米国関税とインフレが家計を直撃 2025年の消費減速をデータで読む
アメリカの物価上昇がなかなか収まらないなかで、関税政策が「見えない増税」として消費者の家計をじわじわと圧迫しています。本記事では、2025年初めの米国の物価・消費・景況感のデータを手がかりに、関税とインフレがどのように重なり合い、暮らしに影響しているのかを読み解きます。
2025年2月のCPI:インフレは依然として目標超え
米労働統計局(BLS)が公表したデータによると、2025年2月のアメリカの消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.8%の上昇でした。食品とエネルギーを除いたコアCPIは3.1%上昇と、米連邦準備制度理事会(FRB)の物価目標である2%を依然として大きく上回っています。
- CPI:前年比+2.8%
- コアCPI:前年比+3.1%(FRB目標の2%を上回る水準)
1月にインフレ率が急上昇したあとも、物価の高止まりが続いていることを示す数字です。名目賃金が伸びても、物価上昇がそれ以上であれば、実質的な購買力はむしろ低下します。
消費はマイナス、消費者信頼感も急低下
物価高の影響は、消費の動きにもはっきりと表れています。2025年1月の米個人消費支出は前月比0.2%減少し、約4年ぶりとなる大きな落ち込みとなりました。
さらに、世界的なシンクタンクであるコンファレンスボードの最新調査では、2025年2月の米国の消費者信頼感指数が前月から7ポイント低下し、98.3となりました。市場予想の102.3を大きく下回ったうえ、この下げ幅は2021年8月以来の大きさです。
- 消費者信頼感指数:102.3の予想に対し、実績は98.3
- 前月比の低下幅:2021年8月以来となる大きさ
調査によると、労働市場に対する見方も悪化し、仕事に不安を感じる人がこの10カ月で最も高い水準に達しています。家計の将来に自信が持てなくなれば、大型消費や投資は手控えられ、景気の減速圧力が強まります。
高インフレ+成長減速=スタグフレーション懸念
インフレが落ち着かない一方で、景気の勢いが失速しつつあることから、市場ではアメリカ経済がスタグフレーション(物価高と景気停滞が同時に進む状態)に陥るのではないかという懸念が高まっています。
アトランタ連邦準備銀行は、2025年第1四半期の米国の国内総生産(GDP)が1.5%縮小する可能性があると予測していました。物価は上がり続けるのに、経済全体はむしろ縮むかもしれない――その組み合わせは、中央銀行にとって極めて難しい局面です。
FRBはインフレを抑えるために金利を高めに維持したい一方で、景気の失速が鮮明になれば利下げも検討せざるを得ません。こうした政策のジレンマの背景にある要因のひとつとして、関税を含む通商政策の影響も無視できません。
関税はなぜ「見えない増税」なのか
関税は、輸入品に対して上乗せされる税金です。政府が外国から入ってくる商品に関税をかけると、その分コストが増えます。企業がそのコストを価格に転嫁すれば、最終的な負担者は消費者になります。
特に次のようなルートで、関税は家計を圧迫しやすくなります。
- 日用品や衣料品、家電製品など、輸入に依存する商品の店頭価格が上昇する
- 部品や原材料の輸入コストが上がり、国内で生産される商品の価格にも波及する
- 企業のコスト増が賃上げ余力を削り、実質賃金の伸びを抑える
表向きは「外国企業に負担を求める」政策に見えても、最終的には、自国の消費者が高い物価という形で負担を背負う構図になりやすいのが関税です。その意味で、関税はしばしば「見えない増税」と呼ばれます。
関税とインフレの相乗効果が生むプレッシャー
2025年2月時点で、アメリカのコアCPIは3.1%と、すでにFRBの目標をかなり上回る水準にありました。このような局面で関税の負担が続けば、インフレ圧力が長引きやすくなります。
物価が高止まりし、消費者信頼感が低下し、実際の個人消費も減少している――こうしたサインは、関税を含む一連の政策が、家計と景気にどのような負担を与えているのかを考えるうえで重要です。
関税が短期的に一部の産業を守る効果を持ちうるとしても、長期的には、
- 消費者の購買力を弱める
- 企業のコスト競争力を削ぐ
- インフレ抑制を目指す金融政策の効果を弱める
といった副作用を通じて、経済全体にとってマイナスに働くリスクがあります。
日本の読者にとっての意味:米国の物価と関税は他人事ではない
日本のニュース読者にとって、「アメリカのインフレ」や「米国の関税政策」は、距離のある話に感じられるかもしれません。しかし、グローバルなサプライチェーンや金融市場を通じて、その影響は日本経済や私たちの生活にも波及します。
- 米国の消費が冷え込めば、世界全体の需要が弱まり、日本企業の輸出にも影響する
- 物価や金利の動きは、為替レートを通じて円相場や輸入物価に反映される
- 関税を巡る動きは、国際貿易ルールや他国の通商政策にも影響を与える
国際ニュースを日本語でフォローすることは、単に海外の出来事を知るためだけではなく、自分の働き方や投資、消費のあり方を考え直す手がかりにもなります。
データが示すメッセージ:家計目線の政策が問われている
2025年初めにかけてのデータは、アメリカの家計が「高インフレ」と「景気減速」という二重の重圧にさらされていることを示しています。物価の高止まり、消費の減速、信頼感の悪化が同時に進むなかで、関税を含む経済政策が誰にどのような負担を与えているのかを、改めて家計目線で検証することが求められています。
関税がもたらす「見えない増税」のコストを正確に把握し、物価安定と持続的な成長を両立させる道筋を探ること。それは、アメリカだけでなく、世界経済と日本の将来にとっても大きなテーマになりつつあります。
Reference(s):
US tariffs hurt consumers, putting them under immense pressure
cgtn.com








