中国経済の新ステージ サービス消費と人への投資が内需のカギ
国際ニュースを日本語で読みたい読者の皆さんに向けて、一人当たりGDPが1万3000ドルを超えた中国で、サービス消費と人への投資がなぜ内需拡大のカギとされているのかを整理します。モノ中心だった消費構造がどう変わろうとしているのかを、ある分析から見ていきます。
一人当たりGDP1万ドル超で動き出すサービス消費
国際的な経験によれば、一人当たりGDPが1万ドルを超えるころから、家計消費に占めるサービス消費の比率の伸びが加速し始めます。さらに1万5000ドルに達すると、サービス消費がモノの消費を上回り、家計消費の主役になっていく傾向があるとされています。
これは、経済が一定の豊かさに達すると、人びとの関心がモノを増やすことから生活の質を高めることへ移っていくためです。教育、医療、娯楽、観光、介護などへの支出が増え、サービス産業が経済成長をけん引する役割を強めていきます。
中国はモノ中心からモノとサービス併存の段階へ
分析によれば、中国の一人当たりGDPはすでに1万3000ドルを超えています。それにもかかわらず、家計消費に占めるサービス消費の比率は46.1パーセントにとどまり、同じ発展段階にあった米国、日本、韓国の平均よりおよそ10ポイント低い水準にあります。
これは、中国がモノの消費が中心だった段階から、モノとサービスを同じくらい重視する段階へと移行する分岐点に差しかかっていることを意味します。裏を返せば、サービス消費にはまだ大きな伸びしろがあるということでもあります。
サービス消費の中身には偏りも
ただし、サービス消費の構造を詳しく見ると、中国ではその多くが宿泊、外食、家事代行といった伝統的な分野に集中しているとされています。医療やヘルスケア、ウェルネス、個々のニーズに応じたカスタマイズ消費といった中・高付加価値のサービスには、まだ大きな成長の余地が残っています。
例えば、慢性疾患の予防やメンタルヘルスを含む総合的な健康管理、高齢者向けの生活支援サービス、趣味や学び直しを支えるオンライン講座などは、所得が高まるにつれて需要が伸びやすい分野です。こうした領域へのシフトが進むかどうかが、サービス消費の質の向上を左右します。
観光・文化消費と旅行サービス赤字
分析は、文化や観光に関連する消費についても課題と可能性を指摘しています。現在の中国では、多くの観光地が入場券の販売に依存するチケット販売型のモデルから、飲食、宿泊、体験型プログラム、文化イベントなどを一体で提供する統合的な文化・観光消費モデルへと、まだ十分に移行できていないとされています。
2023年には、中国の旅行サービスの貿易赤字が1817億ドルに達しました。この数字は、中国から海外への旅行支出が大きい一方で、国内旅行や海外から中国への旅行など、まだ取り込めていない消費が相当程度残されていることを示していると解釈できます。国内外の旅行者を惹きつけるサービスやコンテンツを磨くことで、観光と文化分野のサービス消費をさらに拡大できる余地があるという見方です。
内需拡大のカギは人への投資
こうした状況のなかで、サービス消費を拡大し内需を強めるカギとして浮かび上がるのが人への投資です。モノよりサービスの比重が高まる経済では、人びとのスキルや健康状態、将来への安心感が、そのままサービス需要の大きさを左右します。
人への投資とサービス消費の関係は、次のように整理できます。
- 教育や職業訓練への投資は、一人ひとりの所得を高めるだけでなく、専門性の高いサービス産業で働く人材を育てます。その結果、質の高いサービスが供給され、消費の選択肢も広がります。
- 医療やヘルスケア、ウェルネス分野への投資は、人びとの健康寿命を延ばし、旅行や文化活動、学び直しといったサービス消費を楽しむ期間を長くします。
- 年金や医療保険など社会保障の整備は、将来への不安を和らげ、貯蓄を過度に増やすのではなく、現在のサービス消費にお金を回しやすくします。
つまり、人への投資は、サービス産業の供給力を高めると同時に、家計のサービス消費意欲も押し上げる二重の効果を持ちます。
日本の読者への示唆
今回の中国に関する分析は、日本やアジアの読者にとってもいくつかの示唆を与えます。
- 一人当たりGDPが1万ドルを超えた段階では、サービス消費の比率が急速に高まりやすいことから、中国のサービス市場には今後も拡大の余地が大きいと考えられます。
- 観光や文化、エンターテインメントなどソフトな分野での連携は、企業にとって新たなビジネス機会となるだけでなく、相互理解を深めるチャンネルにもなります。
- モノ中心の経済からサービス重視、さらには人への投資重視へという流れは、日本を含む多くの国や地域に共通するテーマです。どのように人への投資を進め、サービス消費の質を高めていくかが、持続的な成長のカギになりそうです。
中国のサービス消費が今後どのように拡大し、人への投資と結びついていくのかは、2025年の世界経済を考えるうえでも注目すべきポイントだと言えるでしょう。
Reference(s):
Service consumption and 'investing in people' key to expanding demand
cgtn.com








