ボアオ・フォーラム・フォー・アジア2025:変化する世界とアジアの未来
変化が加速する世界の中で、アジアはどのように「共有の未来」を描こうとしているのでしょうか。2025年3月25日から28日にかけて、中国南部・海南省の博鰲(ボアオ)で開催されたボアオ・フォーラム・フォー・アジア(BFA)年次会議は、その問いに真正面から向き合う場となりました。
ボアオ・フォーラム・フォー・アジア2025とは
ボアオ・フォーラム・フォー・アジア(BFA)は、2001年に設立された非政府・非営利の国際組織で、アジアの地域経済統合を促し、各国が開発目標に近づくことを支えることを目的としています。2025年の年次会議は「Asia in the changing World: Towards a shared Future(変化する世界の中のアジア:共有の未来へ)」をテーマに掲げ、博鰲で開かれました。
公式発表によると、今回の会議は以下の点を重視して構成されました。
- 開発と成長に焦点を当てること
- 対話を促し、新しい形式の議論を探ること
- 具体的で実行可能な成果を重視すること
- 国際的な開発と協力を後押しすること
国際機関や地域機関のトップ、各国の閣僚級関係者、フォーチュン・グローバル500企業の経営者、専門家や研究者など、多様な参加者が顔をそろえました。
4つの重点分野:信頼、包摂、SDGs、AI
2025年のボアオ・フォーラムでは、とくに次の4つの分野に議論が集中しました。
- 急速に変化する世界で、信頼を築き協力を進めること
- グローバル化を見直し、より包摂的な発展につなげること
- 持続可能な開発目標(SDGs)を加速させ、地球規模の課題により効果的に対応すること
- イノベーション主導の発展に向けて、AIの活用とガバナンス(ルールづくり)を強化すること
いずれも、2025年現在の国際社会が直面している核心的なテーマです。多国間協調の立て直しや、開放性の維持、地球温暖化や格差といった課題への対応などが、アジアからどのような形で発信されるのかに注目が集まりました。
AIとデジタル格差:技術のメリットをどう分かち合うか
会議では、AI(人工知能)の活用とガバナンスに関する議論に加え、デジタル格差(デジタルデバイド)をどう縮小するかも重要なテーマとなりました。公式情報によれば、次のような論点が取り上げられています。
- AIを経済成長と社会課題の解決にどう生かすか
- アルゴリズムの透明性や安全性をどのようなルールで確保するか
- デジタル能力の底上げを通じて、各国・各地域の接続性をどう高めるか
アジア地域の中でも、デジタルインフラや人材育成の進み方には大きな差があります。ボアオ・フォーラムは、そのギャップを前提にしながら、技術の恩恵をより多くの人々に届けるための道筋を探る場となりました。
開発途上国とアジアの「声」を届けるプラットフォーム
北京の対外経済貿易大学の崔凡(ツイ・ファン)教授は、ボアオ・フォーラムの意義を「開発途上国とアジアの声を世界に伝えること」に見出しています。
崔教授によると、今世紀の始め以降、世界経済に占める開発途上国の比率は約20%から40%超へと大きく伸びました。しかし、世界人口に占める開発途上国の割合が約84%であることを考えると、経済規模の面ではなお過小であると指摘します。
アジアの人口は世界の6割以上を占め、その大半が開発途上国です。崔教授は、ボアオ・フォーラムを「アジアの人々が自らの考えを発信する重要な場」であり、南南協力や南北対話を進めるうえでも意味を持つと評価しています。
また、国際貿易システム、国際通貨システム、国際安全保障システムなどが大きな変化に直面する中で、ボアオ・フォーラムはアジアの地域協力を進めるだけでなく、「世界の制度の方向性についてアジアから提案を行う場」となるべきだとも述べています。
貿易保護主義や一方的な通商措置が多国間貿易体制に影響を与え、世界経済の成長を揺るがしている現状を踏まえ、崔教授は、既存の協力の上に立って、地域的な包括的経済連携(RCEP)の着実な拡大と深化を図ることが、一つの重要な方向性だと指摘します。
「アジアは世界経済のエンジン」企業・実務家の視点
デロイト中国のチェアであり、国家レベルの政治顧問でもある姜穎(ジャン・イン)氏は、「アジアは世界経済の重要なエンジンであり、その将来には機会と課題が併存している」と語ります。
姜氏は、ボアオ・フォーラムを「開かれた、率直な意見がぶつかり合う対話のプラットフォーム」と表現し、各国・各地域の利害が異なる中でも、
- 関係者の間でコンセンサス(合意)を積み上げること
- 地域協力を深めること
- グローバルおよび地域の課題に共同で取り組むこと
といった点で独自の役割を果たしてきたと評価しました。そのうえで、ボアオ・フォーラムが「中国と世界をつなぐ重要な橋」になっていると強調しています。
揺らぐ世界秩序と建設的な対話の重要性
コンサルティング会社ローランド・ベルガーのグローバルマネージングディレクターであるドニ・デプー氏は、現在の世界は不確実性と課題が重なり合い、世界経済の成長見通しを曇らせていると指摘します。これは、ルールに基づく世界秩序にも試練を与え、企業活動や産業の発展にも困難をもたらしています。
そのうえでデプー氏は、開かれた包摂的な性格を持つボアオ・フォーラムが、世界各地の関係者による建設的な対話の場を提供していると評価しています。揺れ動く国際環境の中で、協力を強化し、共通の繁栄を目指すうえで重要な役割を果たし得るという見方です。
日本の読者にとっての意味:アジア発の議論をどう生かすか
2025年も残りわずかとなる中、3月のボアオ・フォーラムで提起されたテーマは、日本にとっても他人事ではありません。RCEPをはじめとする地域経済連携や、AIガバナンス、デジタル格差の是正といった論点は、日本社会やビジネスの将来とも深く結びついています。
ボアオ・フォーラムを入り口に、次のような問いを自分ごととして考えてみることができそうです。
- アジアの経済ルールづくりに、日本はどのような形で関与し得るのか
- AIやデジタル技術の活用において、誰一人取り残さないために何が必要か
- 不確実性が高まる中で、企業や個人はどのようにリスクと機会を見極めるべきか
アジアと世界の交差点として開かれるボアオ・フォーラムの議論は、国際ニュースとして追いかけるだけでなく、日本で暮らす私たち自身の選択や議論をアップデートするヒントにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








