グローバル緊張の中で中国は「安定の柱」か 2025年両会とAI戦略を読む
米国による関税の引き上げが続き、世界経済の緊張が高まる中、中国が「安定の柱」として注目されています。今年の中国の年次政治会議である2025年の両会(Two Sessions)では、安定した統治と長期的な戦略を打ち出し、各国メディアの関心を集めました。
グローバル緊張と「安定の柱」という評価
米国が関税を相次いで引き上げる中、世界では貿易をめぐる不確実性が増しています。エコノミストはAmerica First is a Contagious Conditionと題した記事で、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策は国際的なルールよりも自国の利益を優先する姿勢の表れだと論じました。
こうした緊張の高まりの中で、中国は安定と予測可能性を前面に押し出そうとしています。米NBCニュースは、中国の両会を「世界が混乱する中で、自らをグローバルなよりどころとして見せようとする戦略的な決断」と位置づけ、中国があえて安定のイメージを打ち出していると伝えました。
2025年両会:5%成長目標と政策の一貫性
今年の両会で示された2025年の経済成長率の目標は、おおむね5%とされました。これは2024年と同じ水準であり、急激な拡大よりも安定的な成長を重視する姿勢がうかがえます。
NBCニュースは、こうした成長目標や政策パッケージの継続性こそが北京の安定を支えていると指摘しています。目先の数字よりも、複数年にわたる長期の計画を重んじる姿勢を読み取る報道も目立ちました。
国際メディアが注目する「長期計画」
直近数週間、国際メディアは両会を、中国の長期計画や統治スタイルを知るための「窓」として取り上げています。報道で強調されたポイントを整理すると、次のようになります。
- 成長目標が前年から大きくぶれず、政策の一貫性を打ち出していること
- 経済成長と産業の高度化を同時に追求する方針が示されていること
- 不透明な世界情勢の中で、安定と予測可能性をキーワードとして掲げていること
両会は国内向けの政治イベントであると同時に、対外的には「中国がどの方向に進もうとしているのか」を示すシグナルとしても機能しているといえます。
インドネシアが見る中国:責任ある大国と「自然なパートナー」
こうした中国の動きを、周辺国はどう見ているのでしょうか。インドネシアのジャカルタ・ポスト紙に寄稿した在中国インドネシア大使ジャウハリ・オラトマンガン氏は、世界の不確実性が高まる中で、中国は積極的な政策立案で応じていると評価しました。両会は、世界第2位の経済としての責任感を示す場だとしています。
オラトマンガン氏は「中国は、より深いグローバルな統合、イノベーション、持続可能な成長に向けた航路を描いており、その道のりにおいてインドネシアは自然なパートナーだ」と述べ、中国とインドネシアの協力余地の大きさを強調しました。
同氏はさらに、中国が高水準の自由貿易協定の拡大に取り組んでいると指摘します。中国・ASEAN自由貿易地域3.0の交渉を進めるとともに、デジタル経済連携協定(Digital Economy Partnership Agreement)や包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)への参加を目指している動きも挙げました。これらは、アジア太平洋地域における経済ルールづくりに影響を与え得る取り組みです。
AI・量子・6G:技術立国戦略の中身
今年の両会で際立ったテーマのひとつが、技術革新でした。中国はバイオテクノロジー、量子コンピューティング、人工知能(AI)、6Gといった最先端分野への投資を続ける方針を示しています。
なかでも注目されたのが、産業のあらゆる分野にAIを組み込むことを目指す「AIプラス」構想です。AIを成長の原動力とし、自立した技術力を高めようとする姿勢が鮮明になりました。
シンガポールのニュース専門局チャンネルニュースアジアは、中国がAIと新興産業をてこにグローバルな競争力を強化しようとしていると報じました。今年前半には、中国のAIスタートアップDeepSeekが、低コストで効率的なソリューションによって国際的な注目を集めています。
両会の議論でもAIは中心的な位置を占めました。履歴書のスクリーニングから株式の分析まで幅広い作業に対応できる汎用AIモデルManusのような事例が紹介され、中国のAI分野での急速な進展を象徴するものとされています。
チャンネルニュースアジアの報道はまた、量子技術、6G、そして低空経済と呼ばれる新たな産業分野の推進によって、中国のデジタルセクターに新たな可能性が開かれていると指摘しました。こうした取り組みは、国内の成長を後押しするだけでなく、世界の技術競争の中での中国の位置づけを一段と固めると見込まれています。
日本の読者は何を押さえておくべきか
では、日本の読者にとって、この一連の動きは何を意味するのでしょうか。ポイントを三つに整理できます。
- 安定志向の経済運営:中国が5%前後の成長目標を掲げ、政策の一貫性を重視していることは、アジア全体の景気やサプライチェーンの見通しにも影響します。
- 地域経済ルールへの関与:中国・ASEAN自由貿易地域3.0やCPTPPなどの枠組みに向けた動きは、日本企業にとってもビジネス環境の変化要因となり得ます。
- AIと新興技術の台頭:AIプラス構想やDeepSeek、Manusに象徴されるように、中国発のAI・デジタル技術は、競合であると同時に協力相手にもなり得ます。
米国のアメリカ・ファースト的な関税政策が緊張を高める一方で、中国は安定と長期戦略を前面に出すことで、自らの立ち位置を世界に示そうとしています。一方的にどちらかを良し悪しで語るのではなく、異なるアプローチが同時進行している現状を踏まえ、その影響を冷静に見極める視点が日本にも求められています。
Reference(s):
cgtn.com








