アジア市場に世界マネーがシフト 通貨高と業績改善で海外投資家が注目
世界の投資マネーが、米国株中心からアジア市場へとゆっくりと向きを変えつつあります。通貨高と企業業績の「底打ち感」を追い風に、アジアがグローバル資本の受け皿として再評価される局面に入っているとの見方が広がっています。
世界貿易をめぐる緊張や関税をめぐる不透明感が続くなかでも、海外投資家はアジア市場に対して慎重ながらも前向きな姿勢を保っているとされます。本記事では、最近の国際ニュースやアナリストの見解をもとに、なぜ今アジアが注目されているのかを整理します。
世界のマネーがアジアへ向かう理由
エマー・キャピタル・パートナーズの創業者兼最高経営責任者(CEO)、マニシ・ライチャウドゥリ氏は、水曜日に掲載されたロイターへの寄稿で、米国市場からアジア株への「ローテーション(資金移動)」はまだ始まったばかりかもしれないと指摘しました。
同氏によれば、その背景には複数の追い風が重なっていますが、特に重要なのは次の二点です。
- アジア通貨の緩やかな上昇
- 企業業績見通しの「インフレクションポイント(転換点)」
通貨高と「業績の転換点」が呼ぶ資金流入
為替面では、今年2月以降、中国本土の人民元は約2.4%上昇し、シンガポールドルは3.6%、インド・ルピーも2.3%それぞれ上昇しています。アジアの主要通貨がそろってじわりと買われている格好です。
通貨の価値が上がる局面では、現地通貨建てで見た株価上昇に加え、為替差益も期待できるため、海外投資家にとってトータルリターンを押し上げやすくなります。ライチャウドゥリ氏は、こうした通貨高と業績の底打ちが重なることで、「これまで保有比率が低かったアジア市場に、世界の資金が流れ込み始める可能性がある」とみています。
アナリストらも、ファンダメンタルズ(経済の基礎条件)が改善しつつあるアジア市場では、通貨と企業利益が同時に好転することで、従来は「アンダーオウンド(保有比率が低い)」とされてきた国・地域への資金配分を見直す動きが強まるとみています。
中国本土経済への期待と新興国マインド
アジアの投資環境を語るうえで、中国本土経済の動向は欠かせません。今年3月に実施したHSBCの「エマージング市場センチメント調査」によると、新興国市場の見通しにとって最大の上振れ要因として「中国本土経済の回復」を挙げた投資家は45%に達しました。前回調査の29%から大きく伸びています。
アナリストらは、中国本土の景気回復に対する投資家の信認が高まっていることに加え、最近の景気刺激策が海外マネーを引き付けているとみています。先進国市場以外でリターン源を探すグローバル投資家にとって、中国本土を中心としたアジアは、成長性と規模の両面で魅力的な選択肢になりつつあります。
政策が下支えする中国本土株
同時に、政策面でのサポートも意識されています。ドイツ銀行は、火曜日に公表したリポートで、貿易をめぐる対立や米国による関税引き上げの可能性などへの懸念を認めつつも、中国本土株は今後も追加的な財政・金融政策の恩恵を受ける余地があると分析しました。
外部環境の悪化に応じて政策が調整される余地があることは、投資家にとって一種の「セーフティーネット」として働きます。景気や企業業績の下振れリスクが意識される局面でも、政策対応が期待できることは、中国本土市場に対する信頼感を高める要因になっています。
円は「米国減速リスク」ヘッジに再評価
アジアへの資金シフトという文脈では、日本円の位置づけにも変化が出ています。ゴールドマン・サックスは、ブルームバーグが伝えたリポートの中で、日本円は「米国の成長鈍化に備える下振れヘッジとして、これまでになく魅力が増している」と指摘しました。
同社は、米国の成長や関税政策をめぐる不安が続くなかで、安全資産への需要が高まり、日本円は今年、ドルに対して140円台前半へと上昇する可能性があるとみています。ゴールドマン・サックスのグローバル為替責任者カマクシャ・トリヴェディ氏は、ニューヨークでのインタビューで、「もし米国の景気後退リスクが高まれば、円は下落局面からポートフォリオを守るための最有力の安全資産になり得る」と述べたとされています。
これから数カ月、投資家がチェックしたいポイント
地政学リスクやマクロ経済の不確実性は依然として残りますが、多くのアナリストは、アジアのファンダメンタルズ改善と政策対応が相まって、今後数カ月のあいだにアジアが世界の資本にとって一段と魅力的な投資先になり得るとみています。
個人投資家や運用担当者が国際ニュースを追ううえで、次のようなポイントを意識すると、アジア市場の流れを立体的に捉えやすくなります。
- 人民元、シンガポールドル、インド・ルピーなどアジア主要通貨の動き
- 中国本土の景気指標と、追加の景気刺激策や政策対応の有無
- 新興国市場に対する投資家センチメント(調査結果や資金流入の動向)
- 米国の景気指標や関税をめぐるニュースの変化
- ドル円相場の動きと、日本円がどの程度「安全資産」として買われているか
アジア市場に関するヘッドラインだけでなく、通貨、政策、企業業績という三つのレンズを通してニュースを読むことで、世界のマネーがどこへ向かおうとしているのかを、より深く考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Global investors shift to Asia amid currency gains, earnings boost
cgtn.com








