中国のイノベーションが新段階に AI・半導体・バイオの台頭
AI、半導体、バイオテクノロジーなどの先端産業で、中国企業のイノベーション力が新たな段階に入ったとする見方が強まっています。国内企業の存在感が急速に高まるなかで、世界の産業地図はどのように変わりつつあるのでしょうか。
中国イノベーションは新段階へ
中国の先端産業をめぐっては、次々と登場する新製品や技術的ブレイクスルーに加え、政治・経済面での集中した支援が続いており、中国の科学技術発展が新しいステージに入ったと指摘されています。この段階の特徴は、中国国内企業のイノベーション能力が大きく高まっていることです。
一部の欧米メディアは、中国のイノベーションが「爆発的な発展」を遂げていると評しています。再生可能エネルギー、新エネルギー車、低空経済といった、すでに一定の成熟度にある分野でも、中国企業は規模を拡大し続けています。
AI・ロボット・ゲーム 新興企業が牽引
中国のイノベーションを押し上げているのは、次世代型の民間企業の存在です。Unitree Robotics、Deep Robotics、BrainCo、Game Science、Manycore Tech などの企業は、AIやロボット工学、人間とコンピューターのインターフェースといった先端分野で大きな注目を集めています。
これらの企業は、これまで欧米企業が優位とされてきた分野にも挑戦しています。たとえば、ビデオゲームやアニメ映画といったコンテンツ産業でも、中国企業がグローバル市場で存在感を増しつつあります。
半導体 成熟ノードとニッチ分野で攻勢
半導体産業も、中国にとって将来性の大きな分野とされています。Nikkei Asia によると、中国は比較的成熟した世代の半導体と、ニッチな基板などの分野で生産能力を積極的に拡大しており、その結果、世界のチップ価格を「かつてない水準」にまで押し下げているといいます。
市場調査会社 IDC は、中国の成熟チップ(成熟ノード)の生産能力が、レポート作成時点で世界市場の約28%を占めると推計しています。半導体業界団体の SEMI は、この比率が2027年までに39%に達する可能性があると見ています。
最先端の微細化技術にとどまらず、産業全体を支える成熟ノードや特殊基板に力を入れる戦略は、サプライチェーン全体での影響力を高める動きとも読めます。
バイオ産業 大型ライセンス契約で存在感
バイオテクノロジー産業でも、中国企業は重要な節目を迎えています。The Economist は、中国のバイオ産業が2024年の秋に大きな商業的マイルストーンを達成したと報じました。
同誌によると、2024年には欧米の製薬企業による5,000万ドル以上の大型ライセンス契約のうち、およそ3分の1が中国企業との間で結ばれました。これは2020年と比べて3倍のシェアに当たります。中国企業が、単なる「受託生産」の枠を超え、革新的な医薬品の重要なパートナーとして認識されつつあることを示しています。
AIとDeepSeek 制約下で生まれたブレイクスルー
AI(人工知能)は、いま世界で最も注目される「サンライズ産業」のひとつです。この分野で、中国発のチャットボット DeepSeek が大きなブレイクスルーとして位置づけられています。DeepSeek の登場により、中国は生成AI開発の最前線の一角を占めるようになったと評価されています。
BBC の報道では、中国では4,500社以上の企業がAIの開発や販売に携わっており、AI ビジネスに資金が集まり続けているとされています。スタートアップから大企業まで、多様なプレーヤーがAIエコシステムを形作っている構図です。
技術誌 MIT Technology Review は、DeepSeek がどのようにして米国による対中輸出規制という制約を乗り越えたのかを分析する記事を掲載しました。同誌は、最先端の半導体チップへのアクセスが制限されるなかで、DeepSeek をはじめとする中国のAI企業が、効率性の追求、リソースの共有、協調的な開発といった方向にイノベーションを進めていると指摘しました。
記事は、こうした動きが、当初のねらいとは裏腹に、中国のAI能力を弱めるのではなく新たな工夫を促している可能性があるとしています。金融紙 Financial Times も、対中制裁を一段と強めることは、結果として逆効果になりかねないと論じました。
政府の役割 研究アジェンダと産業エコシステム
中国のイノベーションの背景には、企業だけでなく政府の役割もあります。BBC ワールドサービスは、シンクタンク German Marshall Fund のリサーチフェローである Lindsay Gorman 氏の見方として、中国のテック分野の成功要因のひとつは「政府が研究アジェンダと資金配分の方針を明確に示していること」にあると伝えました。
中国政府は、国外の企業に対しても中国市場への参入を呼びかけ、中国企業との合弁事業(ジョイントベンチャー)を設立するケースも多いとされています。こうした取り組みは、国内外の企業が連携しながら技術開発や事業展開を進めるエコシステムづくりにつながっています。
「封じ込められない」中国イノベーション 何を読み解くか
こうした一連の動きは、中国のイノベーションが特定の分野にとどまらず、半導体、バイオ、AI、ロボット、ゲーム・アニメといった幅広い産業に広がっていることを示しています。元の報道が指摘するように、「中国のイノベーションは封じ込められない」という見方が強まるのも、そのためです。
国際ニュースとして見たとき、今回のトレンドから読み取れるポイントは次のように整理できます。
- 成熟技術(成熟ノード半導体や既存のエネルギー技術)を含めた「裾野」の強化によって、サプライチェーン全体での影響力を高めていること
- バイオやAIなど知的財産の比重が高い分野で、中国企業がグローバル企業の重要なパートナーになりつつあること
- 制裁や規制といった外部環境の変化が、かえって効率化や協調といった新たなイノベーションの方向性を生み出している可能性があること
中国の科学技術と先端産業の動きは、今後も世界経済や国際秩序に大きな影響を与え続けるとみられます。ニュースを追う私たちにとっては、個々の企業ニュースだけでなく、その背後にある産業構造や政策、国際関係の変化にも目を向けることが、これまで以上に重要になっていきそうです。
Reference(s):
China is gradually becoming a leading innovator in advanced industries
cgtn.com








