ウォール街が中国A株に強気 AIブームで国際マネーは戻ってくるか
2025年第2四半期にかけて、ウォール街の大手投資銀行が中国本土のA株市場に相次いで強気の見方を示しています。背景には、中国の人工知能(AI)分野への積極的な投資と、実体経済の底打ち期待があります。本記事では、JPモルガン、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの最新レポートを手がかりに、中国株をめぐる国際マネーの視線を整理します。
ウォール街が中国A株に「強気転換」
中国株、とくに上海・深センに上場するA株市場について、2025年第2四半期にかけてウォール街のトーンが明確に変わりつつあります。
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーが強気姿勢を打ち出したのに続き、JPモルガンは水曜日に中国株全体へのポジティブな見通しを改めて示しました。理由として挙げたのは、企業業績の底打ち、AIを活用した新たな成長エンジン、そして個人消費の持ち直しなどです。
アジア太平洋地域のチーフ・マーケット・ストラテジストであるタイ・フイ氏は、ブルームバーグのインタビューで、中国のAI分野は今後も「市場の楽観論を支える」と語り、企業間のパートナーシップ拡大やAIの用途拡大が続くと予測しました。
JPモルガンが見る「4つの追い風」
JPモルガンは、中国株を支える要因として次の4点を強調しています。
- アジア内で相対的に高い利益成長
アジア全体の中で見ても、中国企業の利益成長率が相対的に高いと評価されています。 - DeepSeekなどによるAI駆動のコスト効率化
生成AIプロジェクト「DeepSeek」をはじめとするAI技術により、企業のコスト構造が改善しつつあると指摘します。 - 不動産セクターの安定化
これまで市場の重しとなってきた不動産分野で、安定化の兆しが見られること。 - A株への資金配分を支える流動性の改善
市場全体の流動性が改善し、中国本土のA株市場への資金配分がしやすくなっていること。
こうした要因が重なり、中国株への見方が「慎重」から「選好」へと変化しつつある、というのがJPモルガンの整理です。
ゴールドマン「China is Back」 AIが利益を押し上げる
ゴールドマン・サックスのストラテジスト、キンガー・ラウ氏とティモシー・モー氏は、水曜日付のレポート「Global Marketing Feedback: China is Back」で同様の見方を示しました。
レポートによれば、投資家は米国による関税措置への警戒感を抱きつつも、過度に動揺しておらず、中国のAI分野を「ゲームチェンジャー」とみなしているといいます。
ラウ氏は、AIの進展によって今後10年間、中国企業の一株当たり利益(EPS)が年率2.5%押し上げられる可能性があると試算しました。その結果として、2,000億ドル超の資本流入を呼び込む余地があるとしています。
同レポートはまた、「中国株に対する投資家の関心と関与の度合いは、2021年初頭の歴史的高値以来で最も高い水準にある」と指摘。流動性、割安なバリュエーション、分散投資の観点から、中国市場は国際マネーの有力な受け皿の一つとして再び意識されているとまとめています。
香港市場に注目集まる理由 モルガン・スタンレーの視点
一方、モルガン・スタンレーは、香港市場におけるインターネット関連やテクノロジー銘柄へのエクスポージャー(投資配分)がさらに高まると予測しています。
レポートでは、中国本土のA株市場には歴史的な経緯から大手インターネット企業の上場が少ない一方で、香港市場にはそれらが多く上場していると指摘。そのため、AIやテクノロジー分野の成長を取り込みたい投資家にとっては、ストック・コネクト(本土と香港をつなぐ株式取引制度)を通じた香港市場への投資が、分かりやすい選択肢になるとしています。
モルガン・スタンレーは、香港ハンセン指数の年末目標を25,800ポイントに引き上げ、足元から約9%の上昇余地があると見込んでいます。同時に、MSCI中国指数の目標値も9%引き上げました。
「AIプラス」戦略と生成AIの急拡大
中国のAI戦略は、政策面からも後押しされています。今年の政府活動報告では、「AIプラス」構想が掲げられ、デジタル技術と製造業、巨大な国内市場の強みを組み合わせる方針が示されました。
この方針のもと、AIの社会実装はすでに加速しています。公式データによると、2024年末までに、生成AI(人間のような文章や画像を自動生成するAI)モデルが約200件登録・公開され、登録ユーザー数は6億人を超えたとされています。
こうした急速な普及が、企業のコスト削減や新サービス創出につながり、先述のウォール街の試算が前提とする「AIによる利益押し上げ」の土台になっていると考えられます。
日本の投資家にとってのポイント
日本から中国株や香港株を見ている個人投資家にとって、今回のウォール街の「強気転換」はどのような意味を持つのでしょうか。考えるヒントを3点に絞って整理します。
- 短期材料より「構造変化」に注目
AIの普及や「AIプラス」戦略、不動産セクターの安定化など、構造的な変化が市場評価を押し上げる可能性があります。ニュースヘッドラインだけでなく、その背後にある中長期のストーリーを見ることが重要です。 - A株と香港市場の違いを理解する
A株市場は本土企業、香港市場はインターネット大手や海外投資家向け銘柄が多いなど、それぞれ特性が異なります。どの市場を通じてAI関連の成長を取り込むのか、投資手段ごとの違いを確認する必要があります。 - リスクと分散を前提にする
地政学や為替など、不確実性が完全に解消されたわけではありません。ウォール街が強気だからといって一方向に傾けるのではなく、分散投資とリスク管理を前提に自分なりのシナリオを描くことが求められます。
中国A株や香港市場をめぐる評価は、世界のマクロ環境や政策次第で今後も変化していきます。AIという新しい成長ドライバーがどこまで実体経済と企業収益に結びつくのかを見極めることが、これからの中国株投資を考えるうえでの重要な視点になりそうです。
Reference(s):
Wall Street banks turn bullish on China's A-Share market amid AI push
cgtn.com








