韓国が中国団体観光客にビザ免除へ 観光回復とAPEC首脳会合を見据え
韓国政府が、中国本土からの団体観光客に対し、2025年の第3四半期に一時的なビザ免除を導入すると表明しました。観光需要の回復が課題となるなか、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合を前に、人の往来を一段と活発にする狙いがあります。
韓国が打ち出した中国団体観光客向けビザ免除
韓国は、2025年の第3四半期(7〜9月)に、中国本土からの団体観光客を対象とした一時的なビザ免除措置を実施するとしています。これは観光業をてこ入れし、低迷する国内需要を補うことを目的とした政策です。
韓国側の説明によると、この新たなビザ免除は、観光回復を加速させるための「期間限定」の措置で、団体旅行に特化している点が特徴です。Choi Sang-mok代行大統領は、中国からの訪問客数の回復スピードを高めるため、第3四半期にこのビザ免除を導入すると述べました。
APEC首脳会合を見据えた動き
韓国政府は、このビザ免除措置を、2025年第4四半期に東南部の慶州で予定されているAPEC首脳会合も視野に入れた動きだと位置づけています。APECには21の経済体の首脳が参加する予定で、世界からの注目が集まります。
歴史遺産で知られる観光都市・慶州でのAPEC開催を前に、韓国としては観光インフラや受け入れ態勢を整えつつ、国際的なイメージ向上と観光需要の喚起を図りたい思惑があるとみられます。
中国外務省「文化交流は双方の利益」
この韓国の発表を受け、中国外交部(外務省)の毛寧報道官は、北京での定例記者会見で、中国と韓国は近隣同士であり、文化交流を強化することは双方の利益になるとの考えを示しました。
ビザ緩和や観光往来の拡大は、単なる経済効果にとどまらず、人と人との接点を増やし、相互理解を深める手段としても位置づけられています。今回の措置は、そうした人文交流を後押しする一歩といえます。
Ctrip分析:高齢者・家族旅行、地方都市からの需要に期待
中国の大手オンライン旅行会社Ctripの研究機関は、韓国の新しいビザ免除政策について、次のような効果を見込んでいます。
- 中国本土から韓国への旅行手続きが簡素化され、観光客の利便性が大きく向上する
- ビザ取得のハードルが下がることで、高齢者や家族連れなど、これまで海外旅行の手続きが負担だった層の需要が掘り起こされる
- 中国本土の第3・第4級都市(大都市圏以外の地方都市)からの団体旅行需要が解放される可能性が高い
Ctripの分析は、ビザ政策が旅行先の選択に与える影響の大きさを示しています。特に団体旅行は、航空券、ホテル、飲食、ショッピングなど幅広い消費を伴うため、韓国の観光・サービス産業にとって重要な顧客層です。
小売・免税店・外食産業への波及効果
Ctripの研究機関は、団体旅行の本格的な復活は、韓国の以下の分野の回復を支えると指摘しています。
- 百貨店やドラッグストアなどの小売業
- 空港や都市部に集中する免税店
- 飲食店やフードコートなどの外食産業
中国本土からの団体観光客は、買い物や外食でまとまった消費をする傾向があり、その支出が周辺産業を含めた経済活動に波及すると期待されています。また、人の往来が増えることで、ビジネス交流や文化イベントなど、観光以外の分野にも波及効果が広がる可能性があります。
数字で見る中国本土から韓国への旅行需要
Ctripのデータによると、2025年に入ってから、中国本土から韓国への旅行予約件数は前年同期比でほぼ2割増加しています。すでに訪韓需要は回復基調にあり、今回のビザ免除が実行されれば、その流れにさらに弾みがつく可能性があります。
韓国政府の統計では、2024年に韓国を訪れた海外旅行者のうち、中国の旅行者が全体の28パーセントを占め、国・地域別で最大のシェアとなりました。これらの数字は、中国本土からの観光客が韓国のインバウンド市場においてどれほど重要な存在かを物語っています。
中国側のビザ緩和との「双方向」トレンド
今回の韓国の動きは、中国が2024年11月に決定したビザ緩和措置とも呼応しています。当時、中国は韓国を含むアジアおよび欧州の複数の国・地域の人々に対し、ビジネス、観光、親族訪問目的での短期滞在について、ビザなし入国を2025年末まで延長すると発表しました。
こうした相互的なビザ緩和の流れは、両国の人の往来を増やし、観光のみならず経済・文化・教育などさまざまな分野の交流を活性化させる土台となります。韓国の今回の決定も、その延長線上にある動きと見ることができます。
これからの注目ポイント
今後、注目したいポイントはいくつかあります。
- 2025年第3四半期のビザ免除期間中、中国本土からの団体旅行がどの程度まで回復・拡大するか
- 高齢者や家族旅行など、新たな旅行者層がどれだけ韓国を訪れるようになるか
- 小売、免税店、外食産業など、韓国国内の消費がどの程度押し上げられるか
- 2025年第4四半期の慶州でのAPEC首脳会合に向け、人の往来拡大が地域のイメージ向上や長期的な観光資源づくりにつながるか
中国と韓国は地理的にも文化的にも距離の近い隣国です。今回のビザ免除措置が、観光需要の回復にとどまらず、両国の人々の交流と相互理解を一段と深めるきっかけとなるのか、今後の動きが注目されます。
Reference(s):
South Korea to offer visa-free entry to Chinese group tourists
cgtn.com








