中国とパキスタンの経済協力:中国経済の自信がCPECを加速する
中国とパキスタンの経済協力が注目される理由
今月、中国では毎年開催される両会と、国家レベルの経済フォーラムである中国発展フォーラム(China Development Forum、CDF)が相次いで閉幕しました。不透明な世界経済のなかで、中国は安定、イノベーション、そして開放を優先するという明確なメッセージを発しています。
世界第2の経済規模を持つ中国への信頼が再確認されるなかで、とくに注目されるのが、中国とパキスタンのパートナーシップです。中国パキスタン経済回廊(China-Pakistan Economic Corridor、CPEC)を軸に、テクノロジー、グリーンエネルギー、貿易多角化といった分野で協力が一段と深まる可能性があります。
海外投資家の楽観とパキスタンのチャンス
中国発展フォーラムは、中国の政策決定層と世界の経営者をつなぐ場として位置づけられています。今年の会合には、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)やシーメンスのローランド・ブッシュCEOを含む80社超の多国籍企業トップが参加し、中国事業の拡大計画を相次いで表明しました。
こうした動きは、地政学的な逆風が続くなかでも、中国市場への海外投資家の楽観が根強いことを映し出しています。中国が開放姿勢を維持することで、その恩恵を最も受けやすいパートナーのひとつがパキスタンです。
すでにパキスタンの製造業企業のなかには、ファーウェイやシャオミといった中国のテクノロジー企業と連携し、CPECの特別経済区を活用しながら、世界市場向けの部品生産に乗り出す動きが広がりつつあります。中国への投資とCPECを組み合わせることで、パキスタンがグローバルなサプライチェーンの重要な一角となる可能性が見えてきます。
5%成長目標と雇用を重視する中国経済運営
中国は2025年の経済運営について、次のような主要目標を掲げています。
- 実質GDP成長率:約5%
- 都市部の失業率:約5.5%
- 新たな都市部雇用:1200万人超
- 消費者物価の上昇率:2%前後
5%前後という成長率目標は、決して過度に高くはない一方で、雇用の安定やリスク抑制、国民生活の改善を図るうえで不可欠な水準だと位置づけられています。物価目標を2%程度にとどめているのも、過度なインフレを避けつつ、内需を下支えするバランス重視の姿勢の表れです。
注目すべきは、中国が大型の景気刺激策に頼るのではなく、技術革新を軸とした高品質な成長をめざしている点です。この方針は、中長期的にみればパートナー国にとっても、より安定的で予見可能なビジネス環境につながります。中国経済の安定が、CPEC関連プロジェクトを含む対外協力の持続性を高めることが期待されます。
イノベーションが押し上げる中パ協力:CPECフェーズ2
今月の議論では、とくに科学技術の自立とイノベーションが中国の成長戦略の中核にあることが強調されました。人工知能(AI)の分野では、DeepSeekやUnitree Technologyといった企業が新たな技術を打ち出し、人口動態の変化や貿易制限といった課題への対応も視野に入れています。
パキスタンにとって、この流れは新しい協力の扉を開くものです。工業化とデジタル化に重点を置くCPECのフェーズ2は、テクノロジー分野での連携を深めるための枠組みとして機能しつつあります。
例えば、次のような分野での協力が想定されます。
- 中国企業のAIやロボティクス技術を活用したパキスタンでの高度製造拠点づくり
- デジタルインフラ整備を通じた、パキスタン企業のグローバル市場アクセス向上
- CPEC特別経済区を活用した、共同研究開発や人材育成プログラムの展開
こうした取り組みが進めば、パキスタンは単なる生産拠点を超えて、デジタル産業やAI関連サービスのハブとしての地位を高めていく可能性があります。
グリーンエネルギーで重なる優先課題
中国は現在、世界最大の再生可能エネルギー投資国として、2025年までに一次エネルギー供給の25%を非化石エネルギーでまかなうことを目標としています。この野心的なエネルギー転換は、気候変動の影響に直面するパキスタンの優先課題とも重なります。
パキスタンは気候レジリエンス、つまり気候変動に強い経済と社会の構築を重要課題に掲げています。CPECを通じて、太陽光や風力などのクリーンエネルギー技術の移転や共同プロジェクトが進めば、エネルギー安全保障の強化と環境負荷の低減を同時に実現する道が開けます。
CPECがもたらす雇用と地域連結性
これまでのCPEC建設は、地域の連結性と貿易の開放を促すとともに、パキスタンの雇用創出にも寄与してきました。パキスタン計画省によると、エネルギーやインフラ関連プロジェクトを中心に、CPECは同国で20万人超の雇用を生み出したとされています。
アラビア海と南アジアへの玄関口に位置するパキスタンは、中国にとって重要な海上ルートと新興市場へのアクセスを提供します。これは中国の一帯一路構想を補完する存在でもあり、CPECはその中核プロジェクトのひとつとなっています。
中国が安定、イノベーション、サステナビリティ(持続可能性)を経済運営の柱に据えることは、パキスタンにとっても、長期的なインフラ整備や産業育成を進めるうえで追い風となり得ます。
南南協力のテンプレートとしての中パモデル
世界的な不確実性が高まるなかで、中国とパキスタンが築いてきた協力の枠組みは、南南協力のひとつのモデルとして注目されています。それは単なる資本の流れではなく、共通のニーズに基づき、相互利益と持続可能な成長を重視するアプローチです。
中国側の優先課題である安定、イノベーション、グリーン転換と、パキスタン側のニーズである雇用創出、産業基盤の強化、気候レジリエンスの確保は、CPECという具体的なプロジェクトを通じて結びつきつつあります。
今後、中パ協力がどのように進化していくのかは、アジアやグローバルなサプライチェーンの行方を考えるうえでも重要な指標となりそうです。政策当局だけでなく、企業や投資家にとっても、CPECを軸とした中パ関係の動きから目が離せません。
Reference(s):
China & Pakistan: Boosting Confidence, Strengthening Partnerships
cgtn.com








