表。
- 2月3日:カナダとメキシコへの関税発動を30日間停止し、両国との追加交渉に入ることで合意。
- 2月4日:中国本土からの輸入品に対し、10%の関税を実際に発動。
- 2月10日:鉄鋼輸入への25%関税を全面的に復活させ、アルミニウムへの関税も25%へ引き上げ。
- 2月13日:各国との貿易で「実質的に相互主義となる関税水準」を検討するよう政権内に指示する覚書に署名。
- 2月26日:欧州連合(EU)からの輸入品、とくに自動車に対して25%の関税を課す方針を表明。
- 3月1日:1962年通商拡大法232条に基づき、木材輸入が国家安全保障に与える影響を調査するよう商務長官に命令。
こうした一連の動きからは、トランプ政権が「相互主義」や「安全保障」を名目に、関税を交渉カードとして幅広く使おうとしている様子が読み取れます。
北米経済とサプライチェーンへの打撃懸念
メキシコとカナダ向けの関税強化は、北米全体の高度に統合された経済に深刻な影響を与えかねません。自動車や機械、生産設備、エネルギー、農産品など、多くの産業は国境をまたぐ部品・素材のやり取りに依存しています。
カナダ商工会議所のキャンダス・レイング最高経営責任者は声明で、今回の米国の判断がカナダと米国双方を「景気後退、雇用喪失、経済的な大混乱」に追い込む危険があると指摘しました。彼女はまた、関税は最終的に消費者と企業にコストを転嫁するものであり、「関税はアメリカ国民への税金だ」と強調しています。
自動車業界からも懸念が上がっています。デトロイトの自動車大手3社を代表する米自動車政策評議会のマット・ブラント会長は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の域内原産地要件を満たしている車両については、新たな関税の対象から外すよう求めました。そうした車両は、すでに北米内で一定割合以上の部品・生産工程を共有しているためです。
インフレと金融市場への影響
米国では、今回の関税発表前から工場出荷価格が約3年ぶりの高水準に達しており、新たな関税が追加されれば、企業の生産コストが一段と押し上げられるとの見方が広がっていました。
トランプ氏が関税の実施を正式に確認すると、世界の株式市場は下落し、安全資産とされる国債には買いが集まりました。為替市場では、カナダドルとメキシコペソが米ドルに対して値を下げ、北米経済への不安が通貨にも反映される形となりました。
ノーベル賞経済学者が警告する「スタグフレーション」
ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏は、英紙のインタビューで、トランプ政権の度重なる関税の脅しや発動によって、米国は投資先として「怖い場所」になりつつあると述べました。
同氏は、景気が停滞する一方で物価だけが上昇する「スタグフレーション」が起きる危険性を指摘し、「最悪の組み合わせ」を招きかねないと警鐘を鳴らしています。関税は国内産業を守るどころか、投資の減退や物価上昇を通じて、むしろ自国経済を弱らせる可能性があるという見立てです。
私たちはこの国際ニュースをどう見るか
2025年の前半に相次いだ関税措置は、米国と中国本土、カナダ、メキシコ、さらには欧州連合との間で「関税の応酬」が現実のものになりうることを示しました。関税率そのものの数字だけでなく、サプライチェーンの分断、物価や雇用への波及、金融市場の動きなど、複数のレイヤーでの影響を意識する必要があります。
日本の企業や投資家、そしてニュースを追う私たちにとっても、米国の通商政策は無縁ではありません。今後も、各国の関税措置や交渉の行方を「誰が得をし、誰が負担するのか」という視点で冷静にチェックしていくことが求められます。
Reference(s):
cgtn.com








