93歳の学生が映す中国の日常 CGTN Wander Lens 2025 が問いかけるもの video poster
CGTNの国際プロジェクト Wander Lens 2025 に登場した93歳の学生 Jian Shan Zhai(ジアン・シャン・ジャイ)さんが、中国の日常の美しさをカメラで切り取っています。高齢になっても学び続ける姿と、レンズ越しに見える「ふつうの生活」が静かな共感を呼んでいます。
世界的に高齢化が進む2025年現在、「何歳になっても学び続けられる社会」は多くの国で共通の課題です。93歳の元大学教授でもある Zhai さんの挑戦は、年齢と学び、そしてデジタル時代の自己表現について、私たちにさまざまな問いを投げかけます。
元大学教授、93歳で「大学生」に戻る
Zhai さんはかつて大学で教壇に立っていた元教授ですが、いまは高齢者向けの大学で人気の学生としてキャンパスに通っています。長年、「教える側」だった人が「学ぶ側」に戻り、新しい視点で世界を見つめ直しているのが印象的です。
彼が取り組んでいるのは、カメラを手に取り、自分の目線で中国の暮らしの美しさを記録し、周りの人と共有することです。歳を重ねるなかで培った経験や感性が、静かな映像となって現れます。
Wander Lens 2025 とは
Wander Lens 2025 は、CGTN が行っている映像プロジェクトです。運営側がカメラを郵送し、さまざまな立場の人々に「自分の生活」を撮ってもらうことで、日常の喜びや悩み、ささやかな瞬間を記録していきます。
参加者は、仕事や趣味、家族との時間など、日々の暮らしの「アップダウン(浮き沈み)」をそのままカメラに収めます。雪に覆われた山の頂から、陽の光が差し込む教室まで、Light Catchers(光をとらえる人たち)は都市や山々、海辺を歩きながら、一瞬で過ぎ去ってしまう瞬間を逃さず記録していきます。
プロジェクトの目的は、仕事や家事、学びの合間に埋もれがちな「小さな物語」をすくい上げ、世界の視聴者と共有することです。忙しい日常のなかにひそむ驚きや発見を、参加者自身の視点で伝える試みでもあります。
Zhai さんのレンズが映す「ふつう」の中国
Zhai さんのカメラが向けられるのは、特別な観光名所ではなく、教室での学びの時間や、同世代の仲間との交流、身近な街角といった日常の風景です。そこには、大きなドラマはなくても、暮らしに根づいた穏やかな時間が流れています。
93歳という年齢だからこそ見えてくる、時間の重なりや人とのつながりもあります。若い頃に教えていたキャンパスに、いまは学生として通い直す。その視点の変化が、映像のなかにさりげなく反映されているといえるでしょう。
高齢化社会と「学び直し」への示唆
高齢化が進む社会では、「高齢になったら何をするか」という問いが、個人にもコミュニティにも突きつけられています。Zhai さんのように、学びの場に戻り、新しいことに挑戦しながら日常を記録する姿は、その問いに対する一つの答えを示しているように見えます。
このプロジェクトから浮かび上がるメッセージを、あえていくつかに整理すると次のようになります。
- 学びは年齢に関係なく続けられること
- 身近な日常にも、記録し共有する価値があること
- カメラというシンプルな道具が、世代や地域を超えた対話のきっかけになり得ること
日本を含む多くの国で、高齢者の学び直しやデジタル技術の活用が課題となるなか、遠く離れた中国の一つの事例は、静かですが示唆に富んだ材料を提供してくれます。
私たち自身の「レンズ」をどこに向けるか
スマートフォンで誰もが簡単に写真や動画を撮れるいま、日々の出来事を記録すること自体は珍しくなくなりました。一方で、「何を、どのような視点で撮るか」という問いは、むしろ重みを増しているのかもしれません。
Zhai さんや、各地の Light Catchers がカメラを通じて伝えようとしているのは、「人生のアップダウン」を含んだありのままの生活です。それは、私たちが SNS で発信する一枚の写真や短い動画の向こう側にも、同じように物語が広がっていることを思い出させてくれます。
93歳の学生が歩む学びの旅路と、その手に握られた小さなカメラ。その組み合わせは、2025年を生きる私たちに、「自分ならどんな瞬間を残したいか」と静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com







