中国・雄安新区「未来都市」で広がるAIとロボットのイノベーション
中国北部・河北省の雄安新区が、「未来都市」を掲げてAIやロボット分野の企業や人材を引きつけています。中国のイノベーション戦略を象徴するこの街で、何が起きているのでしょうか。
「未来都市」雄安新区に集まるロボット企業
雄安新区の企業展示ホールに足を踏み入れると、音声指示に反応して複雑な部品を正確につかむロボットアームが訪問者の目を引きます。これは、中国のユニコーン企業(企業価値が非常に高い未上場企業)であるメックマインド・ロボティクスの技術です。
同社は、従来型の産業用ロボットアームに「目」と「脳」を与えることを得意とし、画像認識やAIを組み合わせた高度なロボットシステムを世界へ輸出しています。現在、その製品は50以上の国と地域に広がり、分野の有力企業の一つとなっています。
メックマインド・ロボティクスは本社を北京から雄安新区へ移し、この「未来都市」でさらなる成長をめざしています。同社の張丹氏は「会社はゼロから1へ、1から10へと成長してきました。雄安は、10から100、さらには1万へと飛躍するのにふさわしい場所だと考えています」と話します。
雄安新区は、中国が北京・天津・河北の協調発展を進める国家戦略の一環として、2017年4月に設立が決まった新区です。スマートで住みやすく、環境に配慮し、「大都市病」と呼ばれる渋滞や過密、環境悪化から解放された都市をめざして計画されてきました。
2017年の決定から8年あまりが経った今、その都市像は徐々に現実のものになりつつあります。とくにAIやロボットなどの高度な技術分野で、新しい企業が次々と集まり始めています。
中関村のDNAを受け継ぐ科学パーク
その中心的な舞台のひとつが、雄安新区中関村科学パークです。設立からまだ2年足らずにもかかわらず、すでに140社を超える企業が入居しています。
この科学パークは、かつて「中国のシリコンバレー」と呼ばれた北京・中関村のイノベーション精神を受け継ぎ、規模の大小を問わず「新しいことに挑戦したい企業」にとっての楽園をめざしています。
科学パークの劉晶晶・総経理は、AIとロボットを核とした産業クラスターの構築を一段と加速させ、さらに多くの企業を雄安に呼び込みたいと語っています。AI、ロボティクス、新素材、宇宙情報など、最先端分野に軸足を置いた産業集積を進める構想です。
スタートアップが感じる「やりやすさ」
雄安新区中関村科学パークには、創業間もないスタートアップも数多く入っています。その一つが、設立から1年ほどの雄安星源科技有限公司です。同社はメタバース、大規模な仮想現実(VR)、人工知能(AI)などの先端技術を手がけています。
CEOの龔文通氏は、創業時からのビジネス環境の良さに驚いたと振り返ります。会社登録と同じ日に営業ライセンスを取得できたほか、科学パーク側がスタートアップと地元企業をつなぐ交流イベントを頻繁に開き、新たなビジネス機会にアクセスしやすい環境を整えているといいます。
こうした出会いを通じて、雄安星源科技は技術支援を必要とする企業との協力関係を築いてきました。現在は、高齢者向けサービス企業と連携し、VR技術を使って高齢者が没入型の旅行体験や交流活動を楽しめる仕組みづくりを計画しています。先端技術が、高齢化社会の課題解決にもつながろうとしています。
LiDAR企業が語る「暮らし」の変化
科学パークのメリットを感じているのは、XRやメタバース関連企業だけではありません。LiDAR(ライダー)技術の応用に取り組む小規模企業・智覚智能の王玲・副総経理も、その一人です。
王氏は、パーク内で同業の技術者と直接意見交換できる機会が多いことに加え、現地当局による支援策の手厚さを評価します。雄安新区では近年、イノベーション主導の発展を掲げ、航空宇宙情報、AI、新素材などの分野を中心に、多様な人材を呼び込むためのインセンティブが打ち出されています。
その一環として、優れたイノベーションプロジェクトを支援するコンテストが定期的に開催されており、王氏のチームも受賞しました。表彰とともに、住宅補助、オフィススペースへの支援金、追加ボーナスなどが提供され、スタートアップにとって大きな後押しとなっています。
かつて王氏にとって、雄安での暮らしやすさは不安材料だったといいます。しかし、学校や病院などの公共施設が次々と開業し、生活環境が整ってきたことで、その懸念は薄れていきました。現在では家族ごと雄安に移り住み、新しい生活を始めています。
「ここでは、周りにあふれるチャンスに背中を押されているように感じます」と王氏は語り、友人にも雄安での新たな可能性を紹介していると話します。
行政と市場のコラボが生む「みんなの利益」
王氏の経験は、雄安新区のイノベーションが、政府と市場の連携によって形づくられていることを象徴しています。企業は成長のチャンスを得て、人材は集まり、市民は新しい産業やサービスの恩恵を受ける——そんな循環をめざす取り組みです。
雄安モデルから見える3つのポイント
- 明確な重点分野にもとづく産業クラスターづくり(AI、ロボット、新素材、宇宙情報など)
- 企業登録や許認可の迅速化、スタートアップと地元企業を結ぶマッチングの場づくり
- 住宅補助やオフィス支援といった生活・経営両面へのサポートを組み合わせる政策設計
雄安新区では、こうした政策と民間の創意工夫がかみ合うことで、「未来都市」のコンセプトを現実のものにしようとしています。今後もAIとロボットを核にした産業クラスターづくりが加速し、どのような都市や暮らしの姿が形づくられていくのか。アジアのイノベーション動向を考えるうえでも、注目しておきたい動きだと言えます。
Reference(s):
cgtn.com








