EUが米国製品約280億ドルに報復関税 鉄鋼・アルミ追加関税に対抗
EU(欧州連合)は2025年4月、米国が鉄鋼とアルミニウムに課した追加関税に対抗し、約260億ユーロ(約283億ドル)相当の米国製品に報復関税を導入しました。本稿では、この通商摩擦のポイントと今後の行方を整理します。
EU報復関税の概要
欧州委員会は声明で、米国による鉄鋼・アルミ輸入品への25%の関税引き上げを受け、約260億ユーロ分の米国製品に対して対抗関税を課す方針を示しました。対象規模は約283億ドルに相当し、事実上の報復措置となります。
- 対象規模:約260億ユーロ(約283億ドル)の米国製品
- 発動時期:2025年4月1日から段階的に適用、13日までに全面実施
- 目的:米国の追加関税と同程度の経済規模で「釣り合う」措置
2段階で導入されたEUの対抗措置
フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、「今回の対抗措置は経済規模の面で米国の関税に見合うものであり、2段階で導入する」と説明しました。
4月1日:停止していた関税の再導入
第1段階として、2025年4月1日に、これまで停止されていた2018年および2020年の「再均衡措置」が復活しました。これにより、当時の通商対立の中で設定され、その後停止されていた一部の対米関税が再び課されることになりました。
4月中旬:新たな追加パッケージ
第2段階として、欧州委員会は4月中旬までに新たな追加措置のパッケージを提示し、4月13日までに全面的に発動しました。これには別の米国製品が含まれ、2018年・2020年の措置と合わせることで、米国の鉄鋼・アルミ関税と経済的な規模で均衡を取る構成になっています。
EUが掲げる「迅速で比例的な」対応
欧州委員会は、今回の対抗措置を欧州の利益を守るための「迅速で比例的な」対応だと位置づけています。つまり、過剰なエスカレーションは避けつつも、自らの市場と産業を一方的な関税強化から守るというスタンスです。
一方で、フォン・デア・ライエン委員長は「我々は意味のある対話に応じる準備がある」と強調し、マロシュ・シェフチョビチ通商担当委員に対し、米国側との協議を再開し、より良い解決策を探るよう指示しました。対抗措置と対話を並行させる方針が示された形です。
トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税が引き金
今回のEUの動きの直接のきっかけとなったのは、トランプ米大統領が決定した鉄鋼とアルミニウム輸入品への25%の関税引き上げです。これまで適用されていた一部の免除措置や無税枠、個別の除外措置が失効したことで、この追加関税は水曜日に発効しました。
米国側は自国の鉄鋼・アルミ産業を保護する狙いを掲げる一方、EUを含む貿易相手国は、自らの輸出企業への打撃と世界貿易への影響を懸念しています。EUの今回の対抗措置は、こうした懸念の表明であると同時に、交渉のテーブルにおける交渉力を確保する意味合いも持ちます。
日本と世界経済への含意
EUと米国という世界経済の二大プレーヤーの間で関税の応酬が起きると、その影響は両地域にとどまらず、第三国にも波及します。自動車、機械、消費財などの分野では、コスト上昇やサプライチェーン(供給網)の見直しを迫られる可能性があります。
日本企業の中には、欧州と米国の双方に生産拠点や販売網を持つ企業も多く、関税の変更が投資計画や調達戦略に影響を与える場面も想定されます。短期的には価格や収益性のゆらぎ、中長期的には生産拠点の再配置などが検討テーマになりうるでしょう。
- 今回の報復関税は、2018年・2020年の通商摩擦から続く流れの延長線上にある
- EUは関税を「防衛的な措置」としながら、対話の窓口も開いている
- 企業にとっては、米欧間の貿易ルールの不確実性が投資判断のリスク要因になる
2025年12月以降に注目したいポイント
2025年12月の時点では、この一連の関税措置がどのような着地点を迎えるのかはまだ見通せません。ただし、今後の国際ニュースを追ううえで、次の点に注目しておくと状況を把握しやすくなります。
- EUと米国が、追加関税の一部または全部の撤回・見直しで合意できるか
- 鉄鋼・アルミ以外の分野にも追加関税が広がるかどうか
- 世界貿易機関(WTO)の枠組みを通じた紛争処理の行方
関税の応酬は、政治的には強硬姿勢を示す手段になりやすい一方で、最終的なコストは企業と消費者が負担することが多いと言われます。日本を含む各国にとっても、EUと米国がルールに基づく貿易と建設的な対話に回帰できるかどうかが、今後の重要な関心事であり続けるでしょう。
Reference(s):
EU to impose counter tariffs on over $28 billion of U.S. goods
cgtn.com








