トランプ氏「ゼレンスキーはレアアース協定から後退」警告発言の背景
米国のドナルド・トランプ大統領が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米国とのレアアース(希土類)鉱物協定から「手を引こうとしている」と述べ、そうなれば「大きな問題」を抱えることになると警告しました。資源協定と安全保障(NATO加盟問題)を結びつけた発言として注目されています。
トランプ大統領「協定から手を引けば大きな問題」
米国時間の7日、トランプ大統領は専用機エアフォースワン機内で記者団に対し、ゼレンスキー大統領が米国とのレアアース協定から後退しようとしているとの認識を示しました。
トランプ大統領は、ゼレンスキー氏について「レアアース協定から手を引こうとしている」としたうえで、「もしそうするなら問題を抱えることになる。大きな、大きな問題だ」と強い言葉でけん制しました。
さらに、大統領は「レアアース鉱物に関する協定はすでに合意しているが、ゼレンスキー氏が今になって条件の再交渉を望んでいる」と述べ、合意済みだとする米側と、内容の見直しを求めるウクライナ側の温度差をにじませました。
3月に合意発表、2月署名は緊張で延期
トランプ大統領は今年3月20日、米国とウクライナの間でレアアース鉱物協定が「近く署名される」と発表していました。当初、この協定は2月末にワシントンで署名される予定でした。
しかし、ホワイトハウスでの首脳会談の場で、両首脳の間に緊張したやり取りがあったとされ、その後、署名は延期されています。資源アクセスをめぐる思惑の違いが、早くから表面化していたことがうかがえます。
ゼレンスキー氏「新案は以前の枠組みと全く違う」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、先週金曜日に行った発言の中で、ワシントンから新たな協定案の草案を受け取ったことを明らかにしました。
ゼレンスキー氏によると、その新しい草案は、当初トランプ大統領との間で署名予定だった枠組み協定とは「まったく異なる」内容になっているといいます。ウクライナ側が合意内容の変更に強い違和感を持っていることが読み取れます。
トランプ大統領が「再交渉を望んでいる」と批判する一方で、ゼレンスキー氏は「合意の前提が変わった」と受け止めている構図です。
NATO加盟希望とレアアースを結びつけた発言
トランプ大統領は今回の説明の中で、ゼレンスキー大統領が北大西洋条約機構(NATO)への加盟を望んでいることにも言及しました。
大統領は、ゼレンスキー氏について「彼はNATOの一員になりたがっている。しかし、彼がNATO加盟国になることは決してなかった。彼もそれを理解している」と述べました。そのうえで、「もし彼が協定の再交渉を望むなら、大きな問題を抱えることになる」と語り、レアアース協定をめぐる姿勢と、NATO加盟問題を事実上リンクさせる発言をしています。
安全保障上の期待と、資源をめぐる協力を同じテーブルに載せた形での圧力とも受け取れる発言であり、ウクライナ側の反発や国内外の議論を呼ぶ可能性があります。
レアアース協定とは何が争点なのか
今回の協定は、米国がウクライナの鉱物資源、とくにレアアースと呼ばれる希少な鉱物資源へのアクセスを得ることを目的としたものとされています。レアアースは、スマートフォンや電気自動車、風力発電、軍事技術など、多くのハイテク製品に欠かせない材料です。
一方で、資源をどの程度、どのような条件で提供するのかは、ウクライナにとっても長期的な経済戦略や主権にかかわる重要な問題です。
- 米国側:安定したレアアース供給源の確保
- ウクライナ側:資源の対外開放と自国利益のバランス
- 両国共通:安全保障や政治関係との結びつき方
ゼレンスキー大統領が「新しい草案は以前と全く違う」と指摘していることから、契約条件や権益の範囲、期間などでウクライナ側に不利と受け止められかねない変更が含まれている可能性があります。
今回の発言が示す米ウクライナ関係の現在地
トランプ大統領の強い言葉は、レアアース協定が単なる経済・資源協定ではなく、米ウクライナ関係や安全保障を左右する政治カードになっていることを示しています。
一方のゼレンスキー大統領は、新たな草案との違いを公に語ることで、自国の立場や国民向けの説明責任を意識しているとも考えられます。双方が公開の場で異なるメッセージを出していることは、今後の交渉が容易ではないことを物語っています。
今後、
- 協定の具体的な条文や条件がどこまで歩み寄られるのか
- レアアース協力が安全保障・同盟関係とどの程度結びつけられるのか
- ウクライナ国内での受け止め方や政治的反応がどう広がるか
といった点が、米ウクライナ関係を読み解くカギになりそうです。
「資源」と「安全保障」をどう切り分けるか
今回のやり取りは、資源協定と安全保障を一体のパッケージとして扱うことの難しさを改めて浮き彫りにしています。資源は経済と直結し、安全保障は国家の生存に直結します。両者を結びつけることは、短期的には交渉のテコになる一方で、長期的な信頼関係や交渉の余地を狭めるリスクもあります。
トランプ大統領とゼレンスキー大統領の言葉の間にある距離は、単なる個人間の関係だけでなく、資源と安全保障をどう位置づけるかという、より大きな問いを映し出しているともいえます。レアアース協定の行方は、今後の米ウクライナ関係を占う試金石として、引き続き注目されそうです。
Reference(s):
Trump says Zelenskyy trying to 'back out' of rare earth minerals deal
cgtn.com








